特集

遥かなる山の、遥かなる取り組み

2008年10月23日 木曜日

もくみの製材現場

もくみは、高千穂から日向へ向かう途中、青雲橋を少し下った日之影に事務所と製材所を置いています。たくさんの原木と製品木が置かれていて、広さは中学校全体の敷地ほどあります。

もくみ

原木消費量は年間30,000m3、製品木は15,000m3を生んでいます。乾燥機は10基あり、3t燃やせる木屑焚ボイラーが1基あります。邸別出荷がなされていて、乾燥された材はヤング率が一本一本記録に残され、データ管理されています。

もくみの現場製材現場に活気があって、若い人が働いています。それは高千穂の山にとって希望です。高千穂の山は、未植栽地は3分2に及び、放置林が目立ちます。それは山の劣化に結びつき、台風災害や集中豪雨に弱い山間を生んでいます。一方に、日本林業を根本から変えるような事象を生んでいるというのに、一方には、どうしょうもない日本の山の現実があります。それが高千穂の山の現状です。

10月22日の朝日新聞(東京版)は、「林業復活の芽吹き」を伝えています。外材急騰で国産需要が伸び、輸入が激減し、自給率が上向いたといいます。長らく20%を割っていた自給率が、07年に22.6%に、08年には24%に上がる予定だといいます。喜ばしいことですが、外材が急騰したからという理由は、いかにも実体の貧しさを示しています。これでは、外材が下がれば、また自給率は低下することにならないでしょうか。

新聞記事は、「……とはいえ担い手減少、価格は低迷」とも伝えています。「林業が産業として復活するハードルは高い。林業従事者は約4万6千人(05年国勢調査)と、30年前の約4分の1。95年からの10年では約4万人減った。65歳以上の高齢者率も95年の19%から26%に。手入れを放棄する森林所有者が増え、山の荒廃が各地で深刻化している」と書いています。

これを変えるのは、山側の努力もありますが、町側がもっとたくさん木を使うしかない、というのが「近くの山の木で家をつくる運動宣言」を書いた動機でした。一喜一憂しないで、しっかりと山と町が手を結ぶことなくして、この問題を根本的に解決する道はありません。その点で、今回の高千穂の取り組みは、大いに勇気づけられました。


『近くの山の木で家をつくる運動宣言』を書いてから、もう8年になります。各地に「近くの山の木で家をつくる運動」は根付き、地道な活動が繰り広げています。

せこ住研の材
せこ住研がストックしている木材

先日、お訪ねした三重県のせこ住研さんは、尾鷲や飯高の材を用いて家を建てておられます。せこ住研は、何と8寸材2〜3本を大黒柱とし、隅柱に6寸材を用いています。材は、すべて目が詰んだヒノキ材です。材積は一軒当り40m3を超えるということで、それは在来といわれる木造住宅の平均材積量の4倍にも達します。三澤康彦さんのMOKの家が25m3なので、いかに多いかが分かります。

せこ住研は、まあ例外的な取り組みといえるものであり、また材積が多く、太ければいいというものでもありませんが、しかし、わたしはこの工務店に、自分たちがまず木を多く使わなければ、という強い心意気を感じました。

わたしは今、この工務店のパンフレット作りを手伝っています。その表紙に「尾鷲族」とコピーしました。尾鷲の木を使っている工務店も「尾鷲族」なら、その家に住まう人も「尾鷲族」だとの思いを籠めてのコピーです。

長崎材木店は、それに捩っていうと「高千穂族」であり、そこに住まう人も「高千穂族」です。今回の旅では、高千穂の隣の諸塚村にも足を運びましたが、熊本のミズタホーム金子典生工房、宮崎の谷口工務店は、つまり「諸塚族」であり、そこに住まう人もやはり「諸塚族」です。

日本中でみんなそんなふうにやると、少しは山が動くのではないか、とわたしは思うのです。

町場の工務店は、もっとふんだんに木を用いた家を建てるべきです。そして、木をたくさん用いた家がどんなふうにいいのか、町場の建築家はデザインにして示すべきです。


追記

この文章を書き終えたとき、一通のメールを岡山で設計事務所を開いている大瀧珠乃さんから頂きました。そこに、こんなことが書かれていました。

「昨日、今日と鳥取県の智頭に杉、山、町並みを見に行ってまいりました。智頭は町全体が杉を感じられるところですね。山に登り200年生の杉を見た時に、200年の昔にこの場所に立った人、そして今ここに立つ若き林業従事者の思いが綿々として繋がっていることを感じました。そのときわたしは、日常の時間の流れの中で想像できない感覚に包まれました。

智頭では、製材業は若く生き生きした方たちに受け継がれているな、と感じました。けれども、林業従事者の方は、後継者も途絶えがちです。今まで大切に受け継いできたものを、今の単価で伐り出すことに抵抗がないわけではありません。彼らはじっと耐えているんだな、と感じました」

また、もくみの谷川由香さんからは、今週末の10月25日(土)〜26日(日)にも、長崎材木店の伐採ツアーがあるとの連絡がありました。今回は、SGEC認証の山の立木が対象になるということで、高千穂と博多を繋ぐ取り組みは、一歩一歩動いているとの実感を持ちました。

本記事関連リンク

長崎材木店
http://www.nagasakizaimokuten.co.jp/

「高千穂郷」通信[宮崎県 西臼杵支庁]
http://www.pref.miyazaki.lg.jp/contents/org/chiiki/shityoson/nishiusuki_shityo/takachihokyo/
No.44とNo.64に、関連する記事が記載されています。

高千穂ツアー[長崎材木店社長ブログ]
http://www.nagasakizaimokuten.co.jp/blog/archives/2006/11/post_207.html

 

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  1. tamaさんからのコメント

    2008/10/30(木)14:22

    山の事、木の事
    メールのタイミングが合っていたようですね。
    最近は、伐採ツアーなど、一般の方が山の木に触れる機会が増えてきていますね。
    とりあえず一度、山を訪れて、体に感じてみてほしいものです。
    厳かで、雄大で、「身・清・浸」とした森林の空気を。
    林家も今の社会で生き生きと受け継がれるためには、理想に燃える若者のエネルギーが必要なのでしょう。
    山に若い人が残れること、そこで理想を実現できること。
    一人では何もできないけれど、始めはいつも一人からだと思えば、
    勇気がわいてくる、高千穂の取り組みです。

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