興味津々

興味津々・No.059

2009年05月05日 火曜日
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1996年7月に、イギリスで「ドリー」と名付けられたクローン羊が誕生した。「ドリー」の写真は、クローンという言葉と共に、新聞や雑誌などに大きく取り上げられ、世界中を駆け巡った。1998年には、日本で2頭の体細胞クローン牛が誕生し、これも世界中の話題にのぼった。その後、国内の研究所や大学など42機関で557頭が生まれ、82頭が生存している▼体細胞クローン牛は、「夢の技術」といわれながら、実用化が遅れている。それは、誕生時とその直後に死亡する率が、従来的な繁殖技術では6.5%であるのにたいして、31%と高いからである。▼体細胞クローン技術は、雌牛から採取した卵子の核を除き、そこに別の牛の筋肉から採取した体細胞の核を移植し、電気的刺激を与えて融合させ胚(はい/再構築胚)を作り、これを培養して同じ遺伝形質の牛を大量に生み出す技術である▼この体細胞クローン技術で生まれた牛や豚について、内閣府食品安全委員会の専門家作業部会が「通常の牛や豚と同様に安全だ」とする報告書をまとめた。報告書は、死亡する頻度が高いのは体細胞でつくられた胚(はい)の完成度などによるものとし、「生後六カ月を超えれば、通常の牛と同様に健全に育つ」と結論づけている。しかし、実態は先にみたように生存率が低い▼この生存率の低さは、再構築胚において「全能性」の獲得に問題があるからと考えられている。ここにいう「全能性」とは、精子と卵子からできる受精卵が、細胞分裂を繰り返すことにより、目、皮ふ、内臓など、体の組織ができる能力をいう。この「全能性」が得られるには、細胞の中の核にある遺伝子に、正しい順番でスイッチがはいらなければならない。体細胞クローンの誕生後の生存率が悪いのは、この順番の狂いが多いからである▼ということは、生き残った牛の安全性はどうなのか、ということになる。内閣府食品安全委員会の説明では、十分ではないとの指摘が出るのは当然のことで、クローン牛については、倫理的側面についても厳しい目があり、それだけに安全性評価について慎重さが望まれる▼クローン牛は生産コストが高いので、現況、主に良い遺伝子を持つ種牛のための技術と考えられている。食卓に上るのはずっと先になるので、直ちに「食の安全性」には直結しないが、拙速的に「安全」といって欲しくないと思う。

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