びおの珠玉記事

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旬のデータ 夏の魚介・海藻類

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2009年07月08日の過去記事より再掲載)

いしもち 
(しろぐち)(石持、白愚痴)

いしもち

東日本ではイシモチ、西日本ではシログチと呼ばれる。頭の中に平衡感覚をつかさどる耳石と呼ばれる大きな石があるのが「イシモチ」の名前の由来。釣り上げられた時、浮き袋がまわりの筋肉の振動に共鳴して「グーグー」という音を出すが、これが愚痴をこぼしているようだとして、「グチ」と呼ぶ地方もある。全体に銀色を帯びた淡灰色をしている。尾ビレが刃物で切り取られたような直線になっているのが特徴。白身でくせがなく淡白な味。練ると弾力性に富み、高級かまぼこの原料として知られている。

選び方
体全体がピンとしていて硬く、つやがあり、目が澄んだものを選ぶ。エラが鮮やかな赤いものが新鮮。鮮度の悪いものは目が黄色くなるので要注意。

料理の例
刺身や焼き物、煮つけにしても美味しいが、淡白な味なので、揚げ物など、油を使った料理法がコクがついて美味しい。
中華料理や韓国料理にもよく用いられる。中華料理では蒸し煮にしたり、丸ごと揚げ甘酢あんをかけて骨ごと食べる。韓国では塩辛の材料にする。

地域名・別名
あかぐち・ちぐち(長崎)、イシムヂ(沖縄)、ぐち(関西、松江、広島、山口、愛媛、長崎、高知、静岡)、しらぐち(広島、熊本)、にべ(福島、長崎、愛媛)

あゆ(鮎)

代表的な川魚。「清流の女王」「初夏の使者」などの異名を持つ美しい魚。サケ・マス類に近く、背びれと尾びれの間に脂びれがあるのが特徴。
川では石についた藻を食べているので、すいかに似た独特の香りがあり、「香魚」とも呼ばれている。アユの香りは食べるエサの影響を大きく受けるため、天然と養殖では香りが違う。
市場に出回っているアユのほとんどは、養殖物か準天然物(養殖アユを渓流に放流したもの)で、天然物はきわめて少なく、高価である。天然物の脂が乗ってくるのは7〜8月。香りが強いのは初夏の若アユ。

選び方
体にぬめりがあり透明感と張りのあるもの、横の黄色い斑紋と背中の色つやがよいものを選ぶ。あまり大きくなく腹がしっかりとしているものがおいしい。
天然物は黄黒色で細身、胸びれの上方の黄色斑紋がはっきりしている。養殖物は青黒く、体が太い。

料理の例
あゆの端正な姿と香りを楽しむには、塩焼きにするのが最高。独特の香りと腹わたの苦み、淡白な身のバランスは絶妙。新鮮なら刺身にもできる(背ごし)。腹わたを塩漬けにした「うるか」は珍味として人気がある。その他、甘露煮や煮つけ、揚げ物、和え物など。

地域名・別名
あい(日本各地)、ひうお(稚魚や若魚)、ああ(岡山)、あいお(広島)、あいぎょう(山口)、あいのうお(岐阜)、あいなご(石川、和歌山、広島)、あいのよ(秋田)、あよ(山形)、あゆご(熊本)

いさき(伊佐木、伊佐幾、鶏魚)

スズキに似た側扁形をした魚で、左右の目の間が狭いのが特徴。磯魚特有の香りがあるが、適度に脂がのった、あっさりした白身で、上品な味。
東北以南の海藻の多い岩礁域に生息し、釣りの対象魚としても人気。夏の庶民的な魚の代表だが、旬のイサキはタイより美味しいという人もおり、近年、天然物は高級魚扱いになっている。旬は6〜7月で、梅雨の頃のイサキは「ツユイサキ」といって、珍重される。

選び方
体色が鮮やかで、腹がしっかりしているもの、うろこに輝きのあるもの、肌目がきれいでツヤのあるものを選ぶ。
身が硬く締まり張りのあるもの、ずんぐりと丸みのあるものが脂がのっている。
「イサキの生き腐れ」という言葉があり、新鮮なものでも目がくもっている。できるだけ目玉が黒く、澄んでいるものを選ぶ。

料理の例
6月頃の大きなイサキは刺身が大変美味。塩焼きも美味しい。塩をふって2時間ほど置いてから焼くとうまみが増す。反対に、直前に塩をふるとあっさりした味になる。その他、あらい、「イサキの水なます」、ムニエル、揚げ物、干物など。
煮つけは、多少磯臭さがあるのでしょうがなどを入れて煮る。
幅広い調理法を楽しめる。

地域名・別名
いさぎ(関東)、おくせいご(東北)、えさき(北陸)、うずむし(関西)、いっさき(九州)、うどご(若魚・大分)、はたざこ(若魚・宮崎)、さみせん(広島)、くちぐろまつ(奄美)、とび(三重)、はんざこ(宮崎、鹿児島)、かじやごろし(和歌山)、こしため(静岡)

うなぎ(鰻)

うなぎ

たんぱく質やビタミン類が豊富な栄養価の高い魚で、夏のスタミナ食の代表。日本人は古くからウナギの味を楽しんできたようで、縄文時代の遺跡からもウナギの骨が発見されている。また土用の丑の日に食べると夏バテを防ぐとされ、親しまれてきた。ふっくらとして脂がのり、香ばしく焼き上がったウナギは日本人の「ごちそう」として定着しているが、最近は大衆化が進んでいる。
細長い延長形の体で、体色は黒灰色、腹面は銀白色なのが特徴。夜行性で何でも食べる肉食魚。
現在、日本産のウナギは、ほとんどが稚魚(しらすうなぎ)を捕まえて養殖したもの。天然物は少ない。天然物が美味しくなるのは秋や冬。

選び方
身が丸々として張りのあるもの、皮に光沢のあるものを選ぶ。一般的に、黒いウナギより青いウナギの方がおいしい。

蒲焼きは身の断面が厚くふっくらとしていて、縮んで波打っていないものを選ぶ。蒲焼きはレンジではなく、蒸して温めたほうがおいしく食べられる。

料理の例
代表的な調理は蒲焼き。調理法は関東と関西で大きく異なる。関東では背開きにし、素焼き→蒸し→本焼きとなるが、関西では腹開きにし、蒸しを入れず、素焼き→本焼きで終わり。関東風は蒸すことでふんわりやわらかく、関西風はさくっと香ばしく仕上がる。
名古屋では蒲焼きを切り刻んでご飯に混ぜ込んだ「ひつまぶし」が名物。
たれをつけずに白焼きにして、大根おろしやわさびじょうゆで食べるのもさっぱりとしておいしい。
その他、う巻き、茶碗蒸し、ちらし寿司、きゅうりと酢であえる「うざく」など。
肝は焼いたり、吸い物にする。

地域名・別名
しらすうなぎ、くろこ(稚魚・若魚)、あお(東京)、うじまる(宇治丸・関西)、ヤアクヮヤ(沖縄)、あおばい(岡山)、うなじ(沖縄)、えどまえ(東京)、おなぎ(大阪、兵庫、鳥取、徳島)、かわやまめ(北海道)、さじ(栃木)、ふと(愛知)、めそっこ(千葉)、くだり、かよ、かにくい、もどり

いわな(岩魚、嘉魚)

渓流釣りの対象魚として人気が高い。淡水魚の中で川のもっとも上流域、山深いところに棲むイワナは、釣るのが難しく、幻の魚とも言われていた。現在では養殖の技術も進み、比較的手に入れやすくなった。
細長く側扁形の体で、口が大きくて下顎が湾曲しているのが特徴。体の色は藍緑色で、側面に不規則な赤色の斑点がある。やわらかく淡白な味。
サケ科の魚だが、海に下ることは少なく、川や湖で一生を過ごす。水生昆虫や小魚などを食べるが、貪食・悪食で、時にはヘビやトカゲ、カエルを食べることもある。

選び方
体に張りがあり、腹のしっかりしたもの、体の斑点が鮮やかなものを選ぶ。体にぬめりのあるものほど新鮮。スーパーで見るのは養殖ものがほとんど。

料理の例
塩焼きがおいしい。刺身、蒲焼き、薫製、みりん干し、南蛮漬け、天ぷら、甘露煮、照り焼き、ムニエル、串焼きにして木の芽みそをつけた「魚田」など。郷土料理では姿寿司もある。火であぶったイワナに熱燗を注ぐ「骨酒」も有名。調理の際には内臓をしっかり出すこと(寄生虫がいるため)。

地域名・別名
にっこういわな、やまといわな、えぞいわな、ごぎ、きりくち、あめご(高知)、いもうお・いもな(福井)、いわばええ(宮城)、きそくち(三重、和歌山)、こぎ・ゆぎ(中国地方)、だんぶり・たんぶり(鳥取、岡山)

おにおこぜ

見栄えは悪いが、味はフグにも匹敵するほど美味で人気。豊潤な味わい、透き通るような白身のむっちりとした歯ごたえは格別。
体が不格好で鬼のように見えるため、この名がついた。背びれには猛毒をもったトゲがはえていて、刺されると非常に痛い。体色は住む場所によって違い、深場では赤みを帯び、浅いところでは黒っぽくなる。
仲間にはヒメオコゼ、ダルマオコゼなどがいるが、食用になるのはオニオコゼのみ。
旬は夏だが、うまさは1年中変わらない。フグがなくなる夏場は、それに代わる薄造りの高級魚として珍重される。

選び方
体に張りがあり、背びれ、腹びれのしっかりしたもの、皮にツヤがあって、身が締まったものを選ぶ。鮮度のよくないものは、体色が白くなり、粘液状のものが出てくる。

料理の例
背びれのとげは猛毒を持つので、包丁かペンチで切り落としてから調理する。(なるべくなら素人調理は避けたい。)薄造りの刺身、煮つけ、から揚げ、天ぷらなど。よいだしが出るので、汁物、鍋物にも向く。ちり鍋、椀だね、味噌汁など。酒としょうゆで下味をつけて焼き、木の芽をたっぷり添えて食べるのも美味。皮や肝もゆがいて食べる。

地域名・別名
おこぜ(富山、大阪、和歌山、広島、高知、熊本、長崎)、おこじょ(北陸)、あかおこぜ(東京)、つちおこぜ(神奈川、和歌山)、しらおこぜ(神奈川)いおこぜ、いじゃじゃみ(兵庫)、やまのかみ(愛媛)、ぼうちょおかさご(静岡)

ひらまさ(平政)

漁獲量が少なく、ブリ・カンパチと並んで「ブリ御三家」または「3大青物」とされ、その中でも最上のものとして珍重される高級魚。
刺身が最高で、ひきしまった身で弾力があり、さらりとした脂肪は甘みがあり、噛むほどに上品な旨味が楽しめる。
外形はブリにそっくりだが、よく見ると、胴に横1本の鮮やかな黄色の帯があることでブリと見分けられる。背の青色もブリより明るい。
ヒラマサはシガテラ毒を持っていることがあるが、この毒素を持ったヒラマサは、熱帯地方で獲れたもの・大型のものに多いとされるので、要注意。

選び方
体側の黄色の帯が鮮やかなもの、身が硬いもの、目が黒く澄み、エラの裏が鮮やかなものを選ぶ。
3kg前後のものが美味しいと言われる。太りすぎは水の飲みすぎと言って味が落ちるので、すらりと細身で形が良いものを選ぶ。また、小さすぎても脂がなさすぎてさっぱりしてしまう。養殖物は、天然物よりも身が白く、脂っこくて味が落ちる。
切り身は透明感があり、血合いが鮮やかなものを選ぶ。夏に三陸沖・千葉の勝山沖で獲れるヒラマサは特に評価が高い。

料理の例

何といっても刺身が一番。格別に美味しい。変色しにくく、血合いが少ないことから、結婚式場でもよく使われる。
養殖物、また大型すぎるものは脂肪分が多くなりすぎるため、刺身には向かない。照り焼き、バター焼き、塩焼き、ホイル焼き、煮つけ、みそ漬けなどにするとよい。カマは塩焼き、頭や中骨、血合いはあら煮、ヒレはだしに使える。

地域名・別名
はます(幼魚・高知)、ひらす(西日本各地)、ひらぶり(三重)、まさ(東京)、ひらそ(島根)、あかゆ(新潟)、しよのこ、てんこつ、はち、ひらそうじ

かつお(鰹)

初夏の香りを感じさせてくれる魚。「目に青葉山ほととぎす初鰹」の句は有名。江戸っ子は、まだ脂が少なくさっぱりした味わいのものを初鰹として求めた。
体は典型的な紡錘形で、腹部に4本の暗紫色の縞がある。
代表的な回遊魚で、日本近海では3〜4月頃から黒潮に乗って北上し(初鰹)、水温の下がる秋口に東北からUターンして南下を始める(戻り鰹)。北の海でサンマ、イワシなどを食べて脂肪をたっぷり蓄えた戻り鰹は、初鰹とはまた違った美味しさが味わえる。冷凍物は1年中食べられるが、味は生が一番。

選び方
1尾で買うとき
身が締まってかたいものを選ぶ。背の青紫色が鮮やかで、縞模様がはっきりしており、エラのひとつひとつがしっかりしていて色鮮やかなもの、腹部が盛り上がっているものが脂がのっていて新鮮。
刺身用のサクや切り身で買うとき

ピンクがかった赤色をしているものが新鮮。血合が鮮やかなもの。褐色になったものは味が落ちる。さらに鮮度が落ちると切り口が玉虫色に光るので注意。

料理の例
刺身、土佐造りのたたき、手こね寿司、なまり節、煮つけ、角煮、中落ちのあら煮、照り焼き、酢の物、土佐地方の郷土料理「かつお飯」、内臓の塩辛である酒盗など。用途は広い。鰹の加工品、鰹節はだしに最適で、日本料理には欠かせない。

地域名・別名
ほんがつお、すじがつお(関西、四国)、とっくり(東京、静岡)、まんだら(北海道、北陸)、びんこ・ぴんこ(宮崎)、かちゅう(沖縄)、たてまだら(島根)、かつ(東北)、さんぜんぼん(伊豆)

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かんぱち(間八)

ヒラマサと同等の扱いを受けるブリの仲間の高級魚。旬は夏(6〜8月)だが、夏は台風の影響もあってか入荷が少なく、夏のヒラマサ・冬のブリの間をぬって、秋に多く出回る。体に黄色い線が走っているのが特徴。
稚魚はモジャコと呼ばれ、このモジャコを大きく育てたものが養殖カンパチ。養殖物は脂が多く、味は天然物にはるかに及ばない。天然物はさっぱりとして肉質がよい。幼魚のとき、両目の周囲から背中にかけて黒い縞があり、真上から見るとちょうど頭に「八」の字が書いてあるように見えることが、カンパチの名前の由来。

選び方
1尾で買うとき
2〜3kgのもので、腹がしっかりしていて、体にぬめりがあり、色つやのよいもの、エラの色が鮮やかな赤色のものを選ぶ。(打ち身で目が赤くなる場合があるので、目では鮮度はわからない。)
刺身用のサクや切り身で買うとき
身が崩れておらず、血合いの色が鮮明なもの、ドリップ(水)が出ていないものを選ぶ。天然物の身は淡いピンク色をしているが、養殖物は脂肪が多いため白っぽい。

料理の例
刺身にして食べるのが一番。天然物は脂肪分も少なく、夏に刺身になる同属のイナダ(ブリの幼魚)より美味しい。比較的脂肪が多いので、酢を使うすし種によく合う。その他、塩焼き、照り焼き、あら煮、魚すき(塩少々で締め、霜降りにしてから、酒、醤油、みりんで下味をつけてから用いる)、汁物の実など。

地域名・別名
あかはな(関西、高知、九州)、あかばら(鹿児島)、しお(若魚・東海、関西)、しょっこ(若魚・東京)、かんぱ(東京)、はまち(幼魚・高知)、ひらそ(鳥取)、あかいお(北陸)

きす(鱚)

色が白っぽいので「シロギス」とも言う。江戸前天ぷらの食材として欠かせない。白身で、淡白で繊細かつ上品な味。さっくりと揚げた食感は軽く、揚げ物にぴったり。キスは水質汚染に弱く、日本近海では漁獲量が激減している。近年では韓国からの冷凍物が多く入荷するようになった。キスの仲間には他にアオギスがいるが、絶滅寸前の状況である。キスの旬は6月〜9月で、特に初夏の産卵期をひかえたキスは「絵に描いたものでも食え」と言われるほど美味しい。

選び方
姿がすっきりと美しく、身や腹が締まって張りのあるものを選ぶ。鮮度がよいものほど、ピンクがかった象牙色をした側線がはっきりしている。また、目の水晶体が澄んでいて、黒目がはっきりしているものが新鮮。ウロコがはげやすいものは鮮度が落ちている。開いてあるものの場合は、身に透明感があるものを選ぶ。

料理の例
鮮度が落ちやすいので、手早く調理する。淡白で上品な味を損なわないように塩焼きや天ぷらにする。鮮度のよいものは刺身に。昆布締めにすると、昆布の旨みが加わってさらに美味しい。フライ、南蛮漬け、酢の物、マリネ、吸い物などにしても美味しい。干物や上物の練り製品の原料にも使われる。大量に手に入った場合には、生干しにしておけば保存もきく。

地域名・別名
しろぎす(一般)、きすご(関西、四国、九州)、まぎす(東京、関東)、あかぎす(徳島)、きつご(長崎)

こち(鯒)

白身の高級魚で、肉は弾力に富み、甘みがあってとても美味しい。淡白でクセのない、シコシコした歯ざわりはフグに似ている。フグが冬の薄造りの王様なら、コチは夏の薄造りの王様といったところ。特に7~8月が脂がのって美味しい。
頭も体も平べったいユニークな形をしている。色は濃い茶褐色をしているが、腹側は白い。他のコチの仲間、特にメゴチと区別するため、マゴチ、ホンゴチともいう。
コチの名前の由来は、神官が使う笏(しゃく)に似ているところからで、笏は「こつ」とも読むので、それがコチに変化したという説が主流。
夏の釣りの対象魚としても有名。

選び方
体の表面に光沢があって、腹の部分を押して硬いもの、ヒレのぬめりが透明で張りがあるもの、目が黒く澄んでいるものが新鮮。
餌をたくさん食べているとそこから変色してくるので、餌を食べていないものを選ぶ。(食べているものはお腹を触ると張っていてプヨプヨする。)
腹は白いものより、少し黄色味がかっているものの方が脂がのっている。
刺身には活けものの方がよい。新鮮ならば活けものでなくても刺身になるが、身がやわらかくなっているものは避ける。

料理の例
何といっても薄造りの刺身、あらいに。煮物、天ぷらも極上の味。
あらは塩焼きや潮汁に。コチはどの部分も美味しいが、中でもほお肉は絶品と言われる。頭を塩焼きにして、ほおの身をていねいにほぐすとよい。
中国地方には「コチ飯」という郷土料理があり、これも絶品。三枚におろし、酒、しょうゆ、ごま油などで炒め煮したコチに炊きたてのご飯をまぜ、ミツバをのせて食べる。

地域名・別名
まごち、ほんごち、くろごち(岡山)、すごち(愛媛)、ぜにごち(長崎)、よごち(富山)、がらごち(瀬戸内海)、むぎめ(四国)、くちぬいゆ(沖縄)、いそごち

きはだ(黄肌)

日本人が大好きなマグロには、クロマグロ・メバチ・キハダ・ビンナガ・コシナガなどがあり、その1つである。マグロの仲間ではメバチに次いで漁獲量が多い。第2背ビレと腹ビレが鎌のように大きく立っていて黄色みを帯びており、昔はヒレのことを「ハタ」と呼んでいたため、キハダの名前がついた。
熱帯性のマグロで、日本には夏季に回遊してくる。キハダの旬は夏と秋だが、近海ものは夏が一番美味しい。肉は淡い紅色をしており、脂肪も少なめである。キハダの夏の刺身はクロマグロ以上に珍重されており、特に西日本ではクロマグロより好む傾向がある。

選び方
切り口につやがあり、肉に弾力があるものを選ぶ。サク取りの筋目が選ぶポイント。切り口の筋が等間隔で、上から下にまっすぐに通っているものが良品。筋が弧を描いていたり、斜めになっているものはできれば避ける。
古くなると黒っぽくなり、もっと古くなると緑っぽくなるので注意する。

料理の例
やはり刺身が一番。その他、寿司だね、山かけ、ぬた、茶漬け、まぐろ丼、サラダなどで生食する。仲間のマグロは脂の多い魚だが、キハダは脂肪分が少なく、加熱すると身がパサついてしまうため、照り焼きやねぎま鍋などの加熱する調理法は合わないようである。
脂肪分の少ないキハダを缶詰にしたものは、ツナ缶でも「ライトミート」と呼ばれている。

地域名・別名
きめじ(千葉、神奈川)、きわだまぐろ(東京)、びんなが(和歌山)

しまあじ(縞鰺)

アジの仲間の中で際立って美味しいといわれる高級魚。身が締まっていながらもねっとりとした歯ごたえ、甘みを含んだ味わい、香りの高さで「夏の魚の王」の名もある。天然物の刺身は絶品。春から初夏にかけて水揚されるが、漁獲量が少なく、高値で取引される。養殖もされているが、味は天然物には及ばない。体側の中央部には黄色の帯が1本通っている。幼魚のとき、体に黄色い横縞があるのが名前の由来。引きが強いため、釣り人からオオカミと呼ばれる。磯釣りの対象魚としても絶大な人気を誇る。

選び方

背部の青色と体側の黄色い帯が鮮やかなもの、エラが赤くきれいなものが新鮮。鮮度が落ちると、全体に光沢がなくなり、白っぽくなる。大型のものより、30〜40cmクラスのもの、2〜3kgのものが美味しい。天然物は養殖物に比べると、全体的に身が引き締まっている。刺身にすると、天然物は薄いピンク色をしているが、養殖物は脂が多く、白っぽい。張りと透明感があるものを選ぶ。
料理の例
シマアジの美味しさを堪能するには、何より刺身。平造りの他、薄造りにしてポン酢も合う。刺身にするときに落とした頭やカマは、塩焼きにするとよい。スダチやレモンをかけると美味しい。その他、塩焼き、照り焼き、煮つけ、アジそうめんなど。

地域名・別名
こせあじ(和歌山、高知)、かつおあじ・かつん(鹿児島)、しまいさぎ(関東)、おおかみ(東京)、かまじ(奄美大島)、そい・そじ(和歌山)、ひらあじ(熊本)、そうじ(沖縄)

すずき(鱸)

スズキ

夏を代表する魚で、美味な白身魚として知られる。ブリと並ぶ出世魚で、コッパ(稚魚)→セイゴ(1年魚、25cmくらい)→フッコ(2〜3年魚、50cmくらい)→スズキ(4年、成魚、60cmくらい)と呼ばれる。フッコは繊細で淡白な味だが、スズキは力強い身の質感が他の白身魚にない魅力。
体は左右に扁平な側扁形で銀白色をしている。腹ビレが胸ビレの真下近くにあるのが特徴。夏には汽水域に移動し、秋から冬にかけて深い海に戻るという回遊魚。成育とともに回遊の規模を大きくしていく。

選び方
1尾で買うとき:目を縁どる輪郭が黒々していて、輪郭の内側が銀色に輝いているもの、眼球が透明なものが新鮮。また、うろこにぬめりがあるもの、エラが鮮紅色のもの、体の色が金粉を散らしたように輝いて見えるものが新鮮。鮮度が落ちるとうろこが乾いてくる。
刺身用のサクや切り身で買うとき:身肉に透明感と弾力があるもの、皮の色が濃いものがよい。
スズキは高価だが、セイゴなら安く買え、塩焼きなどで味のよさを楽しめる。

料理の例
セイゴやフッコ
主に塩焼きにする。
スズキ
鮮度のよいものは、あらいや刺身、湯引きに。魚の種類が減る夏場には貴重な白身魚のすし種としても一級品。落とした頭やカマは酒煮に。
塩焼きや椀だねにも合う。皮は焼くと縮んではがれやすいので、皮に筋目を入れて焼く。
その他、香草焼き、松江名物の「奉書焼き」、蒸し物、椀だね、ムニエルなど。

地域名・別名
せいご(幼魚・東京)、せえご(幼魚・宮城)、とんがり(幼魚・千葉)、ふっこ(若魚・東京)、すすき(富山、三重)、またか(愛知、三重)

たかべ(鰖)

青灰色の地に鮮やかな黄色い帯が走る美しい日本特有の魚。イサキに似ている。関東以南の太平洋側に生息する暖海性の魚で、特に伊豆七島に多い。
口の中や舌に絨毯のような小さい歯がびっしりとついていて、この歯でえさをすりつぶして食べるため、身がやわらかく、脂が乗っている。旬は夏で、特に産卵期直前の7、8月頃が美味しい。市場で多く見かけるのは伊豆近海で大量に水揚げされる8月頃。以前は比較的安価だったが、近海の「地もの」ということもあり、近年は比較的上等な魚として扱われている。

選び方
丸々と太っていて、腹がしっかりしていて全体に張りがあり、銀白色のもの、背から尾にかけての黄色の帯が鮮やかで、全体に青みが強いもの、目が澄んでいるものを選ぶ。
鮮度が落ちてくると、全体が黒ずんでくる。うろこが薄く大きいため、はがれやすいので、鮮度を見るときはうろこを無視する。

料理の例
身がやわらかくて脂肪分が多いので、塩焼きが一番人気がある。伊豆七島では小さいものを「背ごし」といって、背骨ごと薄切りにして刺身で食べている。新鮮なものは刺身にしてもコクがあって美味しい。フライなど洋風にするには、磯臭さを抑えるため、パン粉にチーズを混ぜたり、ハーブ類を使ったりする。タカベは骨も食べられる。特に、ヒレやヒレのまわりの小骨を焼くと美味しく、酒の肴に喜ばれる。

地域名・別名
しまうお(熊本)、べんと(高知)、しゃか(和歌山)、ほた

たちうお(太刀魚)

太刀魚

名前のとおり、太刀に似た、細長く平たい銀白色に光る魚。体長が1mを超す大きなものもいる。回遊性の魚で、南の海で越冬し、夏に北上して産卵する。海中で立ち泳ぎをする姿が名前の由来という説もある。
旬は夏から秋。初夏の頃には脂がのり、夏が過ぎると脂肪が減ってきて淡白そのものの味になる。脂肪の組成にオレイン酸が多いため、脂がのっても舌触りは軽いと言われる。主に底引き網や刺し網で漁獲されるが、体表にうろこがなく傷つきやすいため、1本釣りで漁獲されたものは高価で専門店に回される。

選び方
表皮の銀色の膜(グアニン)が鏡のように輝いていて、なるべく傷がなく身が硬いものを選ぶ。1m前後の大きさのものが最も味がよい。大型のものは遠洋で獲れたもので、大味で風味も落ちる。切り身の場合も、銀色に輝いていて、皮が破れていないもの、身が硬いものを選ぶ。切り口の透明感もよく見る。

料理の例

肉質がやわらかいので、最適料理は焼きもの。塩焼き、酒塩焼き、照り焼き、バター焼きなど。意外だがバターやオリーブオイルの風味に合うので、ムニエルなど洋風料理の素材にもなる。新鮮なものは刺身(細造り)にする。皮はむかずに包丁で体表をこする程度にした方がよい。独特の歯ざわりが楽しめ、ほどよくのった脂が美味。昆布締めも美味しい。その他、煮つけ(梅・さんしょう煮、辛み煮など)、から揚げ、揚げ煮など。調理の際は、骨が鋭いので注意する。

地域名・別名
サーベル・さあらべ・さわべる(福島)、たち(一般、関西、四国、九州)、たちのうお(東京)、だつ(秋田)、はくなぎ・はくうお(宮城)、しらが(新潟)、たちお(新潟、和歌山、兵庫、鳥取、高知)、たちんじゃ(沖縄)、かたな

はも(鱧)

ハモ

関西では夏の魚料理に欠かせない存在。特に京都のハモ料理は有名。祇園祭りにも欠かせない。「ハモは梅雨の水を飲んでおいしくなる」と言われるように、6~7月が最も美味しい時期。脂がのっていて、身もやわらかい。
ウナギ型だが、やや平べったい円筒形をしている。肉食で、歯が鋭く、小魚・甲殻類・イカ・タコなどを食べるが、産卵期には絶食する。ウナギやアナゴよりも顔つきが獰猛で、実際に産卵期などには近づくものに鋭い歯で噛みつく。
ウナギと同様に、脂肪とビタミンAが豊富で、夏バテ予防に最適。脂質が多いわりに淡白で上品な味わい。
近年は韓国や香港からも輸入されている。

選び方
ぬめりが白濁しないで透明感があり、目が濁っていないもの、丸みがあって、体表が光っているものが新鮮。
500g〜700gくらいの大きさのものが脂がのって美味しい。大きくなると皮が硬くなるので、60〜70cmくらいが食べ頃。
骨切りしたものを買うときは、肉厚で、身に透明感と弾力のあるものを選ぶ。
特に明石産のものが美味しいとされる。

料理の例
骨が硬く小骨が多いため、骨切りするなど高度な技術が必要。
関西では夏の味覚で、熱湯で湯引きして素早く氷水にとる「ハモちり」、白焼きにして塩もみしたキュウリと土佐酢であえる「ハモざく」、椀種、照り焼き、天ぷら、雑炊、ハモそうめんなど、様々に料理して食される。蒲焼きやから揚げにしても美味しい。

地域名・別名

はみ(富山)、はむ(広島、高知、愛知、愛媛、沖縄)、うにはも(福井)、はもうなぎ(鹿児島)、うど、じゃはず、はんぬいゆ

北海道や三陸でハモと呼ばれるのは、アナゴのこと。

どじょう(泥鰌)

ドジョウは昔から、様々な薬効があるとされ珍重されてきた。夏が旬で、特に卵を持って脂がのったドジョウは美味しい。
昔は日本のどこの田んぼや小川でも、バケツにたくさん獲れたが、近年、農薬の使用などの影響で、激減している。最近市場に出回っているものの半分は韓国や中国からの輸入ものだと言われる。遊休田での養殖も行われている。円筒形をした細長い体が特徴。体長は10〜15cmほどで、尾ビレは扇形、口の周りに10本のヒゲがある。浅い池や沼、小川、水田などの泥底に住む。泥臭いので数日間真水に放ってから調理する。

選び方
生きのいい、丸々と太ったものを選ぶ。輸入物は体が平べったく、それに比べて国内産は体に丸みがある。味は国内産の方がよい。真っ黒な千葉産や、青口と呼ばれる岡山産が美味しいとされる。

料理の例
何といってもゴボウと炊いて卵でとじる「柳川鍋」。コツは下煮をしておくこと。その他に開きでつくる「ぬき鍋」、そのままつくる「丸鍋」など。意外と淡白な味なので、みそ汁や蒲焼きなどにも合う。

地域名・別名
まどじょう、おどりこ(東京)、のろま(山梨)、じょじょ(和歌山、高知)、おおまんどじょう(千葉)、あじめ、むぎな

とびうお(飛魚)

関東以北ではあまり食べられないが、南西日本では夏の味として親しまれている。脂肪分が少なく、たんぱく質は多く、淡白なわりにうまみのある魚。カロリーは低い。素干ししてつくった「あご」は上等なだしとして用いられる。
海面から10mの高さをひと飛びで200mも飛ぶ(時速約60km)。空中を飛ぶ姿は初夏の海の風物詩。マグロなどの大型捕食魚から逃げるために、胸ビレを小さな羽根のような形にまで発達させたと言われる。鮮魚の他、干物や練り物などの加工品にもなる。中でも伊豆七島の「くさや」、五島の「あご」(干物)、鳥取や島根の「あご竹輪」は有名。

選び方
全体に光沢があって魚体がピンとしているもの、背部の青黒色が濃く鮮やかに輝いているもの、目が澄んで真っ黒なものを選ぶ。生食したいときは「刺身用」か確認しておく。

料理の例
塩焼きやから揚げにするのが一般的。冷めると身が締まって固くなるので、熱いうちに食べる。鮮度がよいものは刺身やたたきで淡白な味を楽しみたい。その他、筒切りにして有馬煮、すり身にしてつみれ汁・鍋、マリネ、南蛮漬け、フライ、ムニエル、バター焼きなど。開き干しや各種練り製品も美味しい。卵はゴールデン・キャビアと呼ばれ、すし種、珍味として珍重される。

地域名・別名
ほんとび(別名)、あご(他の種類とも混同・福岡、長崎、鳥取)、うず(三重)、つばくろ(石川)、とび(関西)、トブー(沖縄)、とりうお(広島)、たちうお(北陸)、つばめうお、つばさうお、つばくろうお

まあじ(真鰺)

真鯵

味がよいから「アジ」、というのが名前の由来。日本人の食卓にもっともなじみのある魚のひとつで、人気がある。
側扁した紡錘形で、体にゼンゴ(ゼイゴ)と呼ばれる硬いトゲのある稜鱗(りょうりん)があるのが特徴。成魚になると沖合を回遊するのが普通だが、一部は回遊せず内湾や瀬に居て、これを「瀬つき」と呼ぶ。市場ではその色によって、回遊するものを「黒アジ」瀬つきのものを「黄アジ」と呼び分けている。一般的には、数は少ないが、黄アジの方が美味しいとされている(回遊しないので脂がのっているため)。近年は韓国からの輸入も増加しており、また、冷凍ものや干物はヨーロッパや南米からも輸入されている。アジの仲間には他に、メアジ・マルアジ・ムロアジ・アカアジなど。

選び方

目が透き通っていて、エラが鮮紅色で濁りがないもの、体にピンと張りがあって、背中が青緑、腹が黄金色でつやがあるものが新鮮。体に厚みがあり、背中が太っているものが脂がのって美味しい。刺身は鮮やかなピンク色のものが新鮮。干物は全体が丸に近い形をしたものが良い。脂がのって太ったあじを使った証拠。茶色く脂やけしていないものを選ぶ。

料理の例

刺身、たたき、寿司だね、塩焼き、煮つけ、フライ、天ぷら、干物など、幅広い調理ができる。伊豆七島の「くさや」や、薬味と味噌を混ぜ込んだ「なめろう」も有名。中型・大型で鮮度のよいものは刺身やたたきに、中型のものは塩焼きにするとよい。小型のものや豆アジはから揚げや南蛮漬け、マリネなどにして丸ごと使うとよい。皮付きのまま刺身にしても美味しい。

地域名・別名
くろあじ(回遊性のもの)、きあじ(定着性のもの)、じんだ、じんた(小型の若魚・関東)、ぜんご、ぜいご(小型の若魚・中国・四国地方)、めだま(東京)、あかあじ(和歌山、広島)、ほんあじ(和歌山)、おにあじ(和歌山)、とつかわ(和歌山)、がつん(奄美)、きんべあじ(鹿児島)、しもふりあじ(神奈川)、じんだこ(千葉)、ひらあじ(大阪、広島)、せきあじ(大分・佐賀関)

うに(海胆)

独特の甘み、とろけるような食感が魅力。昆布の名産地である北海道のウニは、昆布を食べているせいで味がよいと言われる。
体全体が栗のいがのようなトゲに覆われているのが特徴。トゲの間には管足があって、滑るように海底を移動する。体の下にある口には歯があり、海藻などを食べている。
日本近海には140種ほどのウニが生息しているが、その中で食用にされ、流通にのるのは、エゾバフンウニ、キタムラサキウニが大半。その他、バフンウニ、ムラサキウニなどが混じる。食用にされているのはウニの雄と雌のそれぞれの生殖腺。
近年はカナダ、アメリカ、チリ、韓国、中国などからの輸入も多い。

選び方
粒が小さくはっきりして、形がこんもりとし、水っぽくないものを選ぶ。身が引き締まっているものが鮮度がよい。溶けかかっていたり、茶褐色に変色しているものは古い。ただし、長時間の輸送に耐えるため、ミョウバンに漬け込んだ結果、形を保っているものもある。ミョウバンが強いと苦いことがある。
種類と関係なく、粒の色によって、黄みがうすいものを「白ウニ」、赤みの強いものを「赤ウニ」と呼ぶ。赤ウニの方が甘みが強く、身の締まりがよく、日持ちもよい。値段もやや高め。

料理の例
何といっても刺身や寿司が一番。生をわさび醤油で食べる。殻つきのまま手に入れば、殻ごと焼いて、焼きウニにしても美味しい。
その他、蒸し物、ウニごはん、冷奴にのせたり、きゅうりにのせてオードブルにしても楽しめる。
赤ウニは甘みが強く、刺身向き。白ウニは、刺身もよいが、蒸し物やウニごはんにすると美味しい。
八戸名物「いちご煮」は、ウニとアワビを使った汁。瓶詰めにした「粒ウニ」は山口名物の珍味。塩ウニや練ウニなどの加工品も、ひと味違った風味。

地域名・別名
がぜ、がんぜ

まあなご(真穴子)

マアナゴ

ウナギと同様に、夏が旬で、栄養価が高いので、夏バテの予防にはうってつけの魚。あっさりした味とやわらかな甘みが特徴で、初夏の頃は格別に美味しい。江戸前天ぷらの四天王の1つで、関東では天ぷらや寿司に欠かせない。
ウナギと同じく円筒形で細長い形をしているが、ウナギよりも口が大きく、上下の顎に臼歯のような歯がある。体の側面に規則正しい白い点が並んでいるので、「ハカリメ(秤目)」とも呼ばれる。
市場では背開きにしたものが多く流通する。最近では韓国からの輸入も増えているが、味は国産がやや上だと言われる。

選び方
身に弾力があり、ぬめりが透明でスルリとした感触があり、白い斑点が鮮やかで、目が透き通っているものが新鮮。40cm前後のものが食べ頃。天ぷらには、初夏の50g前後のメソと呼ばれるものが最高。
ところどころ色あせているものは鮮度が落ちている。また、食べすぎで腹がふくれているものは鮮度が落ちやすくなる。
開いたものを買うときは、肉厚で身が透き通っているものを選ぶ。

料理の例
ウナギと同じように、白焼き、蒲焼き、柳川鍋などにして食べるが、ウナギよりもさっぱりしているので、寿司だねや天ぷら、蒸し物、椀だねにも用いる。
岡山には白く透き通った稚魚を生でポン酢で食べる「べたら」という郷土料理がある。
血液中に弱いたんぱく毒を含むため、生食は避ける。

地域名・別名
はかりめ(別名)、めそっこ(全長20cmくらいのもの)、とおへい(大分)、ほしあなご(兵庫)、どてだおし(鹿児島)、はも(北海道、東北、山陰)、ほんあなご(神奈川)、めじろ(三重)、めばち(高知)、きんりょう(和歌山)

くるまえび(車海老、車蝦)

くるまえび

エビは日本人に好まれ、エビの1人当たりの輸入量・消費量ともに日本が世界一。日本で食用とされるエビの大部分がクルマエビ科で、その中でも代表的なのがクルマエビ。茶褐色または青褐色の横縞があり、体を曲げると車輪のように見えるところからこの名がついた。
食材としては、和洋中どんな料理法にも合う。国内産のクルマエビはゆでると縞がきれいなピンク色になり、高級寿司店などでは好まれて使用される。上品さとともに甘みやプリプリした食感を味わいたい。
養殖が盛んで、天然、養殖の割合は半々くらい。生きたまま出回っているのは養殖物が多い。最近では天然・養殖を問わず輸入物のエビが非常に多く、1年を通して出回っている。本来、天然物は夏から秋にかけてが旬と言われている。

選び方
最もよいのは身が締まった活けもの。活けものは体が反って弾力があるものを選ぶ。弱ってくると丸まる。殻が透き通って色ツヤのよいもの、身に弾力があるもの、頭の付け根がしっかりしているものを選ぶ。
殻や尾が黒く変色しているもの、身の色が乳白色のもの、内臓や卵が出ているもの、白く冷凍やけしているものは古い。
脱皮したばかりの殻がやわらかいものは、味にコクがない。殻がかたいものが美味しい。冷凍もので頭がついているものは、新鮮なうちに冷凍したもの。
料理の例
調理は背わたを取ると風味がよくなる。くさみが気になる場合は、酒を使って下味をつけるとよい。胴の殻は頭の方からむき、尾を残す場合は尾の手前1節を残す。
ねっとりした甘い味わいを満喫するには刺身が一番。寿司だね、天ぷら、フライ、塩ゆで、焼き物、炒め物など何にでも向く。頭や殻からはよいだしが出る。

地域名・別名
ほんえび、まえび、さいまき(重さ20g以下、体長7〜8cmまで)、中まき(重さ20〜25g)、まき(重さ40gまで)、まだらえび

あわび(鮑、鰒)

あわび

一枚貝のようにも見えるが、巻貝の一種。奈良時代から、薄くのしたアワビの干物が、熨斗鮑として献上品や贈り物に添えられていた。これが現在の「熨斗」の起源。
歯ごたえ、旨みともに貝の王様と言われる。刺身はそのコリコリとした歯ごたえを味わう。加熱すると旨みとやわらかい歯ごたえが増す。
国内で漁獲されるアワビには、クロアワビ・メガイアワビ・エゾアワビ・マダカアワビがある。種類によって生息域が異なる。市場に出回る多くはクロアワビとメガイアワビ。現在では各地で種苗放流が行われているので、漁獲量は多くなっている。また、輸入も盛んである。
冬に産卵した後、春から夏にかけて身が太ってくるので、夏が旬。冷凍品や中華素材になる干しアワビは1年中手に入る。

選び方
必ず生きているものを求める。身に傷がなく、肉厚のものを選ぶ。
生きのよいものはつつくと身を縮める。つついてもあまり動かず、だらりとなって張りのないもの鮮度が落ちている。
大きさで味は変わらないが、殻に対して身が大きいもの、貝殻が深いものが良品。

料理の例
刺身のほか、酒蒸し、ステーキ、バター焼き、炒め物、煮物、つけ焼き、椀だね、炊き込みご飯など、幅広く料理できる。
クロアワビは歯ごたえを生かして生食に、メガイアワビは過熱すると美味しい。腸は磯の香りが珍重され、刺身に添えたり、つぶしてソースにしたりする。
殻のまま身に塩をふって2〜3分おき、たわしでよくこすって汚れやぬめりを落としてから調理する。殻の薄い方の端から木べらのようなものを差し込むと身が外れる。肝は傷つきやすいので注意して分ける。春先、わたの中に光過敏症の原因となる物質が含まれることがあるので、生食には注意する。

地域名・別名
おん、おんがい、あおがい

しじみ(蜆)

しじみ

貝類一のコハク酸を持ち、だしには濃いうまみが溶け込む。肝臓によい成分も豊富。味噌汁の具として馴染みが深い。
日本にはマシジミ・ヤマトシジミ・セタシジミの3種が生息する。最も多いのがヤマトシジミで、夏が旬なので土用シジミとも呼ばれる。関西方面の市場ではセタシジミが主流。マシジミは冬が旬なので、寒シジミとも呼ばれる。
以前はどこの河川、湖でも豊富に採れたが、現在では激減し、年々小粒化している。最近ではタイワンシジミなどの輸入物も多い。

選び方
殻が大きく薄いもので、色が濃く、つやつやしているものが新鮮。粒が揃い、丸みのあるものがよい。殻の色はすんでいる場所によって異なる。
店頭で砂出しをしている間、元気よく砂を吐いているものが多いものほど生きがよい。また、貝に触れた時に勢いよく殻が閉じるものは鮮度がよい。口が開きっ放しのものは避ける。

料理の例
砂出しをし、殻をこすりつけるようにしてよく洗ってから調理する。
やはり味噌汁、しじみ汁が一番。味噌は赤味噌系がよく合う。佃煮にもする。その他、炒め物、ラーメンの具、炊き込みご飯にも。
韓国や中国、台湾では蒸したり炒めたりしてから、香味野菜や辛味を加えた醤油で味つけしたものがよく作られている。

地域名・別名
特になし

こんぶ(昆布)

だしを取るのに欠かせない海藻。甘く上品なだしが取れる。コンブ類の分布は、1年を通して水温差がもっとも激しい北海道周辺が中心。マコンブ(真昆布)・オニコンブ(鬼昆布、羅臼昆布)・リシリコンブ(利尻昆布)・ミツイシコンブ(三石昆布、日高昆布)など、さまざまな種類がある。刈り取り最盛期は盛夏。秋に採られたものは厚みが出るがかたく、品質は下がる。乾燥して出荷される。流通する多くが養殖物。

選び方
なるべく平らで幅広く、つやと厚みがあってよく乾燥し、黒みを帯びた緑褐色のもの、くだけておらず、磯の香りのよいものが良質。表面の白い粉は旨み成分。種類によって特徴があるので、用途に応じて使い分ける。
マコンブ
甘みのある良質の澄んだだしが取れ、関西方面での需要が多い。コンブ類の代表種。
オニコンブ
主産地の羅臼にちなみ「羅臼昆布」の名でも出回る。少し濁るものの、香りよく濃いコクのあるだしが取れる高級品。
リシリコンブ
少し塩味がかっていて、上品な風味の澄んだだしが取れる。京都で人気がある昆布。
ミツイシコンブ
主産地の日高地方にちなみ「日高昆布」の名で出回る。関東での需要が多く、鍋物のだし取りには最適。よいだしが出て早くやわらかくなり、比較的安価なので、昆布巻き、家庭用だし昆布、刻み昆布などに使われる。

料理の例
だしを取るほか、おでん、佃煮、昆布巻きなどに。おぼろ昆布、とろろ昆布、子持ち昆布などの加工品もある。
だしを取る際には、昆布は水洗いせず、汚れはかたくしぼった濡れ布巾で拭き取る程度にする。一番だしは水からつけ、沸騰前に取り出す。時間がある場合には、火にかける前に昆布を入れてしばらく置くと更によいだしが出る。また、昆布にハサミなどで切れ込みを入れておくと、だしが出やすくなる。10時間ほど冷水につけることで水出しも可能。
湿気を避けて保存する。

地域名・別名
ほんこんぶ、えびすめ、ひろめ

まぼや(真海鞘)

東北地方の名産。原索動物の一種で、卵形に近い形、厚い外皮は赤く、イボのような突起がある。身は鮮やかなオレンジ色。独特の形状から「海のパイナップル」とも呼ばれている。
見た目の奇妙さから敬遠する人も多いが、珍味として全国的に知られるようになり、鮮魚店やスーパーでも見かけることが増えた。ホヤはマボヤ・アカボヤ・スボヤなどが食用にされるが、最も多く食べられているのはマボヤ。天然物だけではなく、養殖も盛んに行われている。
磯の香りが強い。味、香りともにひとクセあるが、慣れると病みつきになると言われる。

選び方
光沢があって赤色が濃く、太っているもの、磯の香りが強いものを選ぶ。外皮がパンパンに張っているものが新鮮。
皮がカサカサしたものは鮮度が悪い。
むき身ならオレンジ色が鮮やかで、つやがあり、身が締まったものが新鮮。
養殖物は天然物より色が薄い。

料理の例

外皮をむいて中のオレンジ色の身(筋肉)を食べる。
独特の強い磯の香りを楽しむために、新鮮なものを生で食べるのが基本。刺身、酢の物など。きゅうり、わかめ、うど、大根おろしなどもよく合う。
また、焼きホヤ、から揚げ、天ぷら、煮付けの他、薫製、味噌漬け、粕漬けなどにすることもある。加工品には塩辛がある。

地域名・別名
単にホヤと呼ぶことも多い。

参考文献
「食材図鑑 魚」 佐藤魚水 監修  永岡書店、1997年
「スーパーで買える魚図鑑」 セマーナ 編  日本文芸社、2002年
「さばきもわかる食材魚図鑑」 池田書店編集部 編  池田書店、2008年
「旬を味わう 魚の事典」 坂本一男 監修 ナツメ社、2008年
「旬の食材 春の魚」 講談社 編  講談社、2004年
「日本のおいしい食材事典」 江上佳奈美 監修 ナツメ社、2009年