設計のみつくろい
グレーチング・スロープ(中野晶子)
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白銀の世界で一工夫 [グレーチング・スロープ]
スキージャンプ台の恐怖
ノルウェーが発祥のスキージャンプ競技は、日本でもブームが起きて白馬の競技場へある夏行ってみました。
リフトで一番上まで連れて行かれると、あまりの急斜面、その恐怖感たるやとてもじゃないけど立つ事もままならない。
この季節ふるえるはずもないのに、膝が笑っている。飛んでいる姿は憧れますが、この斜面を滑り降りるのはまっぴらだと思いました。
元来は、処刑台だったというこのスキージャンプ台、「うまく着地できた人は無罪放免になった」という説明に、ふもとの記念館で大きくうなずいた次第です。
透けて見える地の底
ところでこのジャンプ台の上へ行くための階段や通路はすべてグレーチングでできていました。
雪が降り積もらず、スキー靴底裏の過酷な摩耗に耐えるのにもうってつけ。
降る雪が素通りする事に、とっても納得しましたが、視界も素通り。
ジャンプ台の上の方まで行くと、足下では遥か40メートルぐらい下の地面が透けて見えます。ぞーとします。
橋懸りのスロープ
山の家を建てるときに、凍てついても転ばない階段はあるか、はたまた、雪が降り積もらないスロープってあるかと自問自答したとき、白馬でのゾッとした思い出が蘇りました。
氷点下15度が平均気温となる八ヶ岳の標高1650メートルの冬、到着後できるだけ雪かきをせずに家の中に入るには、転んだり滑ったりしそうな危険な外階段を排除して、家にアプローチするにはどうしたらいいか?
思いついたのは、グレーチングスロープです。U字溝のフタとして汎用されているグレーチングの製品寸法を測って、それをはめこむだけのスロープを造りました。
362×998の一番細かい溝のグレーチングを横2列、縦4列はめ込み、木造で橋懸りの骨組みを作る事にしました。
雨の日は、全体が傾いているため水切れがよく、今のところ5年経過しましたが腐りは出ていません。
荷物を運ぶセカンドハウス
手摺は?設計図はあったのですが、避暑に使うにしても、スキーを楽しみにいくにしても、必ず少し大きめの手荷物を持って出入りする事になるので、やめました。
このグレーチング・スロープの幅は外〜外寸法は905。荷物をさげていくとき手摺は邪魔になるからです。
82歳の母も手摺なしで行き来しています。傾きは2.2寸。
楽しきかな、橋懸りの傾いた西洋すのこ!
斜度の認知
都内で、敷地レベルより1200ほどあげて高床式にした家でも、このスロープを使ってみました。
敷地がどこも水平のところで、急に傾きのある部分に遭遇すると、同じ傾きでもとても抵抗感があります。
人間の感知する傾きは、周囲との比較の中で認知するものなのですね。そういえば昔「びっくりハウス」なるものに入ったとき、水平だと思っている面でいつの間にかビー玉が反対方向へ転んでいくのが不思議だった。
このケースでは、施主の希望で後から手摺をつけました。さらにお孫さんができたので、グレーチングそのものを、ノンスリップのあるゴム付きのグレーチングに取り替える相談をしているところです。
1952年東京生まれ。1976年東京芸術大学美術学部建築科卒。同年~1978年亀倉雄策デザイン研究室勤務後、1980年中野晶子建築設計室を開設。1983~85年東京工業大学建築学科・茶谷研究室に勤務。2002年本庄晶子建築設計室主宰、現在に至る。2007年第七回OM地域建築賞特別賞受賞。
書著:2000年『男と女の建築家が語る/家づくりの話』(丸谷博男・中野晶子共著 工業調査会)








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