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特集, 興味津々

「優先席」なんていらない

玉井一匡(「びお」編集委員)
2009年12月22日 火曜日

優先席

 新潟でいつも利用するバス路線で、今年から使われるようになったあたらしい車両に乗った。それには「優先席」専用のシートが使われていたので、iPhoneを取り出して写真を撮った。優先席のシールに描かれている四人の乗客の絵が織り込まれたもので、なかなかかっこいいしハイバックで座りやすそうだ。
 しかし、ぼくは優先席というものは不必要ではないかと思っている。どこの席であれ、身体のつらい人に席を譲るのは当たり前ではないか。「優先席」というのは、「このシートでは、席を譲ってあげてください」と言っているようなものではないか。
優先席サイン 先日、そのことを話したら、横浜の市営地下鉄ではだいぶ前から優先席をなくしましたよという話をきいた。
 さっそく横浜市営地下鉄のサイトを探してみると、「全席優先席」という表現をしている。2004年(平成16年)から実施したそうだ。

http://www.city.yokohama.jp/me/koutuu/info/news/2004/20041012.html(横浜市交通局記者発表資料 )

 現在は、市営地下鉄のサイトの「地下鉄の乗り方」というページに「全席優先席」という小項目があって、次のように書かれている。
ーー 平成15年12月1日より横浜市営地下鉄は「すべての座席を優先席」としています。
お年寄りやお体の不自由な方、妊娠されてる方、小さなお子様連れの方には、ひとこと声をかけて席をお譲り下さい。 お客様同士のご協力をどうぞよろしくお願いいたします。

http://www.city.yokohama.jp/me/koutuu/sub/norikata.html
(横浜市交通局 公式ウェブサイト)

優先席サイン2 ところが、それよりも前に阪急電鉄は全席優先席をしていたという記事があった。
1999年12月から全席優先席という考えのもとに優先席を撤廃していたけれど、かえって座席を譲らない風潮がすすんだため、8年間もつづけられたのち2007年に再び優先席を復活することにしたという。
横浜市は阪急電鉄を参考にして全席優先席の実施に踏み切ったのだけれど、そのあとで阪急はもとにもどすことにしたわけだ。

http://sankei.jp.msn.com/life/trend/071017/trd0710172336020-n1.htm(産経ニュース2007.10.17 23:35)

阪急電鉄の、すこぶるまっとうな試みに対して乗客が情けない反応で応えたというのはとても残念なことだ。

優先席サイン3

 じゃあ、外国ではどうなんだろうかと、検索してみたら、北アイルランド在住のイギリスのグラフィックデザイナー のサイトに、「Priority Seat」とそのサインについて取り上げている。 David Aireyという人のブログだ。デザイナーらしく「How effective is priority seating signage?」というタイトルである。 それによれば、ロンドンでは2005年に「baby on board」と書かれたバッジを妊娠中の女性に配布して付けてもらい、同乗の客が席を譲るようにうながそうというキャンペーンをした。その後になされた調査の結果は、つぎのようなものだったという。

・92%の同乗客 :求められなくとも席を譲る
・82%の同乗客 :妊娠したひとは席を譲ってほしいと言うべきだ
・78%の妊娠女性 :座りたくても自分から座らせてとは言わない

その結果、バッジ作戦は効果がないとされて、3年後にロンドン市長は妊娠女性や障碍者をはじめ立っていることがつらい人たちのための優先席ステッカーを地下鉄に貼ることにしたが、妊娠女性の1/3は席を譲ってもらえなかったという。
日本の電車の写真なども例として取り上げながら、いずれにしろこういう試みは悪いことではないから、適切なデザインをあたらしく作ってほしいと結論づけて、この問題についての意見を寄せてほしいと結んでいる。

http://www.davidairey.com/london-underground-priority-seat-signs/(David Airey)

 それについて、David Airey自身のものも含めて35のコメントが書かれている。「妊娠しているのか太っているのか区別をするのはむずかしい」という人や「両手に荷物をかかえている人と違いがないだろうという友人がいる」なんていうことを書いている人もいて、それに対して「押されて母乳がにじみ出したり、オシッコがこぼれそうになる妊婦のことをちっともわかっていない」と反論する人がいたりする。英語の国のアドバンテージというものだろうが、中にはブラジルやアルゼンチン、カナダなどの外国からもコメントもあるのだが、それだけになおさら、どの意見も日本で送られていたとしても不思議はないように思えて、これが普遍的な問題であることが分かる。
ブエノスアイレスからコメントを送った人は、「ALL SEATS ARE PRIORITY」と書いている。やはりぼくと同じことを感じる人もいるのだ。

 国や文化による違いよりも個人個人の意見の違いが大きいようで、席を譲らないやつがいたり譲ることを躊躇する気持ちがあるのは日本だけではないらしいということが分かって、ぼくはわずかに安心した。
そばに老人がやっと立っているというのに気づかないふりをする若者の多くは、ひどく利己的だからでも邪悪なわけでもなく、迷いを無表情で包んでいるのかもしれない。そうやって落ち着かずにいるよりは、席を譲る方が、じつは自分にとってもずっと気持ちがいいのだという、ほんのわずかなことに気づかせるしかけがあればいいのだが。

MyPlace
http://myplace.mond.jp/myplace/


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  1. 玉井一匡さんからのコメント

    2009/12/26(土)09:24

    光代さん
    そうですね。
    鉄道会社の社員と家族と役所の人が率先するのはいいですね。
    じつは、やっているのかもしれない。
    そういう人たちも含めて
    ゆずろうという気持ちのある人は、そもそも「優先席」には座らないでしょう。
    だから、優先席でありながらそこに座っているのは、もともとゆずる気のない人が多いので
    「優先席」があると、譲るという行為を目にする機会がますます減ってしまう。
    その意味でも、優先席はない方がいいと思うのです。

  2. 光代さんからのコメント

    2009/12/26(土)01:15

    一番の特効薬は 自分が率先して譲る事かなと思っています。(そろそろ譲っていただく年齢ですが・・・・)
    譲っている人があちらにもこちらにもいて、当たり前の感じになれば、若い人も 譲りやすいと思うのです。

    ステッカー作るより 電鉄会社の人とかご家族とか、お役所の皆さんとかが 率先して 当たり前に譲っていく風潮を作ったら良いと思うんですよね〜。

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