生き生きと、活き活きとした、生活舞台を。住まいネット新聞「びお」

特集, 興味津々

町の中の暮らしで森を思う

中山るりこ(「びお」編集委員)
2010年1月20日 水曜日

杉 町育ちの常で、森とは縁遠い。ハイキングや、ましてや登山に趣味の無いわたしにとって、同じ東京であっても森は遠く、はるか西のかなたにある。神宮や皇居のような保護されている森ではなく、生活を支える森をわたしは知らない。遠くにある森が暮らしの中で生き生きと役立ち、わたしと森がもっと近くになるといいのに。この正月休みに気になっていた、2つの森につながることがら。

          ■

その1 卒塔婆

 このお正月も、里帰りをして新年を祝った人も多いのではないだろうか。わたしはといえば、めったに墓参をしない怠け者だ。
 わたしの実家の菩提寺は東京近郊、森の入り口と言っていいところにある。子どものころは、わずかな人家と畑を抜けていくと、山の際に突然寺がある印象だったが、今は木立のあった場所に住宅がどんどん建って、寺もまた、森から離れつつある。
 ご住職は、都心のお寺でも執事長を務めていて、そのお寺のホームページでブログを書いておられる。意外なことをこのブログで知った。

 「卒塔婆の80%が輸入材」であり、「白木のお位牌やお棺に代表されるように、白い木肌が当然であるという風潮」があったために、国産のモミが採れなくなった今では当然のように輸入材が使われているのだという。輸入することで輸入にかかる環境負荷とコストを考え、「常円寺では既に行われていた塔婆の地産地消を東京地区のお寺に広めようというキャンペーンを始め」たのだそうだ。

http://joenji.blogzine.jp/zakkan/2008/11/1113_1786.html

 モミは白木のままで木目が目立たず、においがあまり無い。木肌が白いとので墨のりが良く、文字が書きやすい。もともと、東京の西多摩地区ではモミの木が数多くあって、江戸時代から卒塔婆の生産が盛んだった。今でも生産は全国の70%を占めるが、原料は国産のモミから、外国産のモミやトドマツにシフトしている。
 輸入材を使うことで、森の木は一段と使われなくなり、使われなければ森は次第に荒れてくる。荒れれば花粉症や災害の問題もある。健全な身近な森を守ることや輸入材を運んでくるための環境負荷を考えれば地産地消が望ましい。

 このお寺では、平成17年から多摩産のスギを利用している。スギには香りがあるし、色も濃く、節も多い。切り替えるには不安もあったというが、実際には檀家からは一切苦情は無いそうだ。むしろ香りがいい、一律でない色の変化が自然を感じる、軽くていいというプラスの評価が多いらしい。
 昨年9月には、日蓮宗東京教化伝道センターが企画して、「東京の山を守るために」というセミナーも開かれた。森の今を知り、多摩のスギを使った卒塔婆を普及しようという試みだ。

 東京以外にも、寺院発信の森を守る試みはいくつかある。同じ日蓮宗でも福山市では地元の特産、ヒノキの間伐材を卒塔婆を使っている。曹洞宗にも「塔婆供養で植林支援」というプロジェクトがある。こちらは使用した卒塔婆の数にあわせて寄付を募り、植林に役立てようというものだ。
 少しずつ、こういう流れが当たり前になってお寺から檀家に伝わり、家族に伝わり、誰もが地場の森に目を向るようになったらいいと思う。

その2 割り箸

 マイ箸ブームというのはどうなったのだろう。わたしの周りでマイ箸を持っていた人も、今はどうも使っていないようだ。
 「もともと割り箸は端材や間伐材を生かしたもので、むしろ森を守っているのだ」というのがマイ箸反対派の意見だったものだが、国内の生産量はいまやわずか2%。海外での割り箸製造は原木をまるまる使うもので、海外の森を割り箸にして使い捨てているというのが現状だ。
 では、国産の割り箸はどうなっているのだろう。Googleで検索してみると、料亭や割烹では国産の箸であることをアピールしている。コンビニでも、国産の割り箸を使っているところがある。どうせ使うなら少しでも国産の割り箸を利用し、その割り箸を生産する工場、製材所、林業に資金が還元されるようにしていきたい。ネットショップを検索してみると、質により、100膳で500円から700円前後。中国産の3倍くらいの値段か。単価が安いので、そんなに大きな負担とは思えないのだが、オフィスのパーティや常備品にどうだろうか。

          ■

 地元産の木材を生かした木の家に住みたいと考えている人は多い。マンションを木を生かしてリフォームする例もある。そうやって大きく木と関われない、小さなアパート住まいのわたし。それでも日本の森で生まれた台所用具や食器、生活用具を使ったり、国産の割り箸を探したりしながら、遠いと感じている近隣の森を時々思ってみるのもいい。日本は山と水の国。豊かな緑をDNAが欲しがっているから。


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杉並区周辺の航空マップ


《森と林業を知るリンク》
木づかい.com
http://www.kidukai.com/index.php

財団法人日本木材総合情報センター
http://www.jawic.or.jp/

森林・林業学習館
http://www.shinrin-ringyou.com/

みんなの森
http://www.minnanomori.com/index.html

《きっかけになったブログ》
常圓寺雑感
http://joenji.blogzine.jp/zakkan/

中山るりこ

「びお」特撰こだわりブログ「simple life*easy living」ブロガー。

どこへ引っ越しても書き散らしている。
パソコンの前にいる時間が長い。
絵や写真は苦手。言葉が好き。(simple pleasure 2より)


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  1. りりこさんからのコメント

    2010/1/21(木)00:01

    卒塔婆をいろいろサーチしていたら、破砕するマシンがあるようです。しかも・・・各宗派読経つき。魂抜きやご供養はお寺でするとして、そういう機械は「然るべき業者」が使用しているのかもしれませんね。
    だいぶ前から、短くなったとは思っていました。エコ活動かと思っていましたが、そのような理由があるとは!

  2. iGaさんからのコメント

    2010/1/20(水)19:53

    正月明けに母の三回忌を高尾山の末寺にあたる檀那寺で法要を済ませたので、最近、卒塔婆を手にしたばかりです。以前、寺で伺った話ですが、前は寺の敷地内で古くなった卒塔婆をお焚き上げしていましたが、現在では産業廃棄物として卒塔婆を然るべき業者に依頼し処分しなければならなくなり、その為にサイズが若干、寸足らずで小さめになっているとかです。お釈迦様も…卒塔婆が産業廃棄物とは…杓子定規の行政に呆れていることでしょう。(はるか西のかなた…より…)

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