設計のみつくろい

下屋庇(谷口利隆・谷口紀百)

2008年12月12日 金曜日

下屋庇(げやびさし)

谷口利隆・谷口紀百(谷口工務店/宮崎県宮崎市)

昔からある下屋庇

昔からある下屋庇

『下屋庇』(げやびさし)というものが、いつの時代からつくられるようになったのかはわかりませんが、古い民家や町家には、必ずといってよいほどこの下屋庇がついています。その形が美しい町並みをつくり、美しい民家の形をつくりだしています。これは日本の気候・風土や、生活の必要性から自然に生まれたものではないでしょうか。

この下屋庇は、雨・風を凌ぐためだけでなく、家の風格や装いという点でも大切な役割を担っています。さらに日差しを遮り、室内に風を呼び込むといった機能も備え、また生活の必要性からいえば、庇の下に物を干したり、保存食を蓄えたりと、いろんな用途に利用されています。

土地や場所によって、あるいは地方によって、その形態は様々ですが、 大きく分けると2つの形態に分けられるのではないでしょうか。

下屋庇の形態(平入り・妻入り)

平入りにつく場合

平入建物の桁行き方向につく場合で昔の町家型では、軒を連ねる商店街に、下屋庇はよくみられます。雨・風を凌いで客を招き入れ、また、それが連なることで、美しい町並みをつくりだしています。時にはバンコ(濡れ縁)を出して、コミュニケーションの場にもなっています。さらに、看板を下げたりのれんを下げたりと、装いとしての役割にも一役かっています。

これが民家型につく場合には、雨・風を凌ぐのはもちろんですが、日差しを遮り風を呼び込むなど、室内の住環境にも重要な役目を果たします。また生活の必要性からは、洗濯物を干したり、保存食を蓄えたりと、これまた重要な役割を果たしています。最近では、庇の下部にデッキをつくり、室内から屋外につながる居心地の良い空間をつくりだしてくれます。

妻入りにつく場合

建物の梁間方向につく場合で町家型の場合、その役割は平入りにつく場合と同じですが、建物の装いという点で、少し象徴的になっています。
民家型につく場合は、よく玄関のアプローチ部分に取り付けられ、雨・風を避けて家に入れるようになっています。また来客を招き入れる際のしつらえの場としても利用されています。

下屋庇の設計に思うこと


住宅を設計するとき、 弊社ではよく、この『下屋庇』というものを取り入れています。私どもが住む宮崎は、雨が多く湿度も高い、特に夏場は日差しが強いところです。そうした気候風土の中、この下屋庇は、結構役に立っています。

この下屋庇を家のどの部分に設けるのかはケースバイケースですが、南に面した居間の前に設けたり、玄関のアプローチ部分に、あるいは北側の寝室・和室の前に設けたりします。出巾は1.5m~2m程度です。日差しを遮るという意味で、家本体の屋根(軒の出)を長くするという方法もありますが、これには限界があります。
また、玄関の前に設ける場合は、雨除けのためだけに庇を出すのではなく、きちっとした形での下屋庇をつくります。それは玄関のしつらえという意味でも重要だと考えているからです。客を招く場合のおもてなしの心を演出する場でもありますから・・・。

下屋庇を設計するときに考慮する点は、庇の出、部材の大きさ、本体の屋根との関係(施工上の問題も含めて)、台風対策、屋根の素材など。最も気を使うところは、断面計画です。

この『下屋庇』は ここ宮崎の地における家づくりの「ひとつの手法」かもしれません。雨の多い季節には、本当に重宝されています。

(有)谷口工務店(宮崎県宮崎市)

1984年3月設立。国内有数の杉の産地である宮崎にあって、地元の杉を構造材・板材にと積極的に使用。環境や健康への負荷が少ないこと、耐久性、自然成長資源であることを大切に、宮崎の気候風土に、住む人のライフスタイルにあった家づくりを提案する。20年以上前に家を建てたという施主からも仕事を依頼されるなど、宮崎の地に確実に根を張り続ける町の工務店である。

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  1. taniguchiさんからのコメント

    2009/4/15(水)12:12

    九州男児さん、地味な下屋庇にコメントありがとうございます。
    屋根との関係、軒の高さなどが断面計画のうえで重要だと考えいます。
    耐震強度、デザインは予定しておられる設計者や工務店に
    相談していただくとよいと思います。

  2. 九州男児さんからのコメント

    2009/4/12(日)00:14

    はじめまして。素晴らしい下屋庇ですね。
    新築予定ですが、我が家でも玄関にはこのような風格のある
    下屋庇を付けたいと思います。

    記事にあります下屋庇の設計で最も考慮する点として、
    断面計画を挙げておりますが断面計画とはどういう意味でしょうか?

    下屋庇の施工画像を拝見しますと、
    柱が二本で母屋の構造躯体に寄りかかっているように見えるのが大半です。
    基本デザインはそのままで、母屋と分離された独立した形での
    四本柱の下屋庇というのは可能でしょうか?

    我が家は切妻屋根の総二階(長方形の箱型)をイメージしており、
    耐震強度を出す為に四面の外壁に寄りかかるようなものは
    なるべく作りたくありません。
    従って、上記のような下屋庇をイメージしていますが、
    何分シロウトなもので可能かどうかが分かりません。

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