ニュース・トピックス

“木の家づくり”から林業再生を考える委員会がスタート!

2010年03月16日 火曜日

「びお」編集長・町の工務店ネット代表の小池が委員を務める『“木の家づくり”から林業再生を考える委員会』が発足しました。

http://www.mlit.go.jp/report/press/house04_hh_000135.html

第1回目の委員会が、3月15日、国土交通省にて開催されました。

20100315

養老委員長に次いで報告した小池からは、既存住宅の耐震・断熱・気密に対する不適格問題と、その改修によるストック型社会への転換と、それに伴なうローン・住宅資産価値の問題を、養老委員長の提唱する「参勤交代論」とも絡めて報告しました。

詳細は追ってご報告します。
以下は、当日の小池からの報告内容です。


まず、二つのグラフをご覧ください。

不適格な既存住宅
グラフ1:不適格な既存住宅

グラフ1は、新耐震基準が定められた建築基準法の改正が昭和56年、1981年でした。
また、わが国で、初めて省エネ基準が施行されたのが、その前年の昭和55年、1980年でした。この新耐震基準と省エネ基準以前の住宅が、現在、まだ43%を占めています。

省エネ基準の変遷
グラフ2:省エネ基準の変遷

グラフ2は、その省エネ基準が施行された1980年からの省エネ基準の変遷をグラフ化しました。

この30年の間に、日本の住宅の壁の中で起こった劇的な変化を、このグラフは示しています。

このグラフは、昨年末、首相官邸で開かれた「成長戦略説明会」において展示したものですが、自前で100万円掛けて制作したのに(笑)、焦点はロボットやロケットなど先端技術に向けられ、残念なことに、あまり省みられませんでした。

この二つのグラフから、耐震の面でも、断熱・気密の面でも、今の基準に照らせば、不適格とされる住宅が推定40%以上占めている現実をどう考えるのか、という問題が提起されます。

①に関して、阪神淡路大震災の痛切な経験を繰り返さないために(近くは=ハイチ・チリ)

②に関して、断熱・気密が悪いと、幾ら太陽光発電を大量導入して冷暖房しても、冷やした空気も暖めた空気も「ザル」のように洩れてしまいます。ベースが問題なのです。

そこで国交省は、2000年に住宅品質確保法を施行します。瑕疵担保期間の義務化と、住宅性能表示とその評価基準を制定します。さらに2009年には、長期優良住宅普及促進法を施行します。これは、スクラップ・アンド・ビルドから、ストック型住宅への政策大転換を意味するものでした。

この変化は、相互に関連し合っています。

構造躯体の進化による大空間の実現は、一方で温熱環境の進化を促します。断熱・気密の向上は、次には室内空気汚染問題を引き起こし、特に揮発性有機化合物が含まれた建材が問題視され、自然素材の利用がクローズアップされました。

こうした問題が次から次へと起こったわけですが、話が飛びますが、たとえば隙間のない外壁や屋根素材が、スズメの巣を奪うという事態を生んだりします。日本のスズメは、日本鳥学会の推計によりますと、現在のスズメの個体数は1990年ごろの個体数の20%から50%程度に減少したと推定され、1960年代と比べると当時の1/10程度になった可能性がある、といわれます。餌を採る環境が減り、舗装されていない小道や公園が減り、住宅の気密化により、巣をつくる場所が減ったことが原因です。スズメが餌を採る範囲は、だいたい巣から半径100メートル位らしいですね。巣を作れるような隙間と餌を効率よくとれる環境とがセットになっていないと生存は厳しいそうです。

話がそれましたが、日本の住宅の変化は生物界にも多大な影響を及ぼしているわけで、それは住宅建築の現場にも、いろいろな光と影を生んでいます。プラスばかりではないわけです。

しかしながら、耐震と断熱・気密は、時代が必要としている技術であり、問題点を克服しながら発展されなければなりません、そのとき、横たわっているのが、今尚、40%以上の住宅が不適格状態を囲っているという現実です。
この改修・改造に大胆に乗り出すことが、「成長戦略」の下部構造をカタチづけるのではないか、というのがわたしの見立てです。ロボットや何やは「成長戦略」の重要なものですが、それは「成長戦略」というより「未来戦略」として位置付けられるものであり、まず国民生活の基盤改革が重要ではないかと、わたしは思うのです。

しかし、そのハードルはかなり高いのです。

耐震と断熱・気密改修は、壁・床・天井を剥がさなければならず、大規模な工事にならざるを得ません。しかし、現在、大規模改修の長期ローンの仕組みはありません。

早い話、今の住宅ローンは、500万円までの、いわゆるリフォームローンか、新築ローンに分かれていて、1000~1500万円の借入を対象とする大規模改修ローンは除外されています。中古住宅の資産価値評価ができないからです。
日本の住宅は、築後10年目から毎年1割づつ目減りし、20年で資産価値ゼロです。資産価値ゼロのものを、幾ら改修・改造してもプラス価値を生みません。したがって、現況長期優良住宅や耐震・断熱などの補助金の対象にはなっていても、また、保険に依ってローンを条件づけようという動きはあっても、保証と金融が付きませんので、本格的な改修・改造を促し切れないのではと見ざるを得ません。これを根本的に転換させるには、住宅の検査・診断・資産評価制度と、保険・保証・金融制度の根本転換が必要とされます。

この問題は、養老先生の「参勤交代論」を条件づける、半定住の住宅取得とも絡みます。セカンドハウスは国交省でも検討の対象となっていますが、住民票が都市にある場合、銀行は遠く離れた場所の住宅ローンを出してもらえるのかどうか。

またわたしは、長期優良住宅は、生き長らえる確率の高い若年層を主対象とすべきと考えるものですが、長期ローンとなると、その間に何があるか予想がつきません。他人にローンを引き継いでもらえる仕組みがあれば、不測の事態に対処出来ます。しかし、今のローンはクレジット(個人信用)が基本になっていますから、それが叶いません。モーゲージローン=建物自体が担保になる、資産として評価される仕組みになれば、この引き継ぎは可能となります。

高度経済成長を経て、住宅数は世帯数を上回るようになりました。しかし、その住宅は不適格住宅が半数近くを占めています。これをどう変えるのか、そのための制度設計の改編がつよく望まれています。

「木の家」づくりの話をしたいし、林業再生のための「出口戦略」についても、お話したいことは山ほどありますが、それは後日報告させていただくとして、今日のところは終わらせていただきます。


出席者

委員長
養老孟司  東京大学名誉教授

委員
青木宏之  社団法人全国中小建築工事業団体連合会会長
天野礼子  作家
五十嵐敬喜 法政大学大学院政治学研究科教授
梅野博之  全国森林組合連合会常務理事
岡橋清元  清光林業株式会社代表取締役社長
川村誠   京都大学大学院農学研究科准教授
神田順   東京大学大学院新領域創成科学研究科教授
小池一三  町の工務店ネット代表
小玉祐一郎 神戸芸術工科大学環境・建築デザイン学科教授
竹内典之  京都大学名誉教授
田瀬理夫  株式会社プランタゴ代表
田村豪勇  全国建設労働組合総連合中央執行委員長
中島浩一郎 銘建工業株式会社代表取締役社長
永田昌民  建築家/株式会社自然エネルギー研究所代表取締役所長
古瀬誠   株式会社山陰合同銀行取締役頭取
益子義弘  建築家/東京芸術大学名誉教授
豆原義重  国産材製材協会会長
(敬称略、五十音順)

行政
三日月国交省政務官・舟山農林省政務官
国交省川本住宅局長・井上審議官・橋本住宅生産課長・田中企画官
飯高林野庁林政部長
町田内閣官房地域活性化事務局次長
梶山国家戦略室審議官
森田環境省審議官
横尾金融庁調整官

なお、委員会の詳細については追って特集予定です。

この記事をTwitterでつぶやく  このエントリをはてなブックマークに追加 このエントリをdel.icio.usに追加 このエントリをLivedoor Clipに追加 このエントリをYahoo!ブックマークに追加 このエントリをFC2ブックマークに追加 このエントリをNifty Clipに追加

コメント・トラックバック

この記事へのトラックバックURL :

この記事へのコメントRSS

コメントはこちらから!

コメント

以下の記事もどうぞ

町の工務店ネット町の工務店ネット

住まいネット新聞「びお」は、
町の工務店ネットがお届けしています。

最近の記事

記事を探す

月別

カテゴリー別

タグ別

ツイッターtwitter

びおの関連・関心を
タイムリーにつぶやきます!

現代町家現代町家

その家は、前を通る人の家でもある。


ページトップ