色、いろいろ。

十五夜

版画/たかだみつみ 文/小池一三
2011年09月08日 木曜日
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十五夜 版画

お月見をむかえる頃に出す手紙は、「朝夕めっきり涼しくなりました」という挨拶で始まります。日中は残暑が厳しくても、夜になると涼風が吹き、早暁の散歩は格別に心地よいものを感じることができます。
二十四節気で追うと、日中は節気が意味するところと大きく異なり、ためらうことが少なくありません。けれど朝早く起きて散歩すると、四季の巡りが先に先にやってきていることが実感されます。
白露は、大気が冷えてきて露ができ始めるころをいいますが、露が出来るのは朝です。『暦便覧』にいうように、「陰気やうやく重りて、露にごりて白色となれば也」です。『万葉集』の第八巻に「朝戸開けて物思ふ時に白露の置ける秋萩見えつつもとな」(作者:文馬養)という歌がありますが、これも白露の感じがよく出ています。

さて、お月見(つきみ)さんです。お月見とは、満月など月を眺めて楽しむこと。観月(かんげつ)とも称します。中国も日本も、月を愛でる慣習は古くからあり、日本では縄文時代にさかのぼります。
お月見の祭事は、平安時代ごろに中国から伝わりました。貴族の間で観月の宴や、舟遊び(直接月を見るのではなく船などに乗り、水面に揺れる月を楽しむ)しながら歌を詠み、宴を催しました。
ヨーロッパの観月は、中国、日本と異なります。ヨーロッパでは、満月は人の心をかき乱し、狂わせるものです。月の女神が死を暗示し、月を見て狼男に変身したりして、いいイメージはありません。
お月見につきものなのは、薄(すすき)・月見団子・里芋・枝豆・栗などですが、それに御酒を供えて月を眺めます。この時期、収穫されたばかりの里芋を供えることから、「芋名月」などの呼び名もあります。月見団子は、芋を供えた風習の変形です。
お月見が一般庶民に広まるのは、近世以降になります。これは都市部を中心としたもので、農業を生業とする地域などでは、観月よりも農耕儀礼としての性格が濃いようです。日本では古くから望月(満月)を拝する信仰がありますが、満月は豊饒のシンボルであり、月光には神霊が宿っているとも信じられてきました。

けふの今宵寝る時もなき月見哉 芭蕉
何着てもうつくしうなる月見哉 千代女
五六升芋煮る坊の月見かな 蕪村
年よりや月を見るにもナムアミダ 一茶
橋二つ三つ漕ぎ出でて月見哉 子規
簫吹くは大納言なり月の宴 漱石
月の友三人を追ふ一人かな 虚子

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