色、いろいろ。

菜種梅雨

版画/たかだみつみ 文/小池一三
2011年04月05日 火曜日

菜種梅雨版画

3月下旬から4月上旬にかけて、雨が降り、すっきりしない天気が続く日があります。その頃、どこからとはなく菜の花(別名 菜種)の香りが漂っていて、そんなことから「菜種梅雨(なたねつゆ)」と呼ばれています。
 「菜種梅雨」は、太平洋沿岸部にかけて見られることで、北日本にはみられません。最近は、温暖化の影響があってか、冬に繰り上がりがちです。
「菜種梅雨」が終わると、「たけのこ梅雨」がやってきて、5月中旬になると「卯の花くたし」になり、梅の実が熟すと、本格的な「梅雨」がやってきます。
 菜の花は千葉県が有名ですが、私が住む近くでは、渥美半島が知られ、約1200万本の菜の花が咲き乱れます。渥美半島では、毎年『菜の花市場(おもてなし市)』が開かれ、今年も3月19日(土)〜20日(日)に予定されていましたが、東日本大震災の影響で中止になりました。菜の花は、この災禍をよそに咲き乱れていますが、何故か寂しげにみえてなりません。
菜の花といえば、与謝蕪村(1716〜1783年)です。

菜の花や 月は東に日は西に 
菜の花や 鯨もよらず 海暮ぬ 
菜の花や 摩耶を下れば 日の暮るる 
菜の花を 墓に手向けん 金福寺 

三句目の「摩耶」は、六甲山脈の摩耶山をいいます。摩耶山では、江戸時代から明治の末まで飼い馬の無事を祈願する「摩耶詣(祭)」が行われていました。飼い主たちは、愛馬をつれて摩耶山にやってきました。その山麓に、見渡す限り菜の花が咲いていたことが、この句で分かります。この菜の花の向うに広い海原が広がっていて、山を下ると、真っ赤になったおひさまが沈んで行きます。
ほかに三句、

なの花にうしろ下りの住居かな   一茶
菜の花の遙かに黄なり筑後川   夏目漱石
菜の花に 汐さし上る 小川かな  河東碧梧桐  

 どの句も情景が目に浮かんできます。

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