興味津々
興味津々・No.052
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春がやってきて歳時記を開いて、改めて季語が持つ豊かさを思った。たとえば「北窓開く」という季語がある。今は空調万能だけれど、部屋を閉め切っていたら春は味わえない。その窓も、南の窓ではなく北の窓というところに、この季語のおもしろさと深さがある▼南側の窓を開けると、春の陽光が注ぐものの逆光で眩しい。北の窓から外を眺めると、そこに順光が注いでいて、木々の葉に目を向けると、みずみずしく、鮮やかである▼高浜虚子に「北窓を開けて身近かき藪雀」という句があるが、藪を巣にする雀が春の陽光に包まれて、硬い頬が弛む状態がよくあらわれている▼京都などにあるよき庭は、およそ北側に配されている。春になって太陽の緯度が高くなり、北側に陽が注ぐことを考えてのことである。暮れゆく秋には、秋の庭の愉しみ方がある▼サクラは春そのものだけど、花だけがサクラではなく、さくら餅もあればさくら茶もある。歳時記をみると、さくら湯なんてのもある。湯船にサクラの花びらを浮かべると、ぷーんとサクラの花が匂うというわけで、そんなお風呂の楽しみ方は、日本以外にはおそらく世界のどこにもないだろう。サクラの花びらは、花見に出かければ手に入る。お金が掛からないおみやげになる。家にいて、花見のヒマもない主婦も、さくら湯に入って気持ちがやわらぐ▼葉桜のころ、産卵のためマダイが瀬戸内海に乗っ込んでくる。このマダイはさくら色を浴びていて、桜鯛と呼ばれる。「鰈(かれい)らは乞食魚かも桜鯛」(日野草城)。桜鯛と比べると、カレイなどは乞食同然というわけである▼桜鯛も季語になっているが、多くの歳時記では、その隣りに「魚島」という季語が載っている。外海にいた鯛が、群がって水面が盛り上がり、さながら小島のような感じを呈することをいう。鯛と比べるのは何だが、浜名湖にボラが入ってくるときは、確かに海が盛り上がって、そこに小島があるように思える▼目刺しも、春キャベツも春の季語である。春の季語に誘われて、目刺しや春キャベツを食すると、食するたのしみもあるが、健康のためにもきわめていい▼そう考えると、季語は暮らしの知恵であり、巡る季節の句読点になる。歳時記を手に入れて、旬をたのしもう。






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