特集
もっと太陽熱を! Part3
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太陽光エネルギーと熱エネルギーを
組み合わせると、エネルギー自給住宅を生むことができる。

光発電「固定価格制」へ
さて、いよいよ本論です。
ちょっと待って。光発電について、新しい動きをまずお伝えしておきます。「びお」でも、かねて主張していた太陽光発電の「固定価格買取制度」が、日本でも導入されることになりました。2010年度から実施されます。
固定枠ではなく、固定価格制ということね。
そうです。家庭で発電したのに使い切れなかった電気を、電力会社に買い取りを義務付ける制度で、1キロワットあたり約50円の買い取り価格になるそうです。ドイツの1キロワットあたり71円に比べると、もっと高い価格でと思わないではありませんが、大進歩といってよいでしょう。
これまで日本は「固定枠制度」に留まっていて、それが自然エネルギー普及の障害になっていました。補助金を出すだけでは普及は進まないというのが、「びお」の年来の主張でした。
これまでも売買電の買い取りはありましたよね。
あるにはありましたが「固定価格制」ではありません。現況、日本の電力会社は、電気を一般家庭に売る場合と同額の1キロワットあたり23円〜25円程度で自主的に買い取っていますが、義務化されていませんでした。これを今度の制度では、現価格の2倍、それを10年間にわたって買い取りを義務付けます。
光発電設置費用の回収は早まるわね。
設置費用が、約250万円とすると、50万円が国や自治体からの補助金でまかなえるとして、15年間で約130万円が回収されました。それが新制度で買い取り価格が2倍になると、約200万円が回収され、補助金と合わせると設置費の元がとれるようになります。
その分、ほかの家庭の電力料金が上がるとか?
電力会社のコスト増加分は、太陽光発電のない家庭の電力料金に上乗せされて、一般的な家庭の電力料金で、今より数十円から100円程度上がります。
この新制度で、政府が思い描く「2020年度320万戸」は実現されるかしら?
簡単ではないけど、大きく第一歩を踏み出したのは事実です。設置意欲が、ぐんと増しますから。
空気式パッシブソーラーの現状
太陽光発電は普及が進むとして、さて太陽熱は、というところですね。
そうです。電気を起こしても送電ロスがあるので、太陽をダイレクトに利用できる太陽熱利用が実際的です。もちろん、現代生活は電気を必要としています。だけど電気でなければならないものは別にして、暖房や給湯まで電気を使うことはありません。太陽熱を利用するだけで相当までまかなえますので。
もっと太陽熱を! ですね。
ほんとうに声を大にして言いたいですね。
太陽熱利用の技術としては、空気集熱式のパッシブソーラーがあるわけですが、代表的な方式としては奥村式ソーラーが挙げられますね。
奥村昭雄(建築家/東京藝術大学名誉教授)さんが、自身の設計活動の中で生み出し、仲間の建築家たちと研究会をつくって成長、発展したシステムです。後にOMソーラーと呼ばれるようになります。わたしはそのネーミングをした張本人ですが、このシステムを奥村さんと周辺の建築家たちの全面的な協力を得て、工務店の技術として定着させました。
現在までに、どの程度の住宅が建てられているのですか?
わたしは今、OMソーラーを離れているので正確な数は分りませんが、住宅については2万棟を越えています。また、学校や幼稚園、体育館、福祉施設などにも利用され、これも500例を超えています。パッシブソーラーとしては、世界的に見ても類例のない普及で、この普及が評価されて、国際太陽エネルギー学会(ISES)から、奥村昭雄とOM研究所(当時/現自然エネルギー研究所)に対し、クリストファー・A・ウィークス賞(1995年/開催地アフリカのジンバブエ)が贈られています。
凄い実績ですね。
この実績を活かしきれていないのがツライところですが、2006年の12月に基本特許が切れて、OMソーラーだけでなく、空気集熱式ソーラーに取り組むところが幾つか登場しました。
どんなところから、どんなものが出ているのですか?
環境創機という会社が開発し、鹿児島のシンケンさんも取り組んでいる「そよ風」。もくよう連という工務店の協同組合が取り組んでいる「ソーラーれん」。それから屋根集熱ではなく壁集熱ですが、同じ原理を活かした「ソーラーベント」、これはEOMから出ています。これらの多彩な活動がいい競争を呼んで、技術とコスト面で進化を促し、空気集熱式ソーラーの大きな普及に結びつくといいですね。

図は「ソーラーれん」。屋根で集熱した空気を床下に送り、床を暖める。
日本で生まれた、世界で一番普及しているパッシブソーラーですからね。
パッシブソーラーは、奥村式ソーラーの前までは主として一部の好事家(こうずか)によって取り組まれていました。環境工学の先生とか、原発反対でグリーンエネルギーに取り組む人とか、国際会議に出ると、今でもそういう人が多いという話です。それを工務店レベル、一般のユーザーが取り組めるようになったのが、このシステムの最大の功績と言ってよいでしょう。
太陽光だけでなく、太陽熱利用に対しても補助金があってしかるべきね。実績から見ても、この分野で、日本は先進国なんですから。
いいご指摘です。一つだけの組織では補助金が出る対象になりませんが、いくつかの組織、グループが生まれていますから、協議会をつくって働きかけるべきです。そんな動きが生まれることを期待しているのですが……。。
屋根で集熱して、床下に蓄熱する
このシステムの一番いい点はどこですか?
まず屋根で集熱していることです。屋根は太陽熱を受熱するのに、面積的にも、障害物によって遮られることも少ないわけで、たいがいどこの家でも、屋根だけは太陽が降り注いでいます。
屋根は、崖やビルの陰にならなければ、お日様がにっこり微笑んでいますね。
屋根で得られる熱は、日中、60℃にも達します。
え、そんなに!
もっと高くしようと思えば高くなります。集熱温度と集熱量のバランスからいうと、45〜60℃位でよくて、集熱温度を高くすると集熱量が少なくなります。また、屋根材を傷めないためにも、あまり高くするのは考えものです。
屋根にガラスがありますが、なければいけないのですか?
ガラスなし集熱面でも温度は上がりますが、ある一定の温度に達すると、外気温との関係で、温める空気熱と出て行く空気熱が等しくなって、それ以上に上らなくなります。ガラス集熱面を設けると、空気熱の温度はぐんと上昇します。
屋根の形状は、タテ、ヨコどちらが長い方が有利ですか?
あえていえば、ヨコに長い方が有利です。ガラス面を長く設けたとしても、やはり入ってくる熱と放熱される熱は、あるところで等しくなりますから。したがって、東西に長く、集熱体になる南面の屋根面がヨコに長い方が有利といえます。しかし、それもバランスであって、コンピュータ・シミュレーションで解けば、正確な答えが出るようになっています。
次世代省エネルギー基準だと、鉄板面だけでいいといわれますが?
そういう試みも行われていますが、集熱量が多く、暖房が満ち足りていれば、冬でも給湯に回すことができます。ガラスを設けるかどうかは、好みの問題と、予算(コスト)の問題が大きいと思います。
給湯は、どうやって温めるのですか。
このシステムは、床下に空気熱を運ぶための送気用のフアンを必要としています。機械といえばそれだけですが、このフアンを内蔵した機械(ハンドリングボックス)にお湯採りコイルが設けてあって、熱い空気がそこを通るときに不凍液を温め、それを給湯タンクの熱交換器に流し、それで熱いお湯をつくります。お湯採りの性能にはシステムや地域によって違いがありますが、約30〜50℃のお湯が採れます。
車のラジエターの原理でお湯をつくるのね。
温かいお湯から温かい熱が生まれるのと同じように、温かい熱から温かいお湯を採るのです。
逆も真なりね。
次に進みます。床下に蓄熱層を設けたのは、どういうわけですか?
木の家は熱容量が低いという話は前にしましたね。二室を挟む壁に蓄熱するというやり方もあります。奥村さんは前橋の家でそれを試みていますが、その家はRC造の家でした。木の家では床下コンクリートに蓄熱するのが、どの家でもやれる方式だと考えられました。ベタ基礎をやっていた工務店は、それをそのまま活用すればいいので、なるほどと理解が得られました。
床下に換気口がありませんが、それでいいのですか?
OMソーラーが省エネルギー認定を取得したとき、建設省(当時/現国土交通省)の技官から、その点を問われました。しかし、建築基準法には換気口を設けろと記述されていません。換気上有効な措置を取れ、と記述されています。屋根から送られた空気は床下を巡ります。これほど換気のいいやり方はないわけで、それを測定した結果を提出してOKとなりました。
外の空気を温めて建物に入れているわけだから、換気にはいいですよね。
別荘などは、夏にカビが生えて大変だといわれますが、このシステムを用いるとカビが生えなくていいといわれています。換気が作用しているからです。
蓄熱は、最初からコンクリート蓄熱だったのですか?
当初、試行錯誤がありました。奥村さんが、奥村設計所員だった丸谷博男さんの家でやられたときは、集中的な蓄熱層が設けられました。石焼き芋の窯のような感じのものでした。この具合がよくなくて、床下全体のコンクリートを利用することになりました。次には、コンクリートの厚さをどの程度にすればよいかが検討されました。このあたりから、コンピュータによる解析の作業が入ってきます。
蓄熱の時間はどうなのですか?
長い時間、蓄熱させることは可能です。しかし、コストが高くなることと、太陽熱をより効果的に使うには24時間程度がいいということになりました。これもコンピュータで解析しての結果です。
コンクリート以外の蓄熱で考えられる方法は?
水ですね。ポリタンクに水を入れて、コンクリートの代わりにします。水は熱容量が大きいですから。奥村さんの事務所がこの方式でやられており、建物を改造して利用する場合に有効です。
放熱はどんなふうですか?
床吹き出し口に手を当てて、少しも暖かくないという人がいます。立下りダクトの下は暖かいけれど、吹き出し口は暖かいというほどではありません。床下の空気を誘引し、床下全体に巡らせるためと、床吹き出し口の上部に開口部が設けられていることが多いので、そこのコールド・ドラフトを防ぐため、というのが主目的です。
蓄熱と放熱の関係はどんなふうですか?
日中、外気温が高いときは、主として蓄熱に回ります。日が落ちて寒くなると、放熱されるようになります。しかし、一旦コンクリートに蓄熱された熱は、ゆっくりにしか放熱されません。この時間差というか、蓄熱と放熱の関係もコンピュータで解析されます。
快適な温熱環境とは?
床暖房といいますけど、暑いということはありませんね。
前にお話したように間接暖房であり、低温暖房です。建築家の清家清さんから聞いた話ですが、暑いと感じる暖房、冷たいと感じる冷房はよくなくて、何も感じないのが、一番いい温熱環境ということでした。春や秋の一番いい時期というのは、そんなふうだよ、と清家さんはいわれました。至極当たり前の話をされたわけですが、暖房というとカッとした暖かさ、冷房というと冷たさを期待する人が少なくありません。
それって、ほんとうは貧しいことですね。
いい温熱環境はどういう状態をいうのか、そんな教育は学校教育にありませんからね。冬なのに半袖でいたりするのが、あたかもオシャレだと思っている人がいますが、冬は冬らしく、夏は夏らしい衣服で、自分にも環境にも負荷を掛けないのがいいと思います。
空気集熱式のいいところは、冬に床全体が暖かいことですね。
部屋と部屋の温度差がなく、部屋の上下の温度差がないことが快適さの指標です。雨の日や曇りが続く日にはソーラーは働いてくれませんが、建物全体の熱は底上げされていますので、補助暖房を用いて、足りないところを足してやればいいのです。日が落ちたら障子を閉じたり、そういう気働きが家の快適さを呼ぶのがパッシブソーラーのいいところです。
アクティブな設備機器が、わたしたちの感覚を鈍らせているかもね。
人はアクティブな環境下に置かれると怠惰(パッシブ)になり、パッシブな環境下にあると積極的(アクティブ)になるというロジックを言った人がいて、なるほどと思ったことがありますが、そこらがパッシブソーラーの妙ですね。
このパッシブソーラーによって空間の質が変わるといわれますが?
とても重要な点です。この技術を報道した番組にTBS系列の『報道特集』という番組があるのですが、担当したプロデュサーが驚いたのは、厳寒期の釧路の吹き抜けがある家で、少しも寒くないということでした。このプロデュサーは、釧路のモデルハウスに5日間ほど泊まって、自ら体験した上で「これは報道するに足りる」といって放映に踏み切りました。そのあと、自宅もこのシステムを用いて建てられましたが…。
いいお話です。
吹き抜けのある家や、部屋と部屋とが連なったオープンネスな空間は、温熱環境からみて問題の多い家が多く、そうした空間を好む建築家の悩みの種でした。このシステムが、建築家の間で普及を見たのは、それに対する一つの解であったことです。そうして生み出された住宅は、広々としていて、気持ちのいい空間であったため、それが建築雑誌に掲載されて評判を高めました。
(話し手/小池一三 続く)
参考
もくよう連 http://www.mokuyoren.jp/
環境創機 http://www.kankyosouki.co.jp/
EOM http://www.sunqeom.com/
OMソーラー http://omsolar.jp/
自然エネルギー研究所 http://www.passivedesign.com/






2009/3/5(木)14:31
建築家永田昌民設計の家見学会レポート(設計手法編)
永田昌民先生の設計手法なんて 素人が述べるには はなはだ滅相もないことですが
幸い 住宅建築家としての永田先生の著書「大きな暮らしができる小さな家」や
過去の建築につい…
2009/3/5(木)14:45
空気集熱式ソーラーの先駆けであるOMソーラーの家に住んでいる
lancistaと申します。
住み始めて2年が経とうとしていますが その心地よさは何者にも代え難い
何とも言えない ぬくもりにあふれています。
家に帰って玄関を開けるとホッとし その先の玄関とOM対称環境とを仕切る
ポリカーボネートの内戸を開けると ほんわかと柔らかい暖かさに包まれ
我が家に帰って来たことを実感します。
室温は19~20℃設定にしてるので 暖かい!という実感は乏しいのですが
職場のエアコン暖房で それ以上の室温の場所から帰ってもなお
我が家が一番!と思わずにはおれないほど 空気質・温熱環境が違います。
ほんわりとしており 家中何処へ行っても寒い!と感じる場所が無いのです。
これって 結構簡単なようで難しいことだと思うのですが どうでしょう?
あと その空気集熱式暖房のおかげで 部屋を仕切らずとも良く
巨大なワンルームや吹き抜けを実現しており
また開口部も大きく取ることが出来 季節の良い時期は
屋外と一体となった暮らしを満喫しています。
という訳で 住んでよかったと思える空気集熱式ソーラー住宅の
住まい手からの声でした。