特集

わたしの日本語あそび りりこさんの「日本語はたのしい」

2009年01月30日 金曜日


イラスト:小野寺光子

 気がつくと、明るい時間が日一日と長くなってきました。散歩の道すがらの木々も芽をつけ、雑草が芽吹き、春の気配も感じられます。とはいえ、小寒から大寒のこの時期は一番寒い時期なのだとか。ここを過ぎればもうすぐ立春、本当の春ですね。
 きょうは、わたしが細々と続けている「日本語あそび」のご紹介をしようと思います。季節や自然、身の回りのことが主な題材です。

ことのはじまりは回文との出会い

 「日本語であそぼ」(NHK教育テレビ)という子供向け番組(気に入ってます)があるかと思えば、難読漢字を読んだりことわざや慣用句を当てたり、まるで学力テストのようなクイズ番組もあり、日本語、最近なかなか注目されているのではないでしょうか。いつも当たり前に使っているのに、背景や元の意味など知らないことが結構あって回答で初めて知ることも多いです。

 昔から、言葉を使った遊びはいろいろありました。和歌や連歌、俳句なども、文学ではあるけれど、ゲームのように競われてきましたし、学生の頃に習った万葉集の万葉仮名も、単に平仮名を使うように音を漢字に置き換えるだけでなく、さらに意味合いを込めた漢字が選ばれていて、楽しんでいる様子を感じさせます。なぞかけ、駄洒落や回文などはまさに言葉遊び。メモとペン1本あればいくらでも時間がたってしまいます。

 大好きだったコピーライター、土屋耕一さんの本に、「軽い機敏な仔猫何匹いるか」(1980年出版の本で、今は絶版です。図書館に行けばあるかもしれません)というのがあります。あまり出版されることのない回文集です。「上から読んでも下から読んでも同じ」というと、「新聞紙」「トマト」あたりはすぐに思いつきますが、単語ではなく文となるとなかなかできません。お気づきのようにタイトルがすでに回文。小さくてほっそりしたやんちゃな白猫を思い浮かべませんか?わたしも挑戦してみようと思ったのですが難しい。言葉を入れ替えたりひっくり返したりしたり、リズムを探したりしているうちに、回文から離れて言葉の波間を漂い始めてしまいます。

漂う波のその先は

「ねこ」のつく言葉はないかしら。
「こね」のつく言葉はないかしら。
そういえば、「捏ねる」という漢字はどこから来たのだろう。
どんどん脱線しているうちに、わからないこと、知りたいことがこれまたどんどん増えてしまいます。

 以前は図書館に足を運んで大きな辞書を持ち出し、あれこれとひっくり返してみたものですが、今はインターネットがあるので、辞書や辞典を引く前にまずネットで調べてみることが多くなりました。もちろん、無署名の記事や校閲を経ていないだろう記事は、資料として当てにするわけにはいかないのですが、楽しむには十分すぎるほどの情報が得られます。居ながらにしてこんなことができるとはとても便利な時代になりました。

 わたしの言葉遊びも回文を作ってみようと思ったことから始まり、いつの間にか脱線が本流になり、型のない言葉の雑学といった具合になりました。

ブログで記事にする

 調べたことや思いついたことをいつも使う手帳のすみに書いたりメモを作ったりしていたのですが、同じ言葉からほかのことを急に思いついたり、前のメモを確かめたくなり探した時に、みつけられないことが何度もありました。そのうちネットで、無料で登録できるブログサービスがあれこれ登場し、検索や分類が簡単なことから、自分の書いたものをネットに置いておくことにしました。

 新しいテーマの材料にしたり、書き加えたりするのが簡単になっただけでなく、立ち寄った方が広げてくださったり、提案をいただいたりと、面白いやり取りが続いています。

いくつか書いた記事をご紹介します

「ぽちぶくろ」

ぽちぶくろ おとしだまぶくろ
*
これっぽっち、あれっぽっち、
これっぱかり、あれっぱかり
*
ひとりぽっち、ひとりぼっち
*
ぽちぶくろというのは、関西から来たそうだ。
ご祝儀を入れる袋として、江戸時代から発達した。
確かに、帯の間にちょっと挟むのに、大きな祝儀袋は大仰だ。
ちっちゃくて、細工(版画とか?)の効いた物がうれしい。
中黒「・」のことをクロポチなどという事があるけれど、
ちびっとばっかりという意味で「ぽち」を入れる袋という意味だとか。
フランス語のプチかと思っていた。
*
そうしてみると、「これっぽっち」は関西の言葉か。
我が家では「これっぱかり残したってしょうがないじゃない」などと
「これっぱかり」が巾を利かせていたように思う。
*
ポチといえばタマ。「ぽち」ぶくろとおとし「だま」ぶくろ。
*
花咲じじいの犬は、
「この夫婦には子供が居なかったので、白という名前の飼い犬を
本当の子供のようにかわいがっていました。」(講談社学術文庫)
ということで、ポチではなかったようだ。
作詞した人の飼い犬がポチだったのかな。
やっぱり「ウラノハタケデポチガナク♪」と思ってしまう。

●調べ物をしているうちに思いついてどんどん広がってしまったいい例です。


「月」

おもいつき(思いつき)
おちつき(落ち着き)
めつき・てつき(目つき・手つき)
もちつき(餅搗き)
おまけつき(おまけ付き)
うんのつき(運の尽き)
さんしょくひるねつき(三食昼寝付き)
きつねつき(狐憑き)
からだつき(体つき)
やみつき

●月ではない「つき」を集めてみようとしたものです。


「一月」

睦月 むつき
建寅月 けんいんげつ
孟春 もうしゅん
霞初月 かすみそめづき
暮新月 くれしづき
早緑月 さみどりづき
三微月 さんびづき
太郎月 たろうづき
子日月 ねのひづき
初空月 はつそらづき
初春月 はつはるづき
初見月 はつみづき
王春 おうしゅん
開歳 かいさい
開春 かいしゅん
解凍 かいとう
嘉月 かげつ
華歳 かさい
月正 げっせい
元月 げんげつ
献歳 けんさい
献春 けんしゅん
歳始 さいし
歳首 さいしゅ
主月歳 しゅげつさい
首歳 しゅさい
上春 じょうしゅん
初月 しょげつ
初歳 しょさい
初春 しょしゅん
初陽 しょよう
始和 しわ
新春 しんしゅん
青陽 せいよう
泰月 たいげつ
大簇 たいそう
端月 たんげつ
年端月 としはづき
肇歳 ちょうさい
年初 ねんしょ
発歳 はつさい
方歳 ほうさい
芳歳 ほうさい
甫年 ほねん
昵月 むつき
陬月 むつき
孟陬 もうすう
孟陽 もうよう
履端 りたん

●ネットで出会うたびに書き溜めていきました。どこから取ったのかメモしていなかったのですが、月の呼び名を集めている人はけっこういて、楽しませていただきました。


「にゃんにゃこまい」

猫の手も借りたい
猫よりはまし
猫も杓子も
猫をかぶる
借りてきた猫

猫なで声
猫の額
猫の目のように変わる
猫かわいがり
猫ばば
猫背、猫舌、猫ッ毛
泥棒猫
猫またぎ

猫の子一匹見当たらない
猫の子一匹通さない
猫の子一匹見逃さない
猫の子一匹殺せない

虫も殺さぬ
虫の這い出る隙もない

Would like to borrow the paws of a cat(ねこのてもかりたい)
A cat’s forehead(ねこのひたい)
cats and dogs(ざんざん降りのようす)

●一番初めは招き猫を見て「猫に小判」と言ったところから始まりました。案の定脱線して、虫が混ざっています。


頭の中で眠っている

 言葉に関することは、驚くことに自分の頭の中にすでにたくさん眠っていて、掘り起こすといろんなものが出てきます。子供のころに習ったことわざや慣用句、読んできたものの中で出会った知識、誰かに聞いたこと。そしてもっと知りたいことが出てくるのです。なにかをまとめたくなるとパソコンに向かって検索してみる。調べ物に、記録にと、わたしにとってはインターネットが日本語遊びの遊園地です。

 あなたも日本語で遊んでみませんか。まずは身近な「手」や「足」、「季節のモチーフ」からでも。きっとあなたの中にも自分でも忘れていたような日本語がたくさん眠っていることでしょう。

おまけ

最後にいくつか、この遊びのための、お気に入りの道具をご紹介したいと思います。

《インターネットサイト》
google http://www.google.co.jp/
yahoo http://www.yahoo.co.jp/
goo辞書 http://dictionary.goo.ne.jp/
Wikipedia http://ja.wikipedia.org/
語源由来辞典 http://gogen-allguide.com/
こよみのページ http://koyomi8.com/

《辞書》
広辞苑
大型辞書のほかデジタル版、電子辞書のコンテンツといろいろな形で提供されています。

字統(1984年)、字訓(1987年)、字通(1996年)
白川静による漢字のなりたちに関する研究から生まれた辞書。デジタル版もあるようだ。

リーダーズ英和辞典 リーダーズプラス
翻訳家が根拠として使うことの多い英和辞典。デジタル版、電子辞書のコンテンツとしての提供もある。

英辞郎
翻訳家や研究有志が自分の訳語を登録しながら作った、実践に即したデジタル辞書。なかには「個人的な訳」もあるが、新語がたくさん載っている。

最近は電子辞書があるのでとても便利ですが、紙の辞書をめくるのも楽しいですよ。面白いサイトやお勧めの辞書があったら、ぜひわたしにも教えてください。

りりこ

「びお」特撰こだわりブログ「simple life*easy living」ブロガー。

どこへ引っ越しても書き散らしている。
パソコンの前にいる時間が長い。
絵や写真は苦手。言葉が好き。(simple pleasure 2より)

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  1. りりこさんからのコメント

    2009/2/4(水)17:02

    編集人さん
    誰にでもわかる。なのにしゃれている。
    やさしい言葉なのに月並みではない。
    すごいなぁと思って尊敬している方なんです。
    「。」で余韻を出す土屋さんの文体が好き。
    ところが、残念ながら自分ではほとんど本は持っていません。
    本当に、あの頃ちゃんと買っておけばよかった。
    わたしの住んでいる地域の図書館からなくならないように
    ときどきリクエストして読むことにしましょう。

  2. 編集人さんからのコメント

    2009/2/2(月)09:11

    わたしが住宅の仕事を始めたとき、その工務店の広告を作成することになり、どうやってアピールしたらいいのか、あれこれ本を漁り、そのとき、本屋さんで見つけた一冊土屋耕一さんの本でした。新書本でした。むずかしてことを、こんなにやさしく解いて、書ける人がいるのだと感心した記憶があります。

  3. りりこさんからのコメント

    2009/2/1(日)18:23

    さわさん、うれしいコメントをいただき、ありがとうございます。
    本格的な言葉遊びは、土屋耕一さんの本に詳しいです。
    書店ではもうなかなかみかけませんが
    もし興味がおありでしたら図書館で探すと
    見つかることと思います。

  4. さわさんからのコメント

    2009/1/31(土)10:34

    日本語のおもしろさを改めて感じました。自分でも、あそべるような気がします。ありがとうございました。

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