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興味津々

興味津々・No.010

2008年09月02日 火曜日
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蚊取線香アメリカの民主党大統領候補にバラック・オバマが選ばれた。黒人発の大統領候補である。この候補を得たことで、この国はホイットマンの国に戻れるのだろうか。◆ホイットマンの詩といえば、『草の葉』である。飯野友幸さんの新訳によって、光文社の古典新訳文庫から発行された。タイトルは『おれにはアメリカの歌声が聴こえる』。『草の葉』の抄訳である◆ホイットマンは、いうまでもなくアメリカの19世紀の詩人である。彼が詩人として出発して間もなく南北戦争が起こり、この戦争の直後にリンカーン大統領が暗殺された。訳者によれば「そのような時代の光と影をつぶさに眺め、狂喜したり悲嘆したりしながら詩を書きつづった」という◆そして今のアメリカの元を辿れば、ホイットマンが体験した19世紀に行きつくという。タイトルにもなっている「おれにはアメリカの歌が聴こえる」は、こんな詩である◆おれにはアメリカの歌声が聴こえる いろいろな賛歌がおれには聴こえる 機械工たちの歌 誰もが自分の歌を快活で力強く響けとばかり歌っている 大工は大工の歌を歌う 板や梁の長さを測りながら 石工は石工の歌を歌う 仕事へ向かうまえも仕事を終わらせたあとも 船頭は自分の歌を歌い、甲板員は蒸気船の甲板で唄う 靴屋はベンチに坐りながら歌い 帽子屋は立ったまま歌う 木こりの歌 農夫の歌 朝仕事に向かうときも 昼休みにも、夕暮れにも 母親の、仕事をする若妻の針仕事の洗濯をする少女の心地よい歌誰もが自分たちの歌を歌っている 昼は昼の歌を歌う 夜は屈強で気のいい若者たちが大声で美しい歌を力強く歌う◆牧歌的な歌といえばいえる。けれども、南北戦争の痕跡のただ中にあって、アメリカ人の最も良質な部分を汲み出し、「大工は大工の歌を歌う」と詠んだホイットマンの、やるせないまでのアメリカへの想い、希求を、この詩に感じることができよう◆イラク戦争で、死体になって搬送されてくる数が増えれば増えるほど、かつてその若者たちが闊達に歌っていたであろう、大工や、石工や、甲板員の歌が聴こえるようだ。◆新訳は、単調なまでのリフレーンを、原詩がそうであろう力強さで綴っていて、ホイットマンの詩の魅力を、今日のものにしている。

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