色、いろいろ。

金木犀

版画/たかだみつみ 文/小池一三
2011年10月09日 日曜日
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金木犀 版画

金木犀の匂うころ
あなたと出会い

沈丁花の匂うころ
あなたと別れた

という詩を書いたのは、詩人・エッセイストであり、環境問題研究家の森下礼さんです。東大で、リスク論で知られる中西準子さんのもとで「トリハロメタン」の研究をなさいました。トリハロメタンは肝障害や腎障害を引き起こす物質として知られており、発癌性や催奇形性も疑われています。森下さんは、浄水場と水道水中のトリハロメタンについて研究されました。
この詩には、環境の微細な変化に敏感な研究者をうかがわせるものがあります。金木犀がつよい芳香を漂わせるのは秋で、沈丁花が匂うのは春です。森下さんの出逢いと別れは、秋から春にかけてのことだったのですね。
この二つの樹の匂いは、ジャスミンと並んで、トイレに置く芳香剤の代表的なもので、子どもは、この樹の前を通り、つよい匂いに接すると「トイレの臭いがする」というそうです。本物は、合成化学のニオイとは違うと思うのですが、そんなことになっています。
森下礼さんは、この詩を紹介した文章の中で、「刑務所の近くで沈丁花があり、囚人たちが、看守に頼みこみます。言うには『“女性”を感じる・連想する香りだから我々には、きつい。伐って欲しい』というものだったそうです。分る気がします。

金木犀の中国名は「丹桂」です。中国酒に桂花陳酒(けいかちんしゅ)がありますが、花冠を白ワインに漬けてつくられるお酒です。茶に混ぜると桂花茶という花茶になります。
金木犀の「犀」は、サイと読みます。
サイ科の哺乳類の総称で、陸生の草食動物では象に次いで大きく、四肢は太く短く、表皮は硬く、毛はほとんどありません。鼻の上または額に一または二本の角を持っています。薄褐色の幹の紋が、犀の皮に似ていることから付けられたのですが、よく思いついたものだと思います。
金木犀は秋の季語、沈丁花は春の季語です。
やはり、どの句も匂いに関係していますね。

木犀の昼はさめたる香炉かな 嵐雪
木犀の香にあけたての障子かな 高浜虚子
木犀の香や純白の犬二匹 高野素十

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