特集
小さな家と二世帯住宅
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二世帯住宅の歴史を振り返る
日本の家族制度は、農山魚村部では同居が基本でした。それは生産を家族に依っていたからです。ヨーロッパでは、独立自営農民の出現があって、早くから核家族化が進行しましたが、日本は家族制に頼った農漁業を、つい数十年前まで続けてきました。
封建遺制の残滓が、ついこの間まで現実に巾を利かせていました。近代市民社会のあり方からすると、それは家父長的な多世帯住宅が持つ問題性であって、つい立一つを隔てて、老夫婦と若夫婦が寝所を共にすることもあり、プライバシーの尊重という点で問題を残すものでした。
1960〜70年代の高度経済成長の結果、農村から都市への人口移動が生じて、核家族化が進行しました。ヨーロッパでは約100年間掛けて変化した人口移動が、わずか10年余りのうちに急激に生じたのが、高度経済成長期の日本でした。都市に流入した人たちは、やがて結婚し、住宅を求めるようになります。
新しい住宅取得者は土地購入を必要とし、このため都市と、その近郊の土地価格は急激に上昇しました。狭い土地に小さな家を建てざるを得ないことから、その住宅は、ヨーロッパ諸国から「ウサギ小屋」と揶揄されました。
しかし、70年代後半から持家の取得難、共働き家族の増加を受けて、親と子と孫が同じ屋根の下で暮らしを育む親子同居がクローズアップされるようになりました。
この変化をいち早く読み取り、「商品化住宅」に取り入れたのは、ハウスメーカーのヘーベルハウス(旭化成ホームズ)でした。これを追うようにして、他のハウスメーカーが参入し、工務店も二世帯住宅をいうようになりました。
ヘーベルハウスが二世帯住宅研究所を設立したのは1980年でした。当時、ヘーベルハウスが明らかにした二世帯住宅はつよい説得力を持っていました。ヘーベルハウスは、
「女性が主体となる家事では、息子夫婦同居と娘夫婦同居で大きな違いがでてきます。買い物、洗濯、炊事、掃除、ゴミ出しなどの家事をはっきり分けている家庭は、息子夫婦同居に多くみられ、娘夫婦同居の方は比較的協力して行っている」
と指摘しました。
そして、
「息子夫婦同居の場合、子世帯奥さまと親世帯親さまでは、料理はもちろん、洗濯物の干し方やたたみ方も違います。この違いから気まずい思いをすることもあるためか、できるだけ家事は頼まない傾向が強くなっています。 両世帯の家事空間には、この息子夫婦同居と娘夫婦同居との違いに配慮する必要」
を説きました。
彼らは、家事空間のつくり方、日常の家事協力の関係を整理し、息子夫婦同居において、嫁さんに肩身の狭い思いをさせないため「オモテ融合・家事分離」を提案しました。また、娘夫婦同居においては、行事や地域社会との交流面で親世帯主導型になりやすく、子世帯ご主人の独立性をどう尊重するかを問題とし「オモテ分離・家事融合」のプランを提案しました。
ヘーベハウスの先駆性は、この「息子夫婦同居と娘夫婦同居との違い」を、このように具体的な住まいのプランに落とし込んだことにありました。
二世帯住宅研究所が明らかにした、二世帯住宅の「メリット」「7つの原則」「8つの工夫」は次のようなものでした。
親子同居のメリット
- ■建築資金( 同居なら経済的に有利になる)
- ■万一の病気( 親と子が助け合える)
- ■心の充足( 精神的な充足感がある)
- ■昔からの知恵( 知恵と文化を伝承できる)
親子同居 7つの原則
- 1.選択の原則
- 2.相互尊重の原則
- 3.自立の原則
- 4.家族間ルール確立の原則
- 5.家族協力の原則
- 6.扶養分担の原則
- 7.社会連帯の原則
親子同居8つの工夫
- 1.世帯間の独立性を尊重します
- 2.互いに相手の文化を認めます
- 3.客が来やすい環境をつくります
- 4.キーパーソンは両世帯の潤滑油になります
- 5.経費の分担は明確にします
- 6.孫の教育は子世帯の責任とします
- 7.行事には積極的に参加します
- 8.親族とのつきあいに配慮します
これらの内容は、よく整理されていて、今でも二世帯住宅の基本になるものです。
さらにヘーベルハウスは、二世帯住宅のプランニングにおいて、「独立二世帯」「共用二世帯」「融合二世帯」の3タイプに分かれると提案しました。
- 独立二世帯 生活空間を完全に分け、二世帯が独立して暮らす二世帯住宅。
- 共用二世帯 二世帯が独立しながら玄関や浴室などを共用する二世帯住宅。
- 融合二世帯 多くの生活空間を共用しながら夫々が自立して暮らす二世帯住宅。
※この三つのプランのタイプについては、下記の整理法もあります。
- 1.玄関・浴室・キッチンを共同で使うタイプ
- 2.二世帯が縦割りにして使うタイプ
- 3.二世帯を横割りにして使うタイプ。1Fは年寄り夫婦が、2Fは息子(娘)夫婦が使い、2F部分には外階段をつける。
それぞれの行き来の関係を、「玄関は独立、玄関は共用」「内部での行き来も可能、内部通路なし内部通路あり」というふうに整理し、浴室については「各世帯に独立した浴室 浴室を共用、別にシャワー室を設置、洗面所・洗濯機は世帯別」、キッチンについては「各世帯に独立したキッチン、キッチンは共用、別にサブキッチンを設ける」、夕食のスタイルについては「夕食独立、夕食融合」というように整理しました。

共有部分イメージ
詳しく知りたい人は、ヘーベルハウスの二世帯住宅研究所[http://www.asahi-kasei.co.jp/hebel/nisetai/]をご覧ください。
ヘーベルハウスが言ってきたことは、いわれてみると、至極あたりまえのことですが、住居学でいわれてきた方法をプランニングに直結させたところに、ヘーベルハウスのユニークさがありました。ほかのハウスメーカーは、このヘーベルハウスの方法に学び、コピーライティングだけを変えた「そっくりさん」で持って後追いしました。
それまでハウスメーカーは「ドーマーのある家」や「チムニーのある家」など、ヨーロッパ建築の形態を模倣しイメージ戦略を採用していましたが、二世帯住宅を切っ掛けにして「住まい方」そのものを商品化するやり方に舵を切り替えました。その意味で、ヘーベルハウスの取り組みは、日本のハウスメーカーにあってターニング・ポイントになりました。
これらのプランニングは、実際には建築家による設計や、工務店による注文住宅に例がみられましたが、この社会化を促したのはへーベルハウスの功績と言ってよいでしょう。
今、求められること
しかしながら、このヘーベルハウスのやり方も「商品化住宅」の亜種というべきもので、目先を変え、耳目を集めるという点で大きかったものの、やがて陳腐化されます。
「商品化住宅」は、今、これが売れる、これが流行ということでテーマ化しますので、あるときはエネルギー多消費型の「全館冷暖房」を言ったかと思うと、地球温暖化が問題になると、舌の根も乾かぬうちに、あたかも昔から主張してきたようにして「エコハウス」を言い出します。
今、ハウスメーカーは、二世帯住宅を取り上げていません。需要がなくなったわけではありませんので、後ろの棚には置かれているものの、今の主流はエコ、エコ、エコのオンパレードです。昨日、あれほど熱病のように言っていたのに……。この豹変を頭に入れてハウスメーカーを見ていくと、彼らの試みは、お金を掛けてやっているだけに、おおっ!というものもあったりします。何だこれは? というものが少なくありませんが……。
それはさておき、実際問題として、「親子同居七つの原則」などと、まるで家庭内憲法を制定するようにルール化を試みても、絵に描いたように行くものではありません。話し合ってルールを決めることがやれていれば、殊更、二世帯住宅などと言い出さなくてもいいわけです。差し出されたパンフレットをみて、これで行きましょうよとなったとしても、実際の生活になると簡単ではありません。その現実がどんどん出てくるようになると、これは営業上、具合が悪いことになります。だから前に出さなくなります。つまり、二世帯住宅まで陳腐化してしまうのが、要するにハウスメーカーなのです。
町の工務店は、家の中の厄介、難儀、複雑と、ずっと付き合わなくてはなりません。建てておいて知りませんとはいえません。そこがツライところでありますが、町の工務店のメンテナンスは、そういうことまで及ぶものです。それだから、町に生き続けられる工務店でいられるのです。
町の工務店は、知恵と工夫を蓄え、その家族の「微妙」を読み取り、処方箋を設計のカタチにしなければなりません。それが町の工務店の役目・役割です。
- A 二世帯住宅の現在
- B 1980年代に始まった二世帯住宅
- C これからの二世帯住宅






2008/11/18(火)11:51
「二世帯住宅」 人間の生活様式が核家族から二世帯同居 の方向にあります。
4,50年前の住まいかたがありましたが、時代は繰り返しているのかもしれません。
経済が現在のように逼迫している現状も含めて ただしい選択と思っています。
所謂、祖母 祖父が孫の面倒をみることが一つ同じ屋根でおこなわれることは、その子供にとって いかに多くの学びがあるということだと思います。
登校拒否とか言われてから、年月 経ちますが 子供の心を素直に育てる教育の場なのでしょう。
私も2世帯の設計を行ったことあり、2倍の労力を要しますが、こちらの家族の幸せをと思い、自分も夢中になってしまいます。
設計料は同じですが、そんなことより 家族の幸せが優先です。
設計の基本は、幸せを 追求することにあります。
時々 その家庭に訪問することありますが、祖父、祖母 施主 の方も 是非お茶を飲んでいってください といわれ 2時間 世間話 となります。
「本当に今も感謝しています」 と言われ 心に潤いを感じた自分せした。
2008/11/8(土)16:07
「これなら同居してもいいかなぁ~」
などと、○○ホームのCMを見た時には、そんな幻想ありえない。
と思ったものです。
どこのコピーライターが考えた言葉か、なんと無責任な売り文句。
実の母娘の場合でも、洗い物ひとつをとってみても、それぞれに流儀が違います。
口出ししないでおこうと我慢してストレスをためるか、
口出しされて、素直に聞けるか、ストレスをためるか
はたまたけんかになるか。。。
設計する立場として、この幻想ともいえる、円満な同居をいかに図っていくか。
同居を受け入れた、決意ともいえる心のあり方を尊重し、今の家族関係が、壊れることなく、同居だからこそ可能となる豊かな暮らしを生み出せるようにと、どちらかといえば、辛口のアドバイスをしながらの設計を心がけています。
お風呂が一緒がいやという気持ちもわかります。
ならば、旅館の露天風呂気分で入れるお風呂はどうか。
といえば、じゃあ誰が掃除するの?
などの、現実問題についてもしっかり話して合意の上進めなくては、一年後に、お邪魔することの出来ないお宅になってしまいます。
一組で完結できる家づくり以上に、家族それぞれの要望や、性格、関係など、メンタルな部分を感じ取りながらまとめていかなくてはいけない大作業となります。
プライバシーという言葉にまどわされ、人と人の関係、コミュニケーション、距離感を育てることに、目を向けてこなかった現在の家のあり方に行き詰まり、弊害が露呈してきた現代社会。
共に住まうことを、今一度考えなくてはならない時代になってきていると思います。
提案の「小さな家の発想で、二世帯住宅を建てるという方式」
こうしたことを、最近よく考えさせられます。
小さな家でより豊かに暮らすために外に開いていく工夫。
そして、開かれた外で生まれるコミュニティの豊かさ。
二世帯住宅に限らずとも、店舗併用住宅にしても、子供のいない世帯にしても、住み慣れた場所、培われた人間関係のなかですみ続けていくことができれば、老後を考えた場合にも、心のよりどころになるのではないかと思います。
毎回、「びお」の特集には、核心を突いた内容が取り上げられますね。
多くの方の意見が、もっともっと展開できるコーナーとなっていけばいいですね。
2008/11/8(土)07:32
収入型住宅は、ハウスメーカーなどが盛んに言っています。
今回の提案は、最初に収入型ありきの甘い話ではなく、家族のための家が、どういう時代の荒波にも、変化にも耐えられる、やわらかな対応を可能にするためのものです。
永田さんがいうように、余分なことにお金を掛けないで、何が大切なのかを基本にしながら、ちゃんと考えれば、いい結果になると思います。
2008/11/8(土)05:26
よくもまあ、ややこしく、難儀な世界に踏み込まれましたね。しかし、こういうことをきちっと考えて設計するのが王道なので、自分も考えてみようと思います。「びお」しかやれない特集です。今後も期待しています。