色、いろいろ。
レンズ雲
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石川啄木に『雲は天才である』という小説があります。この小説は、啄木の処女小説ですが、生前発表の機会はありませんでした。
六月三十日、S――村尋常高等小學校の職員室では、今しも壁の掛時計が平常の如く極めて活氣のない懶うげな悲鳴をあげて、――恐らく此時計までが學校教師の單調なる生活に感化されたのであらう、
という冒頭を読むだけで、当時、啄木が置かれた境遇が見て取れます。ここにいう「雲は天才である」は、自分のことを語っていて、それは有名な『飛行機』と照応します。
見よ、今日も、かの蒼空に
飛行機の高く飛べるを。
給仕づとめの少年が
たまに非番の日曜日、
肺病やみの母親とたつた二人の家にゐて、
ひとりせつせとリイダアの獨學をする眼の疲れ……
見よ、今日も、かの蒼空に
飛行機の高く飛べるを。
『呼子と口笛』より
石川啄木ほど、自分の境遇を嘆き、自負心を丸出しにした作家はいないのかも知れません。「雲は天才である」とうタイトルを処女作に付けたのは、その象徴のように感じます。
さて、今回のテーマは「レンズ雲」です。
山歩きする人にとっては、傘雲、笠雲、吊し雲、巻き雲などは観天望気の一つです。「レンズ雲」は、笠雲やつるし雲と同様に上層の風が強いときに、地形の影響でできたレンズ状の雲をいいます。この雲は天候の悪化を知らせる信号のようなもので、航空分野でも危険な雲とされています。
「レンズ雲がでると風が強くなる」と言われ、その影響は次第に地上にも現れます。けれど、レンズ雲にもさまざまな形があり、好天の前兆とされるものもあります。
有名なのは、シチリア島のエトナ山に出来る雲で、「風の伯爵夫人(contessa del vento)」と呼ばれています。また、ドイツ南東部の山岳地帯に出来る絹雲性のつるし雲は、「モアツァゴトル(Moazagotl)」と呼ばれています。日本でも、富士山や大山のような孤峰に見られます。
レンズ雲は、その多くが雲の分類法では高積雲にあたります。積雲の亜種ですが、積雲そのものではありません。正確には、積雲のような構造をした雲といえます。





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