特集

立てば芍薬、花づくりの現場から。

2009年04月30日 木曜日

syakuyakutop

朝の収穫

朝5時。芍薬の収穫は日の出とともに始まります。初夏とはいえ早朝の空気は冷たく、芍薬のつぼみや葉は夜露に濡れています。空の高いところでヒバリのさえずりが聞こえます。はじめは辛い早起きも、しだいに体が慣れるとすがすがしく気持ちのよいものです。芍薬の朝の収穫は、毎年4月の末から5月の半ばまで毎日続きます。

朝6時頃の光。

朝6時頃の光。

収穫は8時頃まで。朝の光が強いと、色がみずらい

収穫は8時頃まで。朝の光が強いと、色がみずらい

芍薬は「草」

芍薬の花は牡丹(ボタン)に良く似ていますが、牡丹が「樹」に対して、芍薬は「草」という大きな違いがあります。芍薬は地中の株から茎を出して花を咲かせます。地上部分は秋には枯れ、冬は地中に眠り、春にふたたび株から赤い芽を出します。「立てば芍薬、座れば牡丹・・」という美しい女性をたとえた旧い言葉にあるように、芍薬はまっすぐ伸びた茎の長さ、その上のあでやかな花が特徴的です。中国の北東部などが原産地といわれています。


羽衣(はごろも)相模白(さがみしろ)

左写真 羽衣(はごろも) / 右写真 相模白(さがみしろ)


皐月(さつき)賜金(しきん)

左写真 皐月(さつき) / 右写真 賜金(しきん)


湘南(しょうなん)

湘南(しょうなん)

街の花屋さんの芍薬

出荷前、茣蓙につつんだ芍薬

出荷前、茣蓙につつんだ芍薬

街の花屋さんの店先に並ぶ、さまざまな花をみると、きれいに咲いた花が目立ってつぼみは少し、というのがふつうです。でも、芍薬だけは、すべてつぼみの状態で店に並びます。芍薬は満開の状態だけでなく、つぼみが徐々に緩んで花弁が開いていく過程も美しく、その変化に楽しみがあるためです。だからちょっと華やかな花屋さんの店先にあって、つぼみのままの芍薬はおとなしい印象を受けるかもしれません。

芍薬花瓶 芍薬004

咲く気分、になっている?

というわけで、芍薬の収穫はまだ固く閉じたつぼみの状態で収穫します。でも、切る時期が早すぎると、活けても大きく咲かない、ひどいとつぼみが開かない花になってしまいます。私たちはそれを「咲く気分になっていない」といいます。ときどき、芍薬を咲かすのは難しい、咲かなかったという声を聞きます。それは生産者がつぼみの状態で出荷しようとするあまり、早く切りすぎたため、その芍薬はおそらく、「咲く気分」ではなかったのでしょう。

まだ咲く気分じゃない咲く気分

左写真 まだ咲く気分じゃない / 右写真 咲く気分

つぼみを観察する

花の色と形を見て根元から切る

花の色と形を見て根元から切る

その花に「咲く気分」があるかないか、朝の収穫の際、観察することが大切です。つぼみの外側の花弁うっすら色づきはじめ、その花の持つ本来の色が鮮やかに出ているか。硬かったつぼみがほんのりふくらみ“動く気配がある”。それが切り時です。そのタイミングを逸するとつぼみが膨らみすぎてしまい、売り物にはなりません。早朝のやわらかな光は、そんな芍薬のつぼみの色を観察するのにちょうどよいのです。

芍薬に見る欧米と日本の価値観の違い

芍薬とひとくちに言ってもその種類は多様で、色は赤、紫、ピンク、白、黄色……。赤は赤でも濃い色、薄い色、白色が差し込まれたものなど。花弁の形も一重のシンプルなものから八重の華やかなものまであり、大きさもこぶし大から20センチ。高さも30センチから1mを超すものも。これらは品種改良によって生まれた成果。日本や中国の芍薬が外国(オランダやアメリカなど)で品種改良されたもの(洋芍という)は、はっきりとした色あいや、花ぶりも豪華で日本の芍薬とは違った趣があります。花に対する価値観の違いがあらわれて面白いです。

左写真 ポーラフェイ / 右写真 芍薬

左写真 ポーラフェイ / 右写真

露地栽培の宿命

今年は暖冬の影響か、例年より1週間も早く、4月16日に収穫が始まりました。これは異例の早さです。先に、芍薬の収穫時期は「4月末から5月半ば」と書きましたが、これは年々早くなっての結果。ほんの10年ほど前までは、5月に入ってようやく収穫が始まり、6月になって切る年もありました。冬に霜が降りない、つららが出来ない、真夏日が30日も続く・・・短い期間に環境が大きく変化しているのは植物でも同じこと。畑でどんどん膨らむ芍薬のつぼみにとまどいながら追われるように収穫、出荷を行っています。温室栽培でない、太陽のめぐみと冬の寒さで育つ露地栽培の芍薬は、こうした気候の変動の影響を受けています。

左写真 出荷作業。茎の長短で選別します。つぼみが開いてしまった花は家で楽しみます。

左写真 出荷作業。茎の長短で選別します。
右写真 つぼみが開いてしまった花は家で楽しみます。

芍薬

芍薬006 芍薬005

文・大谷光紀・大谷芍薬園 

大谷芍薬園

湘南・茅ヶ崎海岸にほど近い寒川町で、戦前より芍薬を露地栽培しています。
神奈川県高座郡寒川町田端 874
TEL.FAX 0467-75-0724

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  1. トラックバック from:ONE DAY

    2009/5/12(火)16:33

    大谷芍薬園の芍薬

    昨年も注文しようと思ったけれど、しそこねていた「大谷芍薬園」の芍薬。楚々とした花も好きだ
    けど、本格派の美人という感じの芍薬もだーい好きなんです。清朝のお姫様を家に招い…

  2. トラックバック from:aki's STOCKTAKING

    2009/5/1(金)21:32

    芍薬(しゃくやく)

    link 「立てばシャクヤク、座ればボタン、歩く姿は………….」という歌は知っているが、芍薬(しゃくやく)なる花がどのようなものなのか………なのだ。 「住む。」の編集にたずさわって…

  3. 副編サヅカさんからのコメント

    2009/5/13(水)15:10

    ヤマちゃんさん

    コメントありがとうございます。
    小さなつぼみからは想像出来ない大きさに開く花ですよ。
    恋文の効果は…なんともいえませんが。

  4. ヤマちゃんさんからのコメント

    2009/4/30(木)14:25

    シャクヤクって、こんなに華やかな花だったんだ。知っているようで知らなかった花です。しかも、季節ものなんですね。まさに、旬ですね。
    「あなたはこの花のような女性です」と書いて送ると、反応が違うかも知れません。

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