特集
フラット50は、 始まったけれど。 日本版グリーンニューディールの行方
- 小
- 中
- 大
住宅金融支援機構は、6月4日の長期優良住宅施行にあわせて、フラット50の取り扱いを開始した。全国紙の報道もほとんどなく、「わが国、最初の長期住宅ローン」というには、あまりにさびしいスタートである。
まず、その内容をみてみよう。
融資額の上限は6000万円。
返済期限は36年以上50年以下。1年単位で選択設定できる。
但し、完済時の年齢は80歳未満とされるので、一人で支払う場合は30歳以下でなければならない。この場合は、二世代にわたる親子リレーを利用できることになっており、この点は当初予定された内容となっている。
問題の一つは、肝心の金利が、フラット35よりも、0,6%程度高いことである。
この新制度を利用して3000万円借りたとして、フラット35S(20年金利優遇タイプ)よりも、月々5000円程度、フラット35に比べて1万円程度支払いが少なくなるというものの、予想され期待された月々3万円減ということに遠く及ばない。
50年払ったとして、総額で800万円支払額が増えるだけで、これでは魅力に欠けるといわざるを得ない。

フラット50を組み合わせたローン返済シミュレーション比較
「びお」は、フラット50は低所得者の住宅取得者の応援歌になるものと期待した。フラット35Sの20年金利優遇タイプが発表された時、フラット50にも当然スライドされ、さらに金利面での優遇策が講じられるものと期待された。長期優良住宅に対する、国交省の並々ならない取り組みが、それを実現させずにおかないと推量された。
もし政府が、そういう政策選択を行ったなら、それは日本版グリーン・ニューディールと呼び得るものとなり、若年層にとって朗報となり、「フラットに、ゆっくりと50年掛けて、小さな家を建てよう」という動機を与えられるものと考えられた。
高度経済成長下、もしかしたら自分も一戸建ての家が建てられるかも、という期待があり、そのエネルギーが「中流」意識を培養した。小泉構造改革によって、この「中流」層は液状化し、「下流」層の形成へと凹んだわけだが、多くの日本人は、これを首肯し、諦観に陥ったわけではない。これを押し返したいというエネルギーを秘めている。
この押し返しは、根本的には日本経済が復活するほかないが、選択される政策によって状況を打開することは可能である。もしフラット50に対し、政府がこれを重視し、思い切った優遇策を講じたなら、土地さえあれば家賃程度の支払いで家を建てることは可能となるのである。
「びお」は、「小さく建てて、大きく育てる家」について、
若い建築主へのメッセージを、こう綴った。
- ビューと不況風が吹いている。
- 収入も年金も、医療も介護も不安ばかり。
- 家をつくるというには、
- ぼくらは、つらい時代を生きている。
- だけど、負けないで家を建てたい。
- なぜなら、風が吹いたって、嵐が来たって、
- 守ってくれるのは家族であり、
- 住まいはその根城なのだから。
- もうムリをするのはやめよう。
- 身の丈に合った、小さな家がいい。
- そのかわり、空いた敷地に木を植えよう。
- 10年たったら、木は大きく育っている。
- 小さくても、長持ちする、しっかりした家。
- 「空地も部屋である」という発想を持つ家。
- 家族が増えたら建て増して、
- 家族が減ったら減築して畑にしよう。
- 状態に合わせて、やわらかく変わればいい。
- そんな住まいづくりを進めよう。
もし政府がフラット50を、長期優良住宅を条件づける最重要の金融政策と位置づけ、これまでにない優遇策を講じて、若年層を住宅建設に向かわせたなら、それは間違いなく最大の景気刺激策となり得ただろう。
現在、日本の住宅には1981年の改正建築基準法以前の住宅が46%残されている。その14年後の1995年に阪神淡路大震災が勃発した。死者は6,434名を数え、住家被害は、全半壊合計約25万棟(約46万世帯)に達した。死者のうち80%相当、約5000人は木造家屋の下敷きで即死した。老朽木造建造家屋がなければ、死者は1/10になっていたと言われる。この痛恨の結果を踏まえ、2000年に建築基準法が大改正され、同時に「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が施行された。この2000年以前の住宅は90%以上を数える。
長期優良住宅の背景には、この未曽有の震災被害の結果と、地球環境の危機的状況があり、住宅に何ができるかという、重い課題がある。
下記グラフにみるように、高齢者になるほど築年数の高い住宅に住んでいる割合が高いわけで、最近の地震被害でも、高齢者の住む古い木造住宅が目立っている。

世代別居住年数
これを放置したまま、大地震が起こったら被害は甚大である。神戸の結果に学べなかったということになりかねない。マスコミは地震が起こって被害が発生すると、有効な手が打たれなかったと批判するだろうが、今、それをどう考えるかということは、何も書かない。
問題は、過疎が進んだ地方だけでなく、都市でも高齢化が進んでいて、お年寄りばかりの町が少なくないことである。
息子や娘たち、孫たちは、家が古くて狭いからとアパートを借りたりして、ムダなお金を払っている。家には爺々婆々、老夫婦だけが住んでいて、街中の商店街はシャッターを閉じて不便を強いられている。目先の利いたコンビニは、そういう人を対象にした品揃えをするようになったが、肝心の家は老朽化する一方である。
息子や娘や孫たちが、その家に戻って、長期優良住宅で建てれば、家賃は助かるし、家族を回復することが出来る。もし、家賃程度の支払いで建て替えられるなら、それは可能である。新築にまで及ばない場合は、建物を「ビフォーアフター」すればいい。ただし、構造を無視した「お化粧」だけの「ビフォーアフター」ではなく。さらには、土地を持たない若者は、養老孟司氏がいう、都市郊外に週末住宅を建てて「参勤交代」すればよく、その週末住宅は老後には「終の棲家」になり、大地震が起こった場合には「疎開住宅」になるだろう。
長期優良住宅はこうした点に、新たな視野を与えてくれる取り組みだと考えられたが、今回のフラット50の内容は、期待に反して、ひどくトーンダウンしたものとなっている。
今回の取り扱い方で、評価し得るのは返済パターンのバリエーションである。
子どもの教育などにお金が掛かる時期までは、フラット35sタイプで20年返済とし、そのあとはフラット50に切り替えることを了としている。また、親子リレーによる返済方式も、これまでにないものである。
しかし、フラット50を言う以上、練り上げられ、なるほどと思えるものを打ち出してもらいたかった。これでは長期の絵が描きにくく、アピール性に乏しい。
今後、フラット35がそうであったように、フラット50に民間金融機関が参入し、よい競争が起こり、政府も支援策に乗り出さざるを得なくなれば、そのときが本番と考えたい。
ひとまず、長期優良住宅の施行に合わせ、フラット50が開始されたことは一歩前進なのかも知れない。
関連記事
特集「フラット50をどうみるか 」
http://www.bionet.jp/2009/01/flat50/





2009/6/12(金)17:30
これは家を計画している人にとっては、見逃せない一級の情報ですね。大きな変化が生じているという実態がよく分りました。今回はカタチだけ間に合わせたのではないかということですが、国交省の次の一手を見守りたいと思います。