興味津々
興味津々・No.046
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『おくりびと』(滝田洋二郎監督)が第81回米アカデミー賞外国語映画賞を受賞した。1956年度に外国語映画賞が設けられて以来、日本作品の受賞は初めてということで、映画好きの者にとっては「快挙!」と叫びたいところである▼受賞者に贈られる黄金色のオスカー像を手にした滝田監督のスピーチもよかった。タイトルの英語名「デパーチャーズ」にかけて「手助けしてくれたみんな、ありがとう。これが私にとっての新たな『旅立ち』(デパーチャー)だ。またここに戻ってくる」と語った▼主演の本木雅弘さんは、この映画を10数年前に発意し、ここまで持ってきた。サントリー「伊右衛門」のコマーシャルだけの人ではなかったわけで、なかなかの人だと思った。この主人公は、オーケストラをリストラされたチェロ奏者で、妻とともに田舎に帰り、遺体を棺に納める「納棺師」を生業にするというストーリーもいい▼新聞報道は、納棺師の仕事について書き、映画や報道に触発されたのか、この職に就きたい若い人が増えていることを伝えていて、この話もいい。遺体を整え、旅立ちの衣装を着せて棺に納める行為の一挙手一投足の美しさは、それに接した人のこころに残っていることであるが、その職業が納棺師と呼ばれていることは、今回の映画で知ったという人が多かったのではなかろうか▼死者との行き交いということで思い出したのは、宮古島の「ホトケのお正月」だった。旧暦の一月十六日に、親戚が一堂にお墓に寄り合い、先祖をもてなす盛大な宴である。亡くなってあの世に行った死者たちも、生者と一緒になって楽しく正月を過ごすというものである。宮古島の人たちが、いかなる理由を以ってこれほどに死者を尊ぶのか、それは洗骨葬(せんこつそう)の名残りだといわれる▼洗骨葬とは、亡くなった人を土葬で葬り、数年後(三年後と、四、五年後という説があった)に掘り返し、死者のお骨を海できれいに洗って骨だけ壺に入れて、改めて新しい墓に埋葬する葬法をいう。何とも凄まじい葬法である▼土葬の骨は、土壌や土質の影響で黒っぽくなるというのである。この黒骨を洗うのは女性の役割とされた。この無類の優しさは、死者に対するよほどの思慕の情がなければ成り立つものではない。宮古島の人たちの先祖崇拝のつよさをあらわして余りある話である▼この国では三十回忌があり、亡くなって30年間は、その人をみんなで思い出すという慣習は、ほかの国にはない美習といってよいのではなかろうか▼不景気の風が吹き荒ぶなかで、人の生き死にを大事にするあり方に、つよい関心が寄せられており、それが今回の受賞の背景になっているように思われてならない。





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