びお・七十二候

螳蜋生・かまきりしょうず

2009年06月05日 金曜日
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螳蜋生

螳蜋生と書いて、かまきりしょうずと読みます。カマキリが生まれ出る時候をいいます。
カマキリの交尾は、前の年の秋です。カマキリのメスは交尾して間もなく、尾っぽから泡状の粘液を出して、それを草の茎や小枝,人家の外壁などに卵を産みつけます。卵臥は一塊になっていて、その中に数百もの卵が入っています。
そのまま越冬し,翌年5月から6月に掛けて幼虫がいっせいに孵化します。今がちょうどその時季です。子カマキリは、親とそっくりの姿で生まれます。カマキリは、幼虫時から捕食性が強いのが特徴です。
カマキリは、前脚の噌節より先の部分が変形してできた鎌を備えています。頭部は逆三角形です。体は全体に平たく細長く,前胸は長く、頭部と前胸の境目は柔らかいため、頭部だけを広角に動かすことができます。前脚の噌節に、鋭いとげの列があります。その先端の鋭くとがった脛節(けいせつ)によって〈鎌〉を形成し,小昆虫の捕獲に使います。カマキリは、短距離を直線的に飛ぶことが出来ますが、およそ飛行は苦手です。羽根は扇状に広げて威嚇に使います。
カマキリは、体の小さいオスが体の大きいメスに共食いしたり、メスがオスを食い殺すことがたまに見られます。この面ばかりが強調され、『かまきり夫人』などというポルノ映画が現れたりして、カマキリは恐いというイメージがつくられました。カマキリの名誉のために言っておけば、カマキリが持つ生物としての特性と、人間の男女のあり方とは何の関係もありません。カマキリのオスは、確かに頭部や上半身を失っても交尾が可能です。交尾の途中にメスが頭を食べてしまうことがありますが、オスはそのまま交尾を続けます。だからといって、オスが自ら身を投げ出して食われることはありません。
たしかにカマキリは、肉食性の強い昆虫です。動いている小昆虫だけでなく、自分より身体が大きいカエルやトカゲまでを餌食の対象にします。
カマキリは、捕食をするとき,眼で品物の動きを追う動眼視を持っています。眼はよく発達していて,広い視野を持っています。そして、頭部を自由に動かすことができます。餌の対象が射程距離に入るやいなや,鎌をのばして打ち振り,餌をとらえるのです。頭胸部と腹先をのけぞらせて威嚇姿勢をとり、相手を脅しあげるところなど見事なものです。

このカマキリの攻撃性、好戦性から、自分よりも大きな相手に立ち向かうことを〈蟷螂の斧〉といいます。「風車に向かうドン・キ・ホーテ」と同じ意味です。「蟷螂(とうろう)」とは、カマキリの漢名で、「蟷螂の斧」はカマキリの鎌を指しています。
カマキリは雪国では、卵を雪に埋もれない高さに産みつけることに注目し、カマキリの卵ノウ高さと最大積雪深との関係を、実証的に研究した人がいます。その研究者は酒井與喜夫という人で、その結果は長岡技術科学大学博士論文として発表しています。論文の論旨がwebに出ていて、とてもおもしろいので興味のある人はアクセスしてください。

きようの句は、前に書いた、魚津のブリの句と同じ高野素十の句です。

打水や萩より落ちし子かまきり

先に、幼虫時から捕食性が強いのがカマキリの特徴だと書きましたが、カマキリは、不完全変態で,幼虫から成虫と似た形態をしていますが、子どもは子どもです。成虫なら、打ち水ごときで木から転がり落ちることはないのでしょうが、そこは子カマキリだと素十はいうのですね。
人間の子にもそういうのがいる、という皮肉が利いているように感じられますが、素十の近景写生の即物性からすると、そんな思念が入り込む余地はないように思います。
生物を詠んだ、素十の句を以下に紹介します。

蟻地獄松風を聞くばかりなり
夕霰枝にあたりて白さかな
くもの糸一すぢよぎる百合の前
ばらばらに飛んで向ふへ初鴉
風吹いて蝶々迅(はや)く飛びにけり
湖の村掛稲に鴨がつく
かかへくる鴨のつきたる稲束を
湖の筌鳰も入る鴨も入る

どの句にも、感情の動きは見られません。それぞれの生物が持つ姿態が的確に詠まれています。素十は「感情を詠ずる」ことを嫌いました。それはゴーマンではないかと。「忠実に自然を観察し写生する。それだけで宜しいかと考へます」(「ホトトギス」昭和7・10月号)というのです。

翅わつててんたう虫の飛びいづる

この句には、飛翔直前のてんとう虫の姿が描写されています。
 

ひつばれる糸まつすぐや甲虫

甲(かぶと)虫は、糸をつけ逃げられないようにつながれています。甲虫は、逃げようとします。そのたび糸は切れんばかりに一線となります。この一線が持つ緊張が伝わってきます。平易な言葉を用いながら、一つの極みが描かれています。

俳句

螳螂生

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