色、いろいろ。

台風

版画/たかだみつみ 文/小池一三
2010年08月23日 月曜日
Share on Facebook
このエントリーをはてなブックマークに追加
はてなブックマーク - 台風

台風イラスト

台風という言葉をあらためて考えると、結構、変な言葉ですね。
台湾を通り中国大陸に上がるので、台の文字を用いたそうです。ほかにも中国語の大風(タイフン)から来ている言葉だとか、ギリシャ神話に登場する「typhoon」からだとか、アラビア語の嵐を意味する「tufan」からだとか、諸説あります。
日本には、野分(のわき、のわけ)という言葉があります。『枕草子』や『源氏物語』にも出てきます。野の草を吹いて分けるという意味で、美しく、かつ壮絶なイメージが喚起される言葉です。沖縄のウチナーグチでは、「カジフチ(風吹き)」または「テーフー(台風)」というそうです。
明治時代から颶風と呼ばれるようになり、1956年に同音の漢字による書きかえの制定があって、台風という漢字があてられるようになりました。

福田恒存に『キテイ颱風』という戯曲があります。湘南の海岸に住む一家の話を描いた作品で、キテイ颱風とは、1949年に実際に上陸した台風でした。戯曲でいうと、原源一に『台風』という作品があります。これは1958年に起こった狩野川台風を描いた作品でした。1963年に劇団民藝が上演していて、ぼくは高校生のとき、この舞台を観ています。颱風と台風の文字の違いは、漢字の書き換え制定を境にしています。

吹き飛ばす石は浅間の野分かな    芭蕉

鳥羽殿へ五六騎急ぐ野分かな    蕪村

大家の寝静まりたる野分かな    子規

江戸・明治の俳人は、やはり「野分」ですね。蕪村の句は、黒沢明の映像を思わせます。黒沢は風雨の描写に心を砕きました。タテの映像(たとえば『七人の侍』)で、ヨコに広がる木下恵介(たとえば『二十四の瞳』)と好対照を描いています。ギラリと光る太陽は、『野良犬』『羅生門』に代表され、前者は都会のビルの間から、後者は森林の間から射し込む光が強烈でした。モノクロを知り尽くした映像でした。

颱風の雲しんしんと月をつつむ    大野林火

颱風のあとや日光正しくて    山口誓子

梯子あり颱風の目の青空へ    西東三鬼

今も颱風は季語の一つですが、この漢字が用いられていた時代の俳人たちの句です。誓子も三鬼もいいですが、林火の句は、動きの速い颱風の雲を動かない月との関係で詠んで秀逸です。

石原裕次郎に『風速40米』という映画がありましたが、台風による影響は、むかしは降水による影響よりも、暴風による影響が大きかったように思います。まだテレビのない時代、ラジオのニュースを聞きながら、吹き付ける強風に不安を覚えながら眠りについたものです。朝になると、まるで憑きものがとれたように青空が広がっていました。
最近は台風による暴風よりも、異常気象による集中豪雨による被害が大きく、この夏の記録的な猛暑と、各地にみられた記録的な多雨とは、コインの裏表のようです。この原因として上空約12,000mを流れるジェット気流(偏西風)の蛇行の固定化を挙げる気象学者がいますが、何故、固定化してしまったのか、また、日本上空の大気の高層観測により、上層大気が寒冷化していることも判明していますが、これらのメカニズムはまだ解けていません。
この夏の雨も暑さも長く続いてキレが悪く、台風一過のようにさっぱりしませんね。

コメント・トラックバック

この記事へのトラックバックURL :
  1. サヅカさんからのコメント

    2010/8/23(月)15:42

    たかさん

    コメントありがとうございます。
    上々颱風、という人たちもいましたね。

    「○○○がある家」、というような表記はよく目にします。たしかにわかりやすいですが、それよりも漢字や言葉が持つ表現で名前をつけるほうが、結果愛着につながるかな、なんて思っています。

  2. たかさんさんからのコメント

    2010/8/23(月)11:18

    「絶滅寸前季語辞典」(http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480427458/)
    などという本がでているようで…。
    「タイフウ」の頭文字は「風」に「台」の
    「颱」がとてもその状態をよくあらわしていていいのではないでしょうか。
        ※チョット、「画数」がおおくなりますが…笑。
    「住宅」なども、
    「性能」だけで語るのでなく、「ことば(表現)」にあらわせるような
    「感覚」と「暮らし方」を「養いたい」とおもいました。

この記事へのコメントRSS

コメントはこちらから!

コメント

以下の記事もどうぞ
  • 梅東風

    立春といわれても、まだ冬だよ、といわれる寒波がこの列島を襲っています。けれど、日脚を見ると一日一日伸びていて、木々を見ると芽吹いていて、なるほど立春なのだ、春は…
    2012.2.4
    no01-2_umegochitop
  • 虫出の雷

    この雷は、立春後の初めて雷が鳴る時候をいいます。 「虫出し」というのは、この初雷の時期が啓蟄と重なるからです。啓蟄は、冬眠していた虫たちが、土の穴の中から姿を…
    2011.3.6
    no3_mushidashitop
  • 綿

    綿というと、思い浮かぶのは木綿です。 木綿(tree cotton)は、平安朝初期に中国から貢物として入りました。やがて戦国時代の「戦闘服」や旗などに用いられ…
    2011.9.23
    no16-2_watatop

町の工務店ネット町の工務店ネット

住まいネット新聞「びお」は、
町の工務店ネットがお届けしています。

最近の記事

記事を探す

月別

カテゴリー別

タグ別

現代町家

ツイッターtwitter

びおの関連・関心を
タイムリーにつぶやきます!

現代町家現代町家

その家は、前を通る人の家でもある。


ページトップ