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化学物質過敏症

シックハウス症候群と化学物質過敏症は、どう違うのか?
シックハウス症候群は、原因となっている住宅を離れれば症状が消えますが、化学物質過敏症(MCS=Multiple Chemical Sensitivity)は、家族全員がかかることが少ないことと、その住宅から離れても、ごく微量の化学物質に敏感に反応します。どの程度かというと、ミリグラムでもマイクログラムでもなく、それより低いナノグラム(10億分の1グラム)からピコグラム(1兆分の1グラム)という量でも鋭い反応を示すといわれます。
この化学物質過敏症に、科学的に取り組んだのはアメリカ・シカゴの開業医セロン・G・ランドルフさんでした。ランドルフ医師の患者のなかに、原因不明の頭痛などの不調を訴える女性がいました。その患者と問診を繰り返すなかで分かったことは、風向きによって症状に違いが生じることでした。
この病気を化学物質過敏症と特定し、それが認められるまでのランドルフ医師の苦労は大変なものがありましたが、現実がそれを裏付けることになり、その努力は、やがてアメリカ臨床環境医学アカデミーの設立に結びつきます。
この疾患の特徴は、大量の化学物質に一度に接したり、少しずつではあるが長期に特定の化学物質にさらされると、ある時から、からだがその化学物質に過剰に反応するようになり、さらに、発端物質ではないほかの化学物質にも反応し、虚脱状態や記憶喪失、神経障害を伴う症状が生じます。
この疾患は個人の感受性差が大きく、同一化学物質環境にいても、過敏症を発症する人と、発症しない人が生じます。また、化学物質だけでなく電磁波・低周波音などの物理的負荷、ダニやカビなどの生物学的負荷、また精神的なストレスの影響などが因子になる場合もあり、これらの総負荷の結果の一つが化学物質過敏症の発症です。
戦争兵器と農薬、 殺虫剤と
1990年の湾岸戦争後、帰還米兵に「湾岸戦争症候群」という症状が発症しました。戦争中に使用された化学物質から発症した化学物質過敏症の典型的な例とされます。
週刊『AERA』2006年9月19日号は、「子供たちの体と心、有機燐汚染が蝕む」という記事を掲載しました。この記事の冒頭、あるコメ産地に蔵に篭りきりになる子どもたちがいて、この異様な現象は有機燐農薬によるウツ病の多発によるものと報じました。記事はそれを、現代の「座敷牢」ではないかと報じています。
そしてこのような現象は、一部農村だけでなく、都市部にも生じていて、一時的な記憶喪失、ウツなどさまざまな神経・精神障害を伴っているとしています。
同誌は、この原因は有機燐化合物であることを、研究者たちの証言をもとに指摘し、その有機燐化合物は「1930〜40年代にドイツの巨大化学メーカー(旧IGファルベン)が開発した先端的殺虫剤、毒ガス物質で、サリンもその一種だ。第二次世界大戦後に戦勝国の米国が、その技術も含む文献類を没収した」と報じています。
有機燐化合物は、病害虫を駆除するための殺虫剤として世界中の農業、園芸、防疫などで広く使われています。『AERA』の「座敷牢」患者は農薬による影響とされていますが、日本の農薬の出荷量は年間約31万t(2002年)に達し、OECD(経済協力開発機構)の推計によれば、耕地面積あたりの農薬使用量は、日本が世界で一番です。
いたずらに恐怖心を煽ってはなりませんが、農薬、殺虫剤、除草剤は、公園、道路植栽、公共施設、個人の庭にも散布されています。
化学物質過敏症の症状
化学物質は、本質的には有毒なものであって、有毒でない利用法があるだけで、からだが受け入れる能力の限界、トータル・ボディーロードを超えた時、一気に症状がでます。
しかし、血液検査やパッチテストでは化学物質過敏症の患者であることを確認できません。人によって発症の有無、症状の軽重も異なり、症状を発現する値は低いレベルにあり、原因物質も体内から検出されにくい性質を持っています。
このため、微生物による感染症などと異なり、病気だということさえ他人に理解されがたく、重症に陥っているにもかかわらず、仮病や怠惰だといった謗りを受けたりします。
- 自律神経症状:発汗異常、手足の冷え、疲れやすい、めまい。
- 神経・精神症状:不眠などの睡眠障害、不安感、ウツ状態、頭痛、記憶力低下、集中力低下、意欲の低下、運動障害、四肢未端の知覚障害、関節痛、筋肉痛。
- 気道症状:のど、鼻の痛み、乾き感、気道の閉塞感、かぜをひきやすい。
- 消化器症状:下痢、時に便秘、悪心。
- 感覚器症状:目の刺激感、目の疲れ、ピントが合わない。循環器障害:心悸亢進、不整脈、胸部痛、胸壁痛。
- 免疫症状:皮膚炎、ぜん息、自己免疫疾患、皮下出血。
- 泌尿生殖器・婦人科系症状:生理不順、性器不正出血、月経免疫疾患、頻尿、排尿困難。
(『化学物質過敏症』石川哲・宮田幹夫 著 かもがわ出版 発行より)






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