設計のみつくろい

デッキ(齋藤祐子)

2008年09月12日 金曜日
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デッキ

建築家・齊藤祐子(一級建築士事務所SITE)

デッキは屋外の活動場所

デッキ・二世帯住宅
デッキ・二世帯住宅

二世帯をつなぐ庭にもなっているデッキ。これを見てデッキの設計を依頼されたことも。

「デッキの設計をお願いしたいのですが、家はあるんです」と、設計の相談をされたことが二度あります。商店街に設計した住まいのデッキを実際に見て、お施主さんから紹介された方からの連絡でした。

十年ほど前に竣工した、デッキのある住まいは、一階にギャラリーのある二世帯住宅です。仲の良い姉妹家族が生活をしています。前の道路は人通りも多く落ち着かないので、一階は駐車スペースにして、二階に二世帯の居間をつなぎ、物干しスペースも兼ねた人工的な庭として、木造の大きなデッキをつくりました。真ん中には大きなこぶしの木が植えてあります。ビルに囲まれた一角ですが、緑と木のルーバーの手摺のデッキは、落ち着いた場所になっています。街の喧騒との間の緩衝領域です。

最初の相談は実現しませんでしたが、二件目は、木造の六畳ほどの広さの二階のデッキをつくりました。住宅地に建つ既存の住まいの二階につながる、一階駐車スペースの上に木造でつくった、高床の大きなスペースです。部屋を広く見せるとか、内部の延長ではない、新たな屋外の活動スペースとして活躍しそうです。
「月を見ながら一杯やりたい」
「テントを張って読書もしたいね」と、工事中も楽しい会話が弾みました。

デッキの増築

はじめて、大きな木のデッキをつくったのは、象設計集団設計の〈ドーモ・アラベスカ〉の増改築の設計をしたときです。内部の改装だけではなく、日本庭園の面影を残す庭は木が茂り、外に出る機会が少なくなった庭にも、手を入れたいというお話でした。思い切って庭の奥行き一杯に、幅一間半奥行き二間の木のデッキをつくりました。

それまで、外に出ることはほとんどなかったのに、人が集まると、必ずデッキに居座るグループが現れ、庭は大繁盛。盛り上がりすぎて、近所から苦情というおまけもつきました。

その後も、増改築で屋外のぬれ縁を大きなデッキに換え、室内空間と屋外のつながりを一変させることができました。内部空間のひろがりと、屋外の活動スペースをつくり出すのが、デッキの役割です。部屋の広さは変わらないのに、今までより広く感じる、増改築では変化を実感することができます。

二階のデッキ

デッキ・屋根の上に突き出たデッキ

12.5坪のSOHO。

大地から切り離された室内で感じる、行き止まりの閉塞感から開放する役割を果たすのが、二階や三階のデッキです。〈12.5坪のSOHO〉では、一階では既存の母屋とデッキでつなぎ、二階のロフトのような小さな寝室から、屋根の上に突き出した、細長いデッキが小さなスペースを屋外に開放しています。

デッキ・グループホームあおぞら

グループホームあおぞら

また、高齢者の施設〈グループホームあおぞら〉では、二階部分を回廊のようにデッキを廻らしています。三階のデッキは広々とした、屋上庭園につながります。そこは、中庭や人々の活動を眺める楽しみが加わる場所です。

デッキの素材

木は腐りやすく、耐久性はありませんが、あたたかみのある質感から、屋外の施設や、デッキ、バルコニーなどに木材が使われることが増えています。

外部のウッドデッキは、公園や広場など公共的な耐久性を重視する場所には、イペ、ウリン、パープルハートなど、比重が0.8から1.0という、緻密な耐水性と耐久性に優れた輸入材料を使います。けれど、非常に重く、硬質で粗い触感から、人のからだが直接触れる場所には不向きです。車椅子も通る〈グループホーム あおぞら〉のウッドデッキは、仕上げ、下地共イペでつくり、耐久候性を優先しています。

住まいの一部につくられる、ぬれ縁やデッキには耐水性に優れた柔らかな感触の素材として、桧、ヒバが使われてきましたが、米松など、油分の多い木も使っています。定期的な塗装や、手入れは必要ですが、日常的に屋外での活動を楽しむ場所を、柔らかな手ざわりを大切にしてつくり、傷んだ場所だけ部分的に取り替えながら十分木を使い続けることができるはずです。部分的に取り除き、新しい材料で補修するメンテナンスの方法は加工しやすい木の長所でもあります。

二世帯住宅の二階につくった、大きな木のデッキは米松と米ヒバです。共有の新しい庭は、物干し場であり、ゆっくり話す居間でもあり、緑を楽しむ場所にもなっています。五年目に傷んだ場所を部分的に取り替えるメンテナンスをしました。

屋外生活を楽しめる環境を

軽井沢

写真:北田英治

都市の生活環境はどんどん厳しくなっています。新たに建てられる高層マンションだけではなく、小さな個人の住宅でさえも、高気密高断熱の閉ざされた空間で、機械空調に頼る生活が増えています。室内環境を整えて、屋外に全ての負荷を負わせることによって、ますます環境は悪化し悪循環を断つことはできません。

室内から連続する屋外デッキでの活動を積極的に楽しむためには、土を増やし、緑を植え、屋外の環境への配慮が何よりも大切な生活姿勢になってきます。生活の場を屋外に広げることによって、広く環境を認識することができるはずです。デッキでの生活を快適に楽しめるように、何よりも住まいと街と、自然環境を考えて行きたいと考えています。

参考図書:住宅建築 2007年3月号
齊藤 祐子(さいとう ゆうこ)

1954年埼玉県さいたま市浦和生まれ。1997年早稲田大学理工学部建築学科卒業・U研究室入室。1989年空間工房101設立。1993~2000年 前橋工科大学講師(旧前橋市立工業短期大学)。1995年~早稲田大学芸術学校非常勤講師(旧早稲田大学専門学校)。2000年 一級建築士事務所 有限会社サイトへ改組、現在に至る。

著書:「吉阪隆正の方法」住まいの図書館ほか ≫本・掲載誌

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  1. 編集人さんからのコメント

    2008/9/13(土)03:36

    この「設計のみつくろい」で、デッキと手摺は、いろいろな方が書いておられます。デッキについては、正式には、玉井さんと斉藤さんですが、このお二人だけで多くが語られていますが、趙海光さんの「雨戸」の中でも触れられています。こうなったら、もっともっと多くの設計者に、競演的に参加していただいて、デッキだけで一冊の本になるようなことになるとおもしろいと思います。我と思わん方は、是非、ご参加ください。

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