興味津々

興味津々・No.055

2009年04月17日 金曜日
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方丈記私記堀田善衛の『方丈記私記』を読んだ。この本は、冒頭に堀田が「私が以下に語ろうとしていることは、実を言えば、われわれの古典の一つである鴨長明『方丈記』の鑑賞でも、また、解釈、でもない。それは、私の、経験なのだ」と記しているように、まさに「私記」である。堀田は自身の空襲体験の折、「ふと頭に飛び込んできた方丈記の一節」を思い出し、都市に起こる大火災の「精確にして徹底的な観察」の文章であることに思い当たり、この本を書いたという▼鴨長明が経験した安元3(1177)年4月28日の大火は、都の3分の1を一夜のうちに灰燼に帰した大火事だった▼鴨長明は、この現場に居合わせ、それを次のようにリポートした。「遠き家は煙にむせび、近きあたりはひたすら炎を地に吹きつけたり。空には灰を吹きたてたれば、火の光に映じて、あまねく紅なる中に、風に堪へず、吹き切られたる炎、飛ぶがごとくして、一、二町を越えつつ移りゆく。その中の人、うつし心あらんや。あるいは煙にむせびて倒れ臥し、あるいは炎にまぐれてたちまちに死ぬ。あるいは身一つ辛うじてのがるるも、資財を取りいづるに及ばず」▼実にイキイキとした文章である。鴨長明は、この大火事を28歳の時に体験し、58歳になって『方丈記』を書いた。この間、大火事は度々起き、大地震にも見舞われ、平安期の社会そのものが音を立て砂煙をまきたてて崩壊して行く過程があり、そうした災厄と、自らの草庵(方丈庵)での生活が、この本に綴られているのである▼『方丈記』の冒頭の、あまりにも有名な一節「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたる例なし」を捉えて、移り行くもののはかなさを語った随筆とされているが、この書き出しは、実は、水のことでも泡のことでもなく、「世中(よのなか)にある人と栖(すみか)、またかくのごとし」という箇所にかかっていると、堀田はいう▼つまり、「人の世の無常は「ゆく河の流れ」や「淀みに浮かぶうたかた」に托されているのではなくて、それを受けた人と家、住居に托されている」というのである。この堀田の指摘は、これまでの『方丈記』理解を根底から覆すもので、へえーそういうことだったのだ、と肺腑に落ちた▼方丈庵は、宇治の日野山に建てられた。方丈(一丈四方/3.03m四方)の大きさであることから方丈庵と名づけられた。「いま日野山の奥に跡を隠してのち、東に三尺余りの庇をさして、柴折りくぶるよすがとす。南、竹の簀子を敷き、その西に閼伽棚を作り」「東のきはに蕨のほどろを敷きて、夜の床とす。西南に竹のつり棚を構へて、黒き皮籠三合を置けり」▼小さき移動式の栖(すみか)であるけれど、長明はそこで自足と余裕の日々を過ごし、「のどけくしておそれなし」「夫(それ)、三界の只心ひとつなり」「一身をやどすに不足なし」と長明は記す▼堀田はそれを、「やどかりは小さな貝が好きだ。これは身の程を知っているからである」「広く大きな住居など願わず、あくせく走り回ったりしない」と書き、「ただしずかなるを望みとし、憂へ無きをたのしみとす」る長明を、堀田は「全人間が、一軒の家のかたちをとっていることをわけても私は面白いと思う」というのである▼「小さな家」の原理とすべき考え方がここにある。住まいは、その人の生き方そのものである。

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立春といわれても、まだ冬だよ、といわれる寒波がこの列島を襲っています。けれど、日脚を見ると一日一日伸びていて、木々を見ると芽吹いていて、なるほど立春なのだ、春は立っているのだと思います。

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