色、いろいろ。
土の色
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「色、いろいろ。」の連載を開始します。
絵は、新進気鋭の版画家たかだみつみさん、文は小池一三と杉浦木綿子が担当します。
連載は、二十四節気にしたがい、15日に一回の割合で更新します。とりあえず2年間、48回の予定です。長丁場の取り組みになります。
第1回を何の色で始めようかと悩みましたが、土の色で開始します。
意外な選択と思われるかも知れませんが、土は「もっとも軽んじられた、それでいて欠くことのできない天然資源」(『土の文明史』ディビット・モントゴメリー 片岡夏実訳 築地書館)です。
土は、アリストテレスが挙げる4大元素 地、水、火、風のなかで、一等最初にでてくるもので、モントゴメリーがいうように、その割に軽んじられています。
というわけで、「土の色」から始めます。
はつらつの土の色
地球のような土を持つ星は、今のところ、天空の星のどこにも存在しません。もしかしたら、遠く離れた星に降り立った宇宙船が、地球と同じような土を持ち帰ることがあるかも知れませんが、今のところ、生命を宿す星は地球をおいてないのです。
アポロ11号のニール・アームストロング船長が月に降り立ったとき、土煙が上がりました。けれどそれは、土ではなく砂煙というべきもので、月の表面はレゴリス(regolith)と呼ばれる砂に覆われています。この砂は非常に細かく、電気を帯びやすく、磁石にくっつく性質を持っていて、アームストロング船長は、払っても払っても宇宙服にまとわりつき、実験装置の故障を引き起こすレゴリスに難儀しました。
月には水もプレート運動もありません。このためレゴリスは一度作られると、ひたすら積もりつづけます。その厚さは「高地」と呼ばれる地形で20〜30m、「海」と呼ばれる地形で2〜8m、新しいクレーターの周辺で数cmです。
これに対し、地球の土は、植物や動物の膨大な死骸が生を呼び起こしました。砂と土の違いは、農的見地からいうと、砂は岩が細かくなった粉であり無機質です。地球の土は、動植物の活動によって有機物を含んでいるものをいいます。
つまり、地球の土の色は生きた土であり、はつらつ(溌剌)の土です。それは多数の死の上に成り立っています。死は生であり、生は死なのです。
しかし、一口に土の色といっても、さまざまな色があります。
北海道から東北にかけては、黒い土が目立ちます。関東から中部にかけては、褐色や黄色の土が目立ちます。関西から九州にかけては赤い色が目立つようになります。
南下するにしたがって、土の色は赤い色が目立って行くのは、酸化鉄と腐食が混じり合うからです。つまり、腐食の多い土(有機色の濃いもの)から、酸化鉄の多い土(無機色の濃いもの)に変わって行くからです。
かれらは死んだ 緑の
血もながさず土にかえるまえに
かれらは土の色に
一つの死を死んだ沈黙の
色にかわる
田村隆一(枯葉)





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