興味津々
興味津々・No.050
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北野武が司会する『テレビタックル』という番組で、東京駅前の中央郵便局の建替え工事を巡って議論があった。鳩山総務相が、この工事に待ったを掛けて物議を呼んでいるのは、連日の報道で知っていることであるが、あの番組でコメントを挟む屋山太郎の乱暴な議論に唖然とした▼屋山は、中央郵便局の建物を「あんなもの」は取り壊してたくさんというのだった。今になって大騒ぎする鳩山総務相の思惑が政争にあるのはハッキリしていることであるが、一石を投じたことは事実である。それをどう考えるかということに議論は行かず、つまらぬ与太話に終始した▼屋山太郎という人は、いつも粗雑な議論をする人で、斜視に構えて事を皮肉ることをタレント業にしている人であるが、こういうコメントを、大袈裟な音響と共に幾度も流して煽るテレビ局の演出に、一体こいつら何を考えているのかと腹立たしく感じられた▼東京中央郵便局は、逓信省の吉田鉄郎によって設計され、1931年に建築された。この建物は日本のモダニズム建築の嚆矢(こうし)とされ、ブルーノ・タウトは「柱と梁によって構成された日本の木造建築を思わせる傑作だ」と絶賛している。▼当時、この界隈は辰野金吾が設計した東京駅、コンドル設計による丸ビル、日本工業倶楽部会館などのビルが建ち並び、それらの外装が赤や茶系のレンガだったのに対し、清楚な白タイルと、モノクロームな窓枠によって構成された建物は、合理的で機能的で、モダニズム建築における日本的な表現として、建築史的にも大きな意味を有している▼装飾を排した建物は、一見物足りないと感じる人がいるかも知れない。しかし、スチールで構成された窓から東京駅を眺めると得も知れない魅力があり、歴史的景観は建物相互が醸し出すものであることを人々に知らしめた。今は丸ビルの建築群が次々と消え、東京中央郵便局は最後に残された「砦」のような存在とされ、日本建築家協会をはじめ、その保存をはかるべく取り組まれていた▼今回、鳩山総務相の発言により、この建物がクローズアップされたわけだが、計画されている超高層ビルは、青みがかったガラスが目立つ建物で、その下層部に、東京中央郵便局のファサードを用いようというものである。その組み合わせは、元の建物を受け継ごうというものではなく、うわべだけの見せ掛けのもので、その空虚さは類例がないというほどのものである▼この限りにおいて、鳩山発言は評価できるものであるが、今回の番組では、その真意について民主党議員から「総理大臣になりたいためのパフォーマンスに過ぎない」との見方がだされ、共産党の出席者による骨っぽい発言を除いては、鳩山発言を揶揄し、嘲笑し、皮肉る内容に終始した▼鳩山総務相の思惑がどうであれ、そんなことは問題ではない。歴史的建築遺産をめぐる評価の問題である。文化や歴史に関わる事柄を、まともに議論することが削がれていることがより問題なのである。この番組は、この国の歴史的建造物に対するお寒い現実を示すものだったというほかない。(写真:wikipediaより)




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