特集
「小さな家から」という発想。長期優良住宅・その一
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長期優良住宅の背景 1

表1 不適格な既存住宅

ここまで国交省が仕掛けてきたのは、そこにどういう理由・背景があるのでしょうか?
阪神淡路大震災の経験が大きいと思います。あの地震は、大都市直下を震源とする日本で初めての大地震でした。死者は6,433名を数え、全半壊した建物は約25万棟で、約46万世帯が追い出されました。この死者の80%相当、約5000人は木造家屋の下敷きで即死しました。もし、老朽木造建造家屋がなければ、死者は1/10になっていたと言われています。

予想される大地震もあり、
二度とああいう目に遭わないように、と。
表1にみるように、建築基準法の大改正がなされたのは1981年で、これ以前に建てられた住宅は46%残されています。阪神淡路大震災後の2000年に、この地震を踏まえて、建築基準法の改正が行われますが、それ以前に建てられた住宅は94%残されています。この2000年に住宅品質確保法(正式名称 住宅の品質確保の促進等に関する法律)が施行され、住宅性能に関する表示基準と、それに基づく評価制度がスタートしますが、工務店の現場では、性能評価は根を下さなかったというのが現実で、今回の普及促進法で、ようやく本格的に取り組まれることになったと見ていいと思います。

でも、新築だけなので、
問題が残る94%の住宅は残されたままですよね。
確かに、直ちに不適格な既存住宅が解決されるわけではありません。今回の認定基準も、新築住宅が対象で、そこは最大の課題になっています。ただ、今回の施行により、建物を性能評価することが普通のことになり、それが家族の安全と財産の保全上、欠かすことが出来ないことになれば、当然そちらにも目が向きます。これはもう、時間との闘いですね。いかに早くその流れを生むかという。
長期優良住宅の背景 2

表2 二酸化炭素の濃度と量の推移

時間との闘いですか。
長期優良住宅の背景は、まずあの大地震が大きな背景にあることと、もう一つ大きいのは地球環境問題ですね。このグラフは「びお」で何回か取り上げていますが、過去、200年の間に、人類はこんな事態を招いてしまいました。このままこれを続けると、地球環境が危機に陥るのは、だれの目にもハッキリしてきています。

この曲線は、破局に向かって上昇を続けていますものね。
住宅に即していうと、建築に要する生産エネルギーは莫大なものがあります。日本の住宅寿命は30年で、壊しては建てるスクラップ・アンド・ビルドと言われています。これを少なくとも90年にすれば3倍寿命が伸び、120年持つようにすれば4倍の寿命になり、その分、生産エネルギーを縮小できます。長期優良住宅が、ストック型の住宅といわれるユエンです。
さらにいえば、建物の寿命が伸びれば、建築解体ゴミが減ります。現在、その処理に莫大なエネルギーを必要としているので、これも大きいですね。

建物そのもののエネルギー消費も重要ですよね。
長期優良住宅は、断熱・気密に関して、次世代省エネ基準をクリアする省エネルギー等級4を基本としています。建物の熱負荷を減らすことも重要点の一つです。それは同時に、夏涼しくて冬暖かい住宅にする条件でもありますし・・・。
長期優良住宅の背景 3
――すでに起こっているネガティブ・エクイティ

今、アメリカでネガティブ・エクイティが言われていますね。
住宅を売却してもローンを完済できない人ですね。全米で住宅ローンを借りている人の5分の1、830万人がこれに陥っているといわれます。それは、日本で明日起こることだといわれています。
日本の木造住宅の不動産価値は、建築後10年目から目減りし、20年で資産価値ゼロです。業者や売主は、まだ建物に市場価値が残っていても、建物価格を計上しないで、「現状有姿のまま」の特約をつけ、建物価格をゼロと評価してきました。
これをカバーしていたのが土地価格の上昇でした。その土地価格が下落を続けていますので、事実問題として、ネガティブ・エクイティはすでに起こっています。それに日本人が気づかないのは、家は一生住み続けるものとして建てるからです。日本の中古住宅は13%しか動いていません。アメリカは80%、イギリスは90%も動いています。

「ハウジング・プア」なんてイヤな言葉も使われていますしね。
日本は、もともと「居住福祉」という概念が薄弱ですからね。段ボールの住まいでも住めば都というわけで、放っておいても凍死することはまずない、という温暖な気候がそういう条件を生んでいるのかも知れません。
これは戦後復興の歴史にもつながっていて、日本とドイツは、第二次大戦で同じように負けましたが、ドイツは「すべてを住宅復興へ」というスローガンを掲げ、100年ローンを政策化して住宅建設を促しました。そのときの金利は0%でした。戦後の一時期とはいえ、そういう政策を実行し得たのは「居住福祉」という概念があったからです。日本は鉄と石炭による傾斜生産といわれる戦後復興の道をたどりました。

日本は、自分で何とかせいという、持ち家政策ですものね。でも、今回ばかりは、住宅ローンの制度も大きく変わりそうですね。
50年の長期ローンが誕生します。住宅支援機構が打ちだした内容は、80歳までに完済するか、二代にわたって支払うかといった条件がつけられていて、他人へのローンの承継について、まだ熟したものになっているとは言えませんが、民間金融機関が参入することで、いろいろな方式が出てくるものと期待されます。

モーゲージローンへの移行ということも言われていますね。
これまで日本の住宅ローンは、クレジットローン(個人への信用貸し)と、モーゲージローン(抵当権付担保ローン)の混合タイプでした。これを真の意味でモーゲージローン一本にしないと長期ローンや、ローンの承継は成り立ちません。
リフォームは、現在クレジットローンなので、ローンの借入額が限られていました。金融・保険・保証機関が、建物を評価できないので貸し出せないのです。

そこで建物の性能評価制度がモノをいうと?
そうです。建物の性能評価制度が機能すると、20年を経たものは評価ゼロだったものが、評価可能になります。客観的な評価方法が確立すれば、既存住宅の改修にも適用され、ローンがつけられるようになります。劇的な変化を呼び、それは住宅の中古市場の活性化も呼び込みます。





2009/5/28(木)14:29
かずさん
コメントありがとうございます。
これまで住宅の性能表示は、制度こそあれ実際には導入が進んでいませんでした。
今回の政策で再度クローズアップされる形となりましたが、仰る通り、必ずしも性能の高さ=設計のよさ、にはなりません。次回の特集、お楽しみに!
2009/5/27(水)21:32
長期優良住宅の助成策は破格ですね。国交省の本気度が伝わってきますが、性能の高さが、果たして設計の良さにつながるのか、次回更新の特集に期待します。