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愛される住まい・山東庵

2009年11月27日 金曜日
山東庵 設計・監理:村松篤設計事務所 施工:水﨑建築

山東庵 設計・監理:村松篤設計事務所 施工:水﨑建築 写真:上田明

スタンダードハウス「Bio森の家」に取り組んでいる村松篤さん設計、町の工務店ネットのメンバー・水﨑建築の施工による住宅「山東庵(さんとうあん)」が、静岡県・住まいの文化賞で最優秀賞を受賞しました。

ひとめぼれ

住宅のリフォームか建て替えかで悩んでいたOさん夫妻は、住宅展示場やモデルハウスをいくつもまわり、その度に自分たちの思っている家ではないことにがっかりして帰路につく、ということを繰り返していました。

ある日、住まいの博覧会に立ち寄った際、そこでも、「もう帰ろうか」というところで、村松さんの自邸の展示パネルを目にしました。

まさに「ひとめぼれ」だったと、Oさんは語っています。

玄関より

玄関より

水﨑さんとの出会い

村松さんに巡り会い、いくつかの建物を見せてもらったOさんは、すぐに設計を村松さんに頼むことに決めました。
設計は決まりましたが、どこで建ててもらうのがいいのか。Oさんは、見学し、気に入った建物と同じ人に建ててもらいたい、と考えました。それが水﨑さんでした。

和室

和室

住まいネット新聞びお編集長・小池一三は、村松篤さんと水﨑さんのことを、このように語っています。

村松篤の18歳の頃を、わたしは知っている。地元の工業高校を出て新卒で工務店に就職してきた。ほんとうは有力な設計事務所に就職する予定だったが、その年は募集がなく、成績一番の生徒をおくるという前触れが学校からあった。
初めて見た村松篤は、紅顔の美少年というふうではなかった。18歳というには物腰に落ち着きがあり賢人のような理知の目があった。
その工務店は、当時繁忙を極めていた。入社した村松篤は、押し寄せる設計プランの作成に連日追われ、入社から2年間で引いたプランは150軒を超えていた。このプラン数は押しても引いても、なかなかプランが出てこない昨今の村松を知る者には意外だと思われるだろう。わたしは当時、その工務店の役員を務めていて、この若者は見所があると思い、彼を連れてあちらこちらの建物を見て歩いた。京都の俵屋に行き、都ホテル(当時)の佳水園にも行った。俵屋は、吉村順三(担当/奥村昭雄)の仕事で、佳水園は村野藤吾の仕事だった。もう一人の同行者はすぐに帰りたいという素振りを見せたが、村松はじっと建物を見つめて動こうとしない。そのうち、スケッチ帳と巻尺を取り出して測りだした。
わたしは20歳になった村松に、地元の素封家の依頼による数奇屋建築を彼の手に任せた。彼は尋常でない集中力を発揮してこの設計をこなした。建物に品格があり、建物見学の成果が生きていた。
村松にとって幸せだったのは、その工務店が奥村昭雄の設計で建売住宅に取り組んでいたことだった。注文住宅でなく、こちらの判断でやれる建売住宅に、建築家の腕を発揮してもらい、スタンタードな家のモデルにしたいという企画で、それに奥村昭雄が応えた。30年前のことである。桧造りを売りにする工務店なのに、奥村昭雄は安普請の米ツガ材とべニアを仕上げ材に用いた。煙道熱交換式ス卜ーヴ暖房には目を奪われたが、こんな材料を使って売れるものかと心配された。果たして心配は現実のものとなり、わたしは自宅を売却して自分が住もうとしたが、ほどなく購入者がみつかった。自宅を売却したわたしは借家住まいを愉しんだ。
この仕事に一番学んだのは村松篤であり、大工の水﨑隆司だった。その後、この二人は長いコンビを組むことになる。二人にとって、エポックな仕事は広沢の家だった。瓢逸ともいえるお施主は、新築だけれど遠い昔から住んでいたような家にしてくれ、という注文だった。この仕事によって二人は一皮捲れたように思う。二人は、やがて天竜川駅南モデルや、浜松丘の上の家をつくることになるのだが、作業場の土間で水崎が墨壷で原寸図を描き、村松が「ここはこう」などと丁々発止やり合っていた姿は、今振り返ると神々しいまでに美しかった。

村松さん

村松さん

水﨑さん

水﨑さん

水﨑さんは、その頑固ともいえる仕事ぶりで信頼を集めている職人です。仕事がたてこんでいて、すぐにやってもらうのは無理だったのですが、Oさんはもう、どうしても水﨑さんに頼みたい、という気持ちになっていて、手が空くのを待つことにしました。

こうして出来上がった山東庵。山東(やまひがし)というところにある庵ということで名付けられました。

ダイニングを見下ろす

ダイニングを見下ろす

愛されている家

とにかく満足しているというOさんに、何が一番よかったか、と訪ねると、迷わず「よい人にあえたことですね」
とかく、家は価格や仕様・性能といったことや、保証・メンテナンスなどで選ばれることが多いものですが、このように言ってもらえれば、冥利に尽きるというものです。もちろん性能を犠牲にしているようなことはなく、そろそろ寒くなってきたこの時期も、パッシブソーラーのおかげで暖かく過ごしています。
Oさんは、「家の中のどこにいても本当に素敵」といいます。リビングにいても、ダイニングにいても、そして椅子の置いてあるデッキに出ても、とにかく「どこも素敵だなあって、いつも思うんです」
入居してから1年半ほど経った今でもその思いは変わらず、ほんとうに嬉しそうに「人が見に来ることが多くて、お掃除も楽しみ」と、語ってくださいました。
この家と、それを取り巻く人々は、とても愛されているということが伝わってきます。

広いデッキも「素敵」なスペース

広いデッキも「素敵」なスペース

リビング

リビング

リビングから外を望む

リビングから外を望む

山東庵は、今年行われた静岡県「住まいの文化賞」で最優秀賞を受賞しました。その講評は、次のようにその魅力を伝えています。

山裾の庵を想わせる小住宅。道路拡幅による建替えにあたって、住み慣れた場所での夫婦二人の生活を守るだけでなく、昔からの近所づきあい、背景となる山並み景観との調和など、地域との関係を大切にした住まいづくりが高く評価されました。
道路側からは瓦葺きの平屋に見えますが、実は一部2階建て。2階にご主人の書斎と客間を兼ねた和室が置かれ、LDKや寝室、浴室は1階に集められています。ご夫婦が、互いの所在を感じながら自分の時間を楽しむことができる「ちょうど好い大きさ」です。また、将来を考え、日常的な生活は1階で済むように考えられていることも、長生きできる住まいづくりの要点のひとつです。
天竜地区は寒暖の差が激しい所ですが、冬はパッシブソーラー(太陽熱)による床暖房、夏は深い軒下の広縁から吹き抜けへと風が抜けて気持ちが好いそうです。エアコンをあまり使わないので省エネ効果も高く、生活コストも抑えられています。環境負荷の少ない家づくりのモデルのひとつです。
室内は地元天竜の木と白壁を主に構成され、奥様の好きな赤色に染められた通気パイプやキッチンセットの扉が、アクセントとして彩りを添えています。また、玄関には高齢のご近所さんのための腰掛けが用意されています。昔ながらのご近所づきあいを大切にするご夫婦の心が感じられます。

一見平屋のように見える大屋根

一見平屋のように見える大屋根

物理的寿命と社会的寿命

santoan8今年6月から長期優良住宅の認定制度がはじまりました。家の性能を担保し、メンテナンスするしくみを設けたり、可変性を持たせ家族構成の変化に対応するなどの手立てが講じられています。
これらは家の「物理的寿命」を延ばすのは有効です。しかし、同時に忘れてはならないのは、その家に「永く住みたい」と思う住まい手の気持ちです。
住まいのなかで、どこにいても素敵だなと思える家。よい作り手に恵まれた家。周囲の人からも愛される家。そういう家は「社会的寿命」を持ち、長く大切に住まわれていくのでしょう。

関連サイト
村松篤設計事務所
http://www2.wbs.ne.jp/~muratoku/

水﨑建築
http://www.mizusaki.jp/

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  1. サヅカさんからのコメント

    2009/12/3(木)00:43

    高井さん

    コメントありがとうございます。そこまで言い切ってはいないつもりではあったのですが、ただ、とにかく制度でいくらがんばったとしても、住まい手がやる気にならなければ難しいですよね。自分に置き換えて考えてみれば、気に入らない家をがんばって長持ちさせよう、とは思いにくいですものね。家と長く付き合うには、気に入った業者と付き合うのも、本当に大事だと思います。

  2. 高井さんからのコメント

    2009/12/2(水)05:27

    いつまでも住みたい家でなければ長期優良住宅ではない、という最後のコメントがいいですね。共感します。そんな考えを持つ工務店に、自分の家を託したいと思います。村松さん、水崎さん、がんばってください。

  3. サヅカさんからのコメント

    2009/11/30(月)16:06

    かずさん
    コメントありがとうございます。
    綺麗な家は、設計者と施工者と住まい手との努力によって成立し、保たれています。また、「びお」でみなさんに見ていただくときには、写真家の力も大きいと思います。
    家ってついつい性能や価格に眼がいきますが、(掃除が行き届く、という意味ではなくて)綺麗というのも、長く住む上ではとても重要な要素だと思います。数値化が難しいので、性能表示項目にはありませんから、自分の目を鍛えることと、いい人を見つけることが秘訣ですね。

  4. かずさんからのコメント

    2009/11/30(月)11:16

    「びお」の家は、みんなキレイですね。この住宅も、溜息がでるほどにキレイです。

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