興味津々
興味津々・No.047
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春は萌えいずる季節であり、小鳥たちは囀り、猫は恋のときをむかえる。いのちが声を挙げるこの季節に、人が亡くなると痛切を感じる。それも権力の手によって圧殺されたような場合においては、なおいっそう痛切である。スペインの詩人ガルシャ・ロルカはそんな一人である▼ロルカは詩人というだけでなく、『血の婚礼』や『ベルナルダ・アルバの家』など劇作家としても知られていて、この二つの戯曲は日本でも幾度か上演されている。『ベルナルダ・アルバの家』は、残酷なまでに誇り高い銘家の女主人ベルナルダと、彼女に絶対的に支配されながらも自由を飢求する娘たちの姿を通して、スペインが持つ暗黒が描かれた▼そんなふうにスペインを描かれることをフランコたちは嫌い、暗殺されたのだろう。この暗殺については、アンディ・ガルシア主演の『ロルカ・暗殺の丘』が、サスペンス映画の手法で描いていて、恐い映画だった。ロルカは、スペイン内戦の折、独裁者フランコによって、ビスナルという村で内戦のどさくさに紛れて暗殺された。38歳だった▼ロルカの生家があるグラナダ近郊のフエンテ・バケーロスを訪ねたことがある。グラナダまで来たのだからついでに、とフエンテ・バケーロスの村までタクシーで駆けつけたのだった。グラナダの街からは約14キロの距離にある。村に向かう車中から眺める風景は、赤茶けた山か、または丘の上までのオリーブ畑ばかりだった。この乾いた土地に生まれたロルカの詩が、どうしてあのような豊穣な世界を得たのか、それが不思議だった▼


たどり着いたフエンテ・バケーロス村は、白い家ばかりで、ロルカの生家も白い家だった。どの家の玄関ドアも、厚手の布で覆われていた。熱風を遮るための布である。この布の柄は一軒一軒異なっているが、空の青さと、めくるめく日射に照らされて、色鮮やかだった▼この辺りの家は、どの家も壁が厚く、極度に窓が小さい。これも夏の暑さに対応する建築の工夫である。日本の夏は高温多湿なので、通風によって涼を得るが、ここでは夏の風は熱風でしかなく、窓を閉じて熱風を防ぎ、日射が室内にとどかないように壁を厚くするのである▼スペイン・アンダルシア地方の家の内側には、きまって内壁に囲まれたパティオがある。トルドスと呼ばれる布地の天幕と、針金を格子状に組んだぶどう棚によって日射が遮られ、その下に涼を呼び込む井戸が設けられ、丸テーブルと幾つかの椅子が置かれる▼夏のフエンテ・バケーロス村はひどく暑かった。容赦なく夏の熱しが降り注いでいて、それを避けるように通りに人はおらず、町は閑散としていた。この村の人たちの避暑は、夜にパティオに寄り合い、イカの天ぷら、塩焼きにしたイワシ、エボシ貝など、幾種類ものタパ(つまみ)を口にしながら、生ビールやワインを飲み、日常のあれこれや、闘牛やサッカーのことなどを喋り合うことである▼画家のダリは、親友ロルカ急逝の報を受け、「オーレ!」と叫んだと伝えられているが、1975年にフランコが死去するまで、スペインでロルカを自由に語ることはできなかったという▼ロルカの村にいて、この天幕の下でのロルカの夏の暮らしを想像し、彼もまたパティオに寄り合って、たのしげな時間を過ごしたのではないかと思われた。






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