特集
よくわかっておきたいタマゴの話[前編]
2008年10月03日 金曜日
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レポートをまとめるにあたって
この4月から、タマゴの卸値が値上げされました。
エサとなるトウモロコシや大豆の上昇が著しく、
スーパーの目玉商品の1個1円のタマゴは、もう遠い過去。
ヨーロッパでは、2011年にケージ飼いが全面禁止になります。
エネルギーや河川の改修、住宅建材など、
ドイツで起こったことが、タマゴの分野で炸裂しています。
日本でも、来年4月に平飼いの規制が大幅に変わります。
この特集は、びお編集部、渾身のレポート。
現場に取材したり、国内外の文献に広くあたりました。
そして、分かりやすくするためにQ&Aでまとめました。
専門家からみると、間違いがあるかも知れません。
そういう場合は、遠慮なくご指摘、書き込みをお願いします。
webは、海のように、空のように広い世界を持っています。
ここを広場にして、みんなで深め合えたら幸いです。
Q タマゴにも旬があるのですか?
A はい、あります。
タマゴの旬はいつですか?春は5月ごろ。秋は10月中旬から11月中旬ごろかな。
それって、暑からず寒からず、一番過ごしやすい時期じゃないですか。そう、それがタマゴの一番おいしい時期なんです。夏になると暑いので水分を採りますね。これは人もニワトリも同じです。
ニワトリは、どの位の水を飲むのですか?夏は1日200ccぐらいの水を飲みます。
結構飲むんだ!
ニワトリだって、夏は咽が渇くんだ。夏は、タマゴを割ってみると外側から水、卵白、卵黄になる。食生活が正直に出るんだね。タマゴそのものも夏のほうが小さい。寒い時期は、自分の身体に栄養を回すので、タマゴの方にまわりません。夏ほど味が低下するわけではありませんが、一番いいのは春や秋の時期です。
分かりやすい理屈ですね。そうです。ハッキリしています。人が過ごし易い時期は、ニワトリにとっても過ごし易く、食欲も旺盛になり、おいしいタマゴを産んでくれるのです。
ニワトリは、置かれた環境の影響が大きいのね。ストレスがなく、闊達で、健康的な環境にニワトリを置いてあげることが大事です。平飼いされたニワトリと、無窓鶏舎のゲージのなかで窮屈に育てられたニワトリでは、当然、タマゴの味も異なってきます。

エサの影響は?これも人と同じで、食べ物も影響します。野菜やオウレン、ハトムギ、トチュウなどの野草を飼料にしている「自然生活」型のものもあれば、餌代を切り詰めた生活を強いられたニワトリもあります。トウモロコシ一つ取って見ても、遺伝子組み換えのものもあれば、そうでないものもあり、野草を飼料にしている場合には、農薬を使っているいないなど、あらゆることが「タマゴという結果」に影響します。ビタミン豊富な餌をやれば、タマゴもビタミン豊富なタマゴになるのです。この是非については、後で述べますが・・・。
Q 無窓鶏舎のニワトリの寿命は?
A ほぼ2年のいのちです。
今日は徹底的にニワトリとタマゴの関係についてお聞きしますが、まずニワトリの飼育方法からお聞きします。大半が”無窓鶏舎”で飼育されていると聞いていますが、”無窓鶏舎”という言葉自体、何だか切ない言葉ですね。日本のレイヤー(Layer/採卵用のニワトリ)は、ケージ飼いが主流です。ケージ(cage)とはカゴのことで、鶏が仕切られたカゴの中で飼われている状態をいいます。レイヤーの養鶏方法は、大きく三つのやり方に区分されていて、ケージ飼い・平飼い・放し飼いの三つです。
ケージ飼いのメリットは何ですか?ケージに入れることにより、鶏を土から離せることです。土と接すると雑菌や寄生虫などの影響を受け、病気に罹りやすくなります。これを防ぎ、同時に大量のニワトリを狭い場所で効率よく飼うことができます。
効率よくというのが、業者にとっては一番なんでしょうね。まあそうですね。日本では、ほとんどの養鶏場がこの方式を採用していて、ついこの前まで99%、最近は平飼いが増えましたが、それでも95%を占めています。
スーパーなどで買うタマゴのほとんどは、このケージ飼いですね。そうです。ただ、ケージ飼いにもいろいろあります。無窓鶏舎もあれば、自然換気でやられているものもあります。無窓(ウインドレス)鶏舎とは、窓(ウィンドウ)のない(レス)鶏舎をいいます。
大規模なものは、100万羽も飼われているとか?コンピュータで集中管理されていて、温度管理・光量(照明)管理・給餌(エサやり)などが全自動で行われていて、採卵(集卵)・糞の処理もベルトコンベアを利用して自動化されています。大規模な鶏舎になると、16段ものケージが重ねられ、ニワトリがひしめいています。
わたしが見学に行ったケージは、1ケージ4羽が飼われていました。ケージで飼われたニワトリと、平飼いのニワトリの違いをどう感じましたか?
ケージで飼われたニワトリは疲れて見えました。羽根が落ちていたり、とにかく忙しなくて、鶏舎全体が狂騒状態にあるようで・・・。幸せかどうかということでいえば、のんびりした環境にいるニワトリの方が、それはやっぱり幸せに感じますね。それが一般の人の素直な見方でしょうね。ケージ飼いがヨーロッパで全面禁止になる流れは、動物福祉の考えが根底にあります。そうなるとタマゴの値段は高くなります。業者は、別にニワトリを虐待したいわけではなく、そりゃあいつらをいい環境の中に置いてやりたいとは思いますよ。
消費者がケージ飼いを強いているのだと思います。タマゴを安くしろ、ニワトリを苛めるな、というのはないですよね。それを分かってくれたら苦労しません、アハハハ。
業者の方は嫌がるでしょうけど、ケージ飼いの実態を消費者が知った方がいいと思います。外部から感染源を持ち込まれるなどの問題があるので、みんなで鶏舎訪問ツアーはやれないでしょうけど。ケージの中に置かれたニワトリは、ひたすら産み続けるニワトリに改良されます。ほんとうは10年生きられるニワトリが、大体2年で「廃鶏」されます。産卵期間を過ぎたニワトリは廃棄され、「淘汰鳥」として処分業者に引き渡されます。
2年で「廃鶏」というのは、『住まいを予防医学する本』(発行/町の工務店ネット)で知りました。ショックを受けたという感想が寄せられましたが、もともと鳥はタマゴがなくなると、種の保存本能に刺激されて、また新たなタマゴを生む習性を持っています。”無窓鶏舎”で育てられるニワトリは、その習性が極限にまで引き出されます。
ヒッチコックの映画に『鳥』というのがあって、いつかニワトリに逆襲されないかと思っちゃいますね。
あれは怖い映画でしたね。ショッカー映画の『サイコ』を撮ったヒッチコックが、人間ではなく鳥、しかも鷲や鷹といった獰猛な鳥ではなく、普段接している鳥が人を襲うという映画を撮りました。人間に対する自然の逆襲を描いた映画でした。
そっち行っちゃいましたか(笑)。話を戻してください。ハイハイ(笑)。もともとニワトリが1年間に産む卵の数は、150個から180個位です。たくさんタマゴを産む鳥であるのですが、身動きできないケージの中に置かれたニワトリは300個産むことを強いられています。こうしたニワトリは、当然、免疫力は低下します。
“無窓鶏舎”のニワトリのすべてがそんなふうですか?
いや、小さな養鶏場は、開放鶏舎やセミ・ウィンドウレス鶏舎で飼われているものもあり、一律にはいえません。開放鶏舎は、ケージ飼いだけれど、より自然に近い形で飼われています。セミ・ウィンドウレス鶏舎は、ウィンドウレス鶏舎と開放鶏舎の折衷式というか、窓のない鶏舎であるけれど、ときどき外から空気や日光を取り入れて、できるかぎりニワトリにストレスを与えないように飼われています。
平飼いや放し飼いのタマゴは、高いので手が出ない現実がありますよね。自然志向が強まった最近でも、平飼いは低い水準にとどまっているのは、コスト問題が大きいからです。郊外店の目玉商品として1個1円のタマゴをやられると、とても太刀打ちできませんから・・・。
結局、価値観が変わらないと、日本では平飼いということになりませんね。ケージ飼いの問題性を、もう少し説明します。
怖いけれど聞きま〜す!
大規模な無窓鶏舎は、高効率に重点が置かれています。これは半端なものではありません。1つのケージ(かご)に4羽ものニワトリを入れて、4羽が競って餌をついばむように仕向け、狭いスペースに詰め込んで、温度も1年を通して23℃の常温をキープして、春夏秋冬ひたすらタマゴを産ませます。
窓がないのはどうしてですか?エネルギー・ロスが少なく、温度管理しやすいからです。規模が大きいと、エネルギー・コストが経費に占める割合は増大しますし、また温度が一定であれば、ニワトリ自体もエネルギーをロスしません。
大規模なケージ飼いは100万羽という話でしたね。これだけ多いと病気に罹ると大変ですね。抗生物質を投与するとか?
抗生物質を投与するのは、これまで肉用のニワトリだけといわれてきました。肉用のニワトリ(ブロイラー/broiler)は孵化後40日で出荷されます。本来10年の寿命が、わずか40日です。ニワトリが幼いということは、病気に罹りやすいわけで、このため、肉用のニワトリでは出荷後一週間前まで抗生物質漬けにします。これに対して、タマゴを産むニワトリは、半年以上飼ってからなので、原則として抗生物質は使わないものと考えられてきました。
それがタマゴ(レイヤー)用でも使われるようになったのですか?そうです。”強制換羽”のときに使われます。ニワトリはタマゴを産み始めて1年くらい経つと産卵率が低下します。そこで一旦断食させると産卵率が回復することが分かりました。しかし、断食したニワトリは体力が落ち、羽根がずっぽりと抜け落ちます。これを”強制換羽”といいます。まあこれは、見るも無惨なもので、シロウトが目にしたら卒倒するでしょうね。
卒倒ですか。ニワトリはこの結果、病気に罹りやすくなります。そこで抗生物質を投与して、病気が広がらないようにするのです。ケージ飼い鶏舎の全部でやられているわけではありませんし、良心的な業者も少なくありませんが、効率を重視する”無窓鶏舎”では、必然的・究極的にこうした流れにならざるを得ないのです。
ニワトリの断食の期間はどのくらいですか?ケージ飼いで7日〜8日、平飼いの場合は14日〜20日です。平飼いの期間が長いのは、断食中にエサを平場から拾って食べてしまうからです。
結構、長いのですね。でも、抗生物質の投与は、人体への影響が大きいですよね。大きいです。これによってタマゴ自体に、どこまで抗生物質が残留するかは、まだハッキリしていませんが、残らないわけがありません。肉(ブロイラー)の方は、出荷する一週間前に投与をやめるといいますが、それまで投与されたものが一週間で消えるのでしょうか?
お相撲の大麻のように、ドーピング検査してもらいたいですね。あらゆる食品に薬物が混入されていて、ヒトはこれからどうなるのかしら?現実に養殖ハマチや何や、薬漬けの食品は多く、タマゴについても耐生菌が人にうつる危険性を孕んでいることは否めません。『食べ物から広がる耐性菌』(日本子孫基金:小若順一/寺澤政彦/宮島英紀・著発行/三五館)という本に、”多剤耐性菌”のことが書かれていますが、新たな抗生物質を使うと、ほかの抗生物質が効かなくなる危険性が指摘されています。「耐性遺伝子を持った菌が一個いるだけで、抗生物質を投与されてもそいつだけが生き残って、普通の菌が死んでしまう分、翌日には1億個に増えてしまう」(「ニュース探偵局」http://abc1008.com/news/onair/050318.htmlでの小若順一氏の発言)といいます。
ゾッとする話ですね。文明社会が持っている底知れない怖さを感じます。大規模な工場は外から見ると近代的に見えるだけに、かえって怖い。中国の餃子事件の工場は、日本の食品工場より、はるかに近代工場でしたね。巨大な”無窓鶏舎”って「農場」って感じがしないでしょ。「工場」そのものです。タマゴだけでなく、今や牛や豚も、肉用のニワトリも「工業的畜産」の対象になっています。







2008/10/8(水)16:19
とても読み応えがありました。後編が楽しみです。
2008/10/7(火)15:46
まことさん、二つのコメントありがとうございます。文中、おうれん、はとむぎ、とちゅうが、ニワトリの餌としている例を挙げましたが、これは実際に東北の放し飼いで行われているレポートを出典としています。この三つの野草は、薬草としての栽培も行なわれていますが、東北によく自生しているもので、それを餌にしているのだと思います。ニワトリにとっておいしいものかどうか分かりませんが、たとえばおうれんは、漢方でも主薬として配剤されており、抗炎症作用や抗菌作用があるとされており、健胃、整腸、下痢止めなどのほか、結膜炎や口内炎などにも効用があるとされています。
卵を食べ過ぎるとよくないという説は、いろいろあります。栄養価が高いということは、取り過ぎによって弊害があり得るということで、過ぎたるは何事も問題があります。
まことさんご指摘の認識を、ちゃんと持って、たまごをおいしくいただきたいと思います。
2008/10/7(火)15:36
フランス人は「卵は肝臓にわるい」といって一週間に2ヶ以上食べてはいけない、と言うそうです。一例報告なのか、傾向としてあるのか、不明ですが。たしかに「卵」とか「生クリーム」とかは、異常に大量の胆汁を肝臓から分泌させるので、肝機能ケンサの時、レントゲンに写る薬品を点滴して20分ほどたつと、卵を飲まされる。認識しておくだけでよいと思うが。
2008/10/7(火)15:30
おうれん(きんぽうげ科)、はとむぎ(いね科)、とちゅう(にしきぎ科)などが、どうして野菜とならんで「野草」としてニワトリの餌になるのですか?