色、いろいろ。

版画/たかだみつみ 文/小池一三
2011年03月21日 月曜日
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桜版画

これだけの地震に襲われても、桜の花は咲きます。人生、往くときの桜は華やかさに至福を感じますが、還るときの桜は、もののあわれを誘われます。

「桜の樹の下には屍体が埋まっている! これは信じていいことなんだよ。何故って、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじゃないか。俺はあの美しさが信じられないので、この二三日不安だった。しかしいま、やっとわかるときが来た。桜の樹の下には屍体が埋まっている。これは信じていいことだ」

梶井基次郎の文章です(青空文庫はこちら)。
満開の桜は、ある人には生命そのもののように美しいものだけど、梶井はこれを直視することに耐えられず、逆に死のイメージを見ました。梶井が見た桜は、伊豆湯ヶ島温泉の世古峡の高い断崖に立っている桜でした。この桜の真向かいに梶井が療養生活を送った湯川屋がありました。梶井は肺結核に罹り、二階の部屋からこの桜が見えました。桜の背後には、暗い杉林がありました。

この桜は今も残っていて、ソメイヨシノでした。死の幻想と戦慄を感じさせるのがソメイヨシノであって、花つきの少ない山桜だったらどうだったのか、と思われます。

あしひきの山桜花 日並べてかく咲きたらばいと恋ひめやも 山部赤人

この歌は、平城京を囲む丘陵に咲く山桜を詠んでいます。桜恋の歌といわれていて、あくまでも明るい歌です。

清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢う人みなうつくしき 与謝野晶子

『みだれ髪』に出てくる、洛中洛外の京都にいて詠まれた歌です。丸山公園のしだれ桜は、かがり火に映えます。八坂神社から高台寺を経て、二年坂、産寧阪の石畳の道を登り清水さんの桜を愛でるのは、今でも最高の花見道です。そこにソメイヨシノはありません。
二年前、わたしがあまりにソメイヨシノを攻撃するものだから、ある女性の癇癪を呼んだことがあります。桜の思い出は、人さまざまなので一様に言えませんが、花が持つ表情が呼び覚ますイメージは、花によって異なると、今でも思っています。

散る花を 惜しむ心やとどまりて
また来ん春のたねになるべき 西行
初桜折しも今日はよき日なり 芭蕉
散る桜 残る桜も 散る桜 良寛

最後の句は、良寛の辞世の句です。土に還るときにも、あわれを誘われることなく、明るさを感じる句があるのですね。

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  1. koikeさんからのコメント

    2011/3/22(火)13:39

    福島原発で進行している一進一退の現実を見ていると、落ち着けないですね。

  2. かずさんからのコメント

    2011/3/21(月)02:34

    こんな不幸が襲っているときでも桜は咲くのですね。今年の花見は切ないですね。

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