Whole House Catalog
連載の始めに
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はじめに
今までに幾度となく「びお」の仲間たちで「住まい」のメインテナンスを扱った本を作ろうという話がありました。話は出ては途切れ、分担着手してもなかなか動かず…また今年もばたばたしてましたねえ…という感じでついに2010年を迎えました。
世の中に住まいのメインテナンスを扱った「ノウハウ本」は数多く、そのどれを見てもそれなりに必要そうなことには触れられていますが、読み手としては「お掃除」の小技を知りたかったわけでもなく、たいていのことは言われるまでもなく、誰に教わるでもなく日常の中で目にしていたり、実際に自分で工夫していたりすることばかりです。
僕たちが欲しかった、そして作りたかった「住まい」のメインテナンスを扱った本とはいったい何だったのか、メインテナンスに大切なことは何なのか、…そんなことを考えながら、伝えるべき大切なことを探るところから着手することにしました。
長期優良住宅のスローガンとも呼ぶべき「いいものをつくって、きちんと手入れして、長く大切に使う」ということは、かつて「あたりまえ」のことでした。いつから、わざわざそのようなことを掲げなければならなくなったのか、いつから私たちは「長く大切に使うことができない、手入れをしない(あるいは必要とされない)悪いもの(よくないもの)」に囲まれてきたのか。きちんとお手入れをする前提は、長く大切に使おうという気持ちであり、その前提に、きちんとお手入れをして長く大切にしていきたいと思える「いいもの」がなければいけないと思います。
いえのなりたち
建築家、永田昌民は、「いえのなりたち」という言い方をしました。捉えどころがないような、とても広い言葉です。折に触れてその「いえのなりたち」について考えてます。何があれば「家」になるのか、何がないと「住まい」にならないのか、「住まい」はどのように「なりたつ」のか…「住まい」のメインテナンスを扱った本 探しは「いえのなりたち」探しでもあります。「部分が全体を語り、全体が部分を説明する」それは「いえのなりたち」そのものです。スチュアート・ブランドを目標に「Whole House Catalog」とでも呼ぶべき、新しい「住まいを予防医学する本」の ディテールに着手しました。
バイブルは、スチュアート・ブランドの一枚の挿絵です。この挿絵をみたとき、「いえのなりたち」の骨格を見た思いがしました。ディテールをカタログにする作業は果てしない仕事ですが、それに着手することで何かが見えてくる予感があります。まずは、そのディテールの「入れ物」になるようなフレイムを提案することから始めます。

イラスト解説
「建物は変化する。建物は刻々と成長し、自ら学んでいくものである」というスチュアート・ブランドは、建物は六つのSで構成されるとし、六つの層は順を追ってつくられてゆき、それぞれの層は異なる速度で変化していく。と説明しています。
堅固なものから更新の時間の短いもの…それを線の強さで表現してあります。
この図は、Whole Earth Catalogの編集および制作者、スチュアート・ブランド(Stewart Brand、1938年12月14日 – アメリカ合衆国の作家、編集者。イリノイ州ロックフォード生まれ)の「建築はいかにして学ぶかー建てられたあとで何が起きるか」の挿絵です。住宅を構成するパーツ毎の時間的変化を 模式化したもの…と読み取れます。
個性とライフスタイルは「インフィル」の STUFF SPACE PLAN SERVICEで実現します。その時のライフスタイルにあわせて、簡単に模様替えする。インフィルはあらかじめしつらえなくても大丈夫。まずはしっかりとした「スケルトン」が大切。
「インフィル」である STUFF SPACE PLAN SERVICE は、「服」のようなもの。住まう人が変われば「インフィル」は更新されます。図中の文字の傾きはスピードを、線の太さは堅固さを表しています。
| STUFF | お料理では…スタッフドチキン・トマト・ピーマン…詰め物です。洋服や家具やTV オーディオ 机・椅子・テーブル |
| SPACE PLAN | ライフスタイルの変化に合わせて模様替えが必要です。 |
| SERVICE | 設備への要求。テレビを何処で見る 明りはここに欲しい |
| SKIN | これは外壁・屋根…春夏秋冬変化する自然から「家」を守ります。くたびれたら「交換」(修繕・改修工事)お手入れをしましょう。 |
| STRUCTURE | これは「構造」…丈夫で長持ちします。うまくいくと、木造世界一の長寿命建築「法隆寺」にも負けません。 |
| SITE | これは敷地…世界にそこにしかない特別な「場所」。これは動かせません。 |
いえのパーツ
「住まい」のメインテナンスを扱った本のディテールとなるべき「住まいのパーツ」を拾いはじめました。分類はこれからですが、すでに40を超えています。「すまい」はなんと多くのパーツからできていることでしょう。しかしその全ては、カタログから選ぶことができます。50年以上前からそうでした。ケース・スタディ・ハウスは、雑誌『アーツ・アンド・アーキテクチュア』のスポンサーで行われた実験的住宅建築プログラムですが、26棟が完成したというその8番目、#8 チャールズ・アンド・レイ・イームズ設計 イームズ邸(1949年)の部品は全てカタログチョイスです。確かに実施設計の作業でも、カタログを参照する時間はかなりの部分を占めます。部分が全体をつくり、全体が部分を語るのですから、まあ当然と言えば当然のことです。

スチュアート・ブランドと言えば、その編集および制作者…ということで知られる、
「Whole Earth Catalog」があります。今その全ては web上に公開されています。
http://viewer.zmags.com/showmag.php?mid=hfgsq#/page120/
「いえのなりたち」を伝えるカタログからは、何を選択するべきか見えなければいけないと思います。メインテナンスの前提に、その物の選択、そしてその物の特質の話を抜きにすることはできないからです。SITE と Structure を除けば、家のパーツは、長い時間の中に更新される前提があります。そのとき何に更新すべきか、「いえのなりたち」を伝えるカタログから同じように、適切なリフォーム手法とリフォーム時の素材の選択が読み取れるべきでしょう。
そのモノを知ることは、そのものを大切に思うことの始まりです。自分で選んだものであれば愛着を持って接することができると思います。「いえのなりたち」を伝えるカタログはきっと「いえづくり」の参考書になるべきものです。
僕たちが作ろうとした「住まい」のメインテナンスを扱った本とはきっと未だ誰も見たことのない、「Whole House Catalog」 を編む作業なのです。
チャートとパーツ
時間軸を横に、パーツ毎におおまかなメインテナンス項目を50年スパンでまとめることを試みました。もちろん、お手入れには 日々(daily)毎週(Weekly) 毎月(Monthly) 一年に一度(Yearly) というようなタイムスパンのものから 30年目に…というオーダーまでさまざまなメニューがそろいます。ここでは、それらのメインテナンスを、自分でできること(自分ですべきこと)とプロに依頼すべきこと…に分けることを試みます。
もちろんプロの職人も、人ですので、似たようなことはセルフでできるのかもしれません。
「いえのていれ」は とても贅沢なホビーのひとつです。プロとアマの違いは大きいですが、ホビーの範囲で似たようなことをしよう…とすれば、安全対策と道具に秘密があることがほとんどです。セルフを前提としてはいませんが、この項目で主としてプロに依頼すべきこと…と分類するものに、危険を伴う高所作業があります。危険を伴う作業と、ちょっと素人離れした高価な道具(工具・計測器など)を必要とする作業については全てプロに依頼すべきこと…として統一しました。(色分けを試みます)
簡単にメインテナンスの情報を得ることができるパーツについては、あえてその「おていれ」に触れないことにしようと思っています。また、パーツのメーカーにはかないませんので、専門的なことはその情報のありかを示すことにしたいと思います。
そのような仕分けの中から、すまいの「あたりまえ」について探ることを意図しています。
「Whole House Catalog」は「いいものをつくって、きちんと手入れして、長く大切に使う」ということを「あたりまえ」のことにすることを意図しています。
考え方
「Whole House Catalog」を編みながら、並行して「いえのなりたち」についての「考え方」を模索して行きます。これからの社会の目指すべきところは、低炭素社会、ストック型の社会と言われていますが、そのとき「住まい」には何が求められるのでしょうか。これからの住まいのありかたを考えながら、うっかり忘れかけていることを思い出し、再認識し、そこから学ぶべきことを再評価して新しい「システム」を構築していかなければいけないと思います。考えるために必要なパーツを、いえのパーツと同じようにカタログ化する過程で「びお」にできることを整理、実行していきたいと思っています。
「Whole House Catalog」は、大勢の仲間でつくられるべきものです。「びお」で構成・編集して「住まいをお手入れする本」(緑本)にまとめたいと思っております。応援をよろしくお願いいたします。
1957年仙台市生まれ。建築家。東京藝術大学美術学部建築科卒業、同大学院修了。同大学建築科助手、OM研究所(現自然エネルギー研究所)副所長を経て、現在、東京造形大学・岐阜県立森林文化アカデミー非常勤講師。Sustainable Building and Environment Research Institute 客員研究員。PLEAデザイン研究所主宰。IBEC省エネルギー住宅賞 IBEC理事長賞(1991)・ 国際太陽エネルギー学会業績賞(1997)・SB05記念サステイナブル建築賞(2005)・エコビルド賞(2005)






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