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形の力【益子義弘】
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「ティファニーで朝食を」というアメリカ映画を知っている世代は、たぶんぼくのようにもう人生の後々半(あまりストレートに言われたくないけれど)を迎えた者たちだろう。
はるか以前のことだからその映画の内容はかなりうろ覚えなのだが、その最初の方のシーンに、あの妖精のようなオードリー・へップバーンと相手方の男優(誰でしたっけ?)が長ぁいテーブルの両端にいて食事を共にする場面があった。それは二人の出会いとまだ互いに距離を持つ始まりの関係をあらわすカットなのだけれど、それを長いテーブルが仲立ちをしている。
それがなぜだか記憶に強く残った。その頃のぼくらの日常では、テーブルと言ったって家族が囲む和室の小さなちゃぶ台みたいなものしか知らなかったせいかもしれない。
建築の設計にたずさわり、たとえば住まいの場面を考えるとき、ぼくらはさまざまな家具や調度や物を媒介にして、人の居場所のかたちをあれこれと思案する。
中でも皆が寄り集うテーブルは、そんな場面にいつも強く気になる存在だ。
その大きさや形、部屋の中に占める位置。基本はその使い勝手でデザインを考えるけれど、テーブルはそんな機能を越えた働きがある。人と人の間合い、形が取り持つ心理、座る場所での互いの気持ちのありよう、置かれる物と適度な余白など、それに関わる形や大きさや素材についてのさまざまな想像が巡る。
そんなテーブルの印象のひとつに、ぼくが長く過ごした上野の藝大の教官室に、丸い大きなテーブルが据えられた時のことが鮮やかな記憶にある。そのころ新たに主任教授になられた吉村順三先生が提案して、それまで上座・下座の顕著にあった四角いテーブルと場のかたちを変えたものだった。もう40年も前のことだ。
そのことによる変化は大きかった。まずはまぁるいテーブルの形がなごませる場の雰囲気。そして席の上下のない場のありようからやりとりされる自由な会話。形って場の状態を生む思想なのだナと、その経験の中でぼくは知った。また、形自身が持つ実際の力やはたらきにデザインの目線が向くひとつのきっかけになった。
その丸いテーブルについてひと言加えておくと、その頃吉村順三という重心が不在の時は話がぐるぐると廻って、なかなか結論に至らなかったような思い出もある。
1940年 東京に生まれる。1964年 東京藝術大学建築科卒業。1966年、同大学院修了。
吉村研究室助手を経て、永田昌民とM&N設計室を開設し、建築家として活動。
東京藝術大学名誉教授。「益子アトリエ」を自宅敷地内に構える。
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2009/12/5(土)09:02
「おとな」から「こども」まで、とても読みやすい、飾ってもおきたいような
「本」になっています。
http://www.indexcomm.co.jp/book/book/index.html?eid=00249&gen=12
2009/11/16(月)14:25
時折載せられる益子さんのイラストと文、
気に入っています。藝大の名誉教授という
肩書きなので、エライ人なのでしょうが、
絵も文も平易でいいですよ。
何か本になっているものがありましたら
教えてください。