特集

もっと太陽熱を! Part2

2009年02月09日 月曜日

ダイレクトに太陽熱を利用する方法

教えてでは、そろそろ本論の「住まいの太陽熱利用」に入ってください。

太陽熱発電も、塩水を真水に変える技術も、大規模であるかどうかを別にして、機械装置がウエイトを占めていますね。これらの方式をアクティブソーラーと呼ぶのに対して、建物が受熱している太陽熱を機械的なもので変換しないで利用する方法をパッシブソーラーといいます。

教えてそれは具体的に、どんなやり方ですか?

まず代表的なものを挙げてみますね。先程、おばあちゃんの縁側の話がでましたね。縁側は、冬は日だまりの場になり、夏は暑さを和らげる緩衝空間の役割を持っています。冬と夏では太陽の入射角が異なりますので、それを巧みに利用したやり方です。
このように、縁側はすばらしい知恵ですが、太陽が沈むと一気に冷え込みます。障子を立てて、部屋に冷気が入り込まない工夫がありますが、それでも昔の家は断熱・気密が悪かったので、昼間、せっかく得られた熱も夜にはすっかり放熱してしまいました。この縁側部分を、コンクリートやタイルなど、熱容量の大きな材料を用いて、そこに太陽熱を蓄熱させ、夜になったら断熱戸を立てて放熱を防ぐと、蓄熱した太陽熱は部屋の暖にまわります。

教えてダイレクトヒートゲインですね。

そうです。よく知っていますね。

教えて『住まいを予防医学する本』に出ていました。


昼間に差し込む日射を蓄え、夜は部屋の熱放射を防ぐために断熱戸を建てます。蓄熱した熱が部屋を温めてくれます。
『住まいを予防医学する本』より イラスト:鈴木充弘

最もシンプルな手法ですが、これまでの縁側と違うのは、一つは建物の断熱・気密化がはかられていることと、蓄熱があることですね。

教えて日本の住まいは、蓄熱しにくい構造体といわれますが。

そうです。木造ということが一番大きな理由ですが、木も少しは蓄熱しますが、すぐに放熱してしまいます。熱容量がないのです。石(コンクリートなど)は、蓄熱するまで時間が掛かりますが、一度蓄熱すると熱容量が大きいので、少しずつ放熱してくれます。
蓄熱体となる材料の条件は、1.熱容量が大きいこと、2.熱が伝わりやすいこと、3.表面から熱の吸収と放散がすみやかに行われること、4.これが大事なのですが、低コストであること。コンクリートやタイルなどが利用しやすいですね。

教えてほかに熱容量のいいものといえば水ですね。

そうです。湯たんぽがいい例で、熱いお湯を入れて布などで包んでおくと朝まで暖かいですよね。もっというと、太陽熱は巨大な海を受熱体とすることで、この地球環境をつくっています。温められた海から蒸発した水は雨になって地上に降り、それが野山を潤し、また海に戻って循環を繰り返すことで、我々は生命を得ています。太陽熱は、野山にも蓄熱しますが、何といっても海の熱容量がでかいわけです。

教えてまさに地球まるごと、太陽によってダイレクトヒートされているのね。

暖房方法としてのダイレクトヒートゲインに戻ると、蓄熱した熱をゆっくり部屋に放熱してやることが大事で、シンプルである分、室内温度のコントロールは難しい面があります。ダイレクトヒートゲインされた部屋だけで仕切られていると、熱はその部屋に溜まっているだけになります。それがリビングだとすると、一晩中、リビングにいるわけではないので、もったいないことになります。熱を家全体に回るようにしてやる必要があります。といっても、何か機械的なことでやるというわけではありません。空気の道を考えた設計をすべきで、吹き抜けがあったり、開放的なプランの家なら自然と熱は回ってくれます。


付設温室を設ける


せこ住研の例

教えて温室を設けるのはどうですか?

これもいいやり方ですね。原理はダイレクトゲインと似ています。違うのは、温室が集熱室になっていることですね。室内部分の間に可動間仕切を設け、また温室内の暖まった空気をファンで送風するような工夫が必要となります。それによって、ある程度の温度コントロールが可能になります。ただ、夏場の日射遮蔽が難しくて、オーバーヒートになりがちです。太陽が照っているときは、室温が急上昇し、夜間は急降下します。温室にいると、冬でも暑いぐらいですからね。夏は、近づきたくない場所になったりします。室温変動が大きいのです。

教えて観葉植物を楽しみたい人にはいいですよね。

いいと思います。また、高緯度にある北海道向きのシステムといえるかも知れません。観葉植物を栽培する場合にも、寒冷地利用の場合も、ある程度は温室内に蓄熱部位が必要となります。
室内側からいうと、付設温室があると室内の温熱環境を外界から守る緩衝空間の効果が高いですね。特に夜間の温度降下を防ぐ効果は大きいといえます。


トロンブウォール

教えてトロンブウォールは、日本では不向きといわれていますが?

日本人は南側に大きな窓を設けて、開放的に暮らしたいですからね。室内が閉鎖的になることを嫌います。でも、南側が全部窓かというと、最近は耐震壁の問題もあって、南面側の壁が増えていますので、そこを利用することができます。
このやり方は、集熱ガラス面の背後に蓄熱壁を置いて、ガラスを透過してきた太陽熱を吸収させ、壁を貫流する熱を室内側で放散させて暖房効果を挙げようという手法です。壁蓄熱システムというわけですが、トロンブというのは考案者の名前で、敬意を表して名づけられています。早稲田大学の先生だった木村健一先生のご自宅が、このトロンブウォールでした。
むずかしいのは、冬期の室温は安定的でいいとして、夏の日射遮蔽をどうするのか、その工夫がいることですね。

教えてダイレクトヒートゲインや付設温室と併用できそうですが?

いい案だと思います。付設温室との間をコンクリートブロックやレンガを置いて利用すると、インテリア的にも趣きがありますからね。でも、この場合も南側が塞がれていることに難があります。騒音に悩まされる道路に面していたり、プライバシーが侵されるような土地では、かえってそれがいい場合もありますが。
設計のポイントは、トロンブウォールの厚さ、暖房面積に対するトロンブウォール面積の割合、夏の日射遮蔽と排熱方法あたりですね。

教えて斜面を利用して行うやり方がありますね。

ロックヘッドですね。別名、サーモサイフォンとも呼ばれます。
ガラスや鉄板などの集熱面で暖めた空気を、自然対流で床下に導いて床暖房を行うシステムです。一種の土間床工法といえ、斜面や広い空地がなければやれないシステムですが、温度コントロールが比較的楽に行えます。夏場は集熱面の遮蔽が必要です。


ロックヘッド

教えてこのほかには、どんな方法がありますか。

ルーフポンドというやり方があります。屋根面に水槽をおいて、水槽に蓄熱した熱を室内に放熱するというやり方ですが、コスト面でも、工事面でも問題が大きいですね。草屋根なども、広くいうとこの手法に似ています。植物と土が遮熱・断熱・蓄熱・放熱をしてくれますからね。


ルーフポンド

図:「パッシブシステム住宅の設計」より
建設省(現・国土交通省)住宅局住宅生産課 監修
住宅・建築省エネルギー機構(現・建築環境・省エネルギー機構) 編
パッシブシステム検討委員会(委員長 奥村昭雄)執筆

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