設計のみつくろい
階段(村松篤)
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階段は美しく、かつ機能的に
皆さんは『階段』と聞いて何を思い浮かばれますか?
たとえば万里の長城の石段や映画「ローマの休日」に映し出される通称スペイン階段、奈良・談山神社の130階段や京都駅ビルの巨大な屋外階段、長崎・尾道に代表される坂の町で見かける石段や宝塚大劇場の大階段、はたまたどこかで見たことのある洋館のらせん階段や以前宿泊した老舗旅館の黒光りした木の階段でしょうか。
こうした記憶は案外頭の片隅に残っているもので、その多くはその場やその風景を象徴する存在であり、どちらかといえば非日常時においての出来事(視覚的な要素が強い)が多いように思われます。
では日常の暮らしにおいて、階段の存在とはどういうものなのでしょう。国内で2階建て以上の一戸建てに暮らしている人達は、毎日の昇降に階段を利用しています。
それは当然ながら、上下階移動の手段として階段を用いているに過ぎません。とにかく、移動さえ出来れば階段の目的は果たしているわけなので、とくに問題があるとは考えないのでしょう。
ただし階段での移動は毎日のことだけに、もう少し楽にそして美しくあってもいいのではないかと私は思います。
設計をする際に不満の声として、階段が狭い、滑りやすい、急な角度で昇降しにくい、手摺が握れなくて不安等といったことをよく耳にします。
階段は通路と同じで移動する場であるために、普段長く居る場(例えば食事したり、寛いだりする場)に比べ、家に対する要望の優先順位が低いのが現状です。
また、この不満が原因で大きな問題になることは少ないのかもしれません。だからといって、本当にこれでいいのでしょうか。
日本社会は、現在急速に高齢化の時代を迎えようとしています。2050年には全世帯の50%以上が65歳以上の高齢者になると予測されていて、住宅への安全対策も表向きには浸透しつつあるのかもしれません。
例えば家づくりに対する要望のひとつとして、バリアフリーという言葉が多くの建主から要望として出されます。
本来、このバリアフリーとは「障害者や高齢者等の社会生活弱者が社会生活に参加する上で生活の支障となる物理的な障害や精神的な障壁を取り除いた状態をいう」を意味するものですが、一般的な認識では床の段差を無くし、必要な場所にスロープや手摺を設けたりすることだと受けとめられているようです。
こうしたことはとても大切なことではありますが、それだけでバリアフリーだと言えるのでしょうか。
家の中で唯一といっていい垂直移動の階段について、建築基準法で定められている最低基準の寸法(足を踏む奥行きは15cm以上、1段の高さは23cm以下、階段の有効巾は75cm以上)はあるものの、これだけで安全性や機能性が満たされているとはとても思えません。
むしろこの寸法さえ守れば多少の使いにくさは二の次で、階段にスペースを割く(すなわち1段の奥行きを多くし高さを低くするとそれだけ面積が必要になる)よりも、他のスペースが広くなることのほうが快適に暮らせるとでも言いたいのかもしれません。
これから進む高齢化社会に対応するためにも、また長期間住み続けていく家をストックしていくためにも階段の在り方は軽視してはならないと思います。
そこで、私は階段そのものをあらゆる角度から捉えてみることにしました。これまで手掛けてきた住宅を通して、具体的に考えてみたいと思います。
「階段を設計する際のポイント」
1.手摺を持たなくても昇降しやすい寸法で
緩やかな角度の階段は昇降の際、体への負担が軽減され、高齢者にも優しい。
2.滑りにくい素材と仕上げ
3.視線を抜く(光や風を取り込む)
階段の蹴込み板(踏み板同士を縦に繋ぐ奥側の板)がないため、光や風を取り込むことが可能になる。
4.空間の有効利用を考える
階段正面2・3段目の蹴込み部分に引出しを設け、右手は階段下を利用した飾り棚と兼収納としている。
階段の踏み板が絶好の「お絵描き」場になろうとは。
ちなみに手前はリビングなので、上から見下ろしながら絵描き気分を満喫しているのだろう
1959年静岡県生まれ。建築家。OMソーラー協会設立に参加。同協会取締役設計部長を経て、1996年に村松篤設計事務所設立、現在に至る。地元の杉材を使用し、塗り壁と和紙で仕上げられた住宅で、日本建築学会東海賞を受賞。2007年、これまでにない自身の新しい世界ースタンダード住宅「Bio森の家」を始動、現在その展開を図る。


















2008/9/12(金)18:35
さわさん、コメントをありがとうございます。
今まで、真剣にコメントを考えていました。簡単な話ではありませんので、少々長くなることをお許し下さい。
17段の直行階段ですか?どのくらいの角度で造られたものか分かりませんが、想像しただけでも少し怖い感じがしますね。住宅の階段ですから、それほど階段の巾にゆとりがあるわけではないと思います。たとえばビルや劇場のように、段数が多くても巾が広かったり、それを取り囲んでいる空間が大きければ怖いと感じなかったりするものです。
建築は3次元の世界ですから、立体的に設計を掘り下げていかなければなりません。これに光の入り方や程度(太陽光もあれば照明による明かりもあります)、仕上げ材の色合いや表情(明るくてフラットな仕上がりと、暗くて凹凸のある仕上がりでは感じ方が異なります)、手足が触れる部位の仕上げ方(体にフィットするような気持ちいい感触か、拒絶するような冷たい感触かによってかなり違います)等々が加わって、全体としてどう感じるかということになるわけです。なかなか難しい話かもしれません。
天井の高さについてですが、これは基本的に目線の高さが大切なのではないかと私は思います。ソファに腰を下ろしたときの目線、食卓の椅子に腰掛けたときの目線、キッチンで食事の支度をしているときの目線はそれぞれ異なります。
さらには、その目線の先に何が見えるのか?(窓の外に木々の緑が広がっていたり部屋の仕切りがなくて隅々まで見通せる場合と、壁で囲われていて鼻がつかえそうな感じがする場合とでは随分違う印象を受けるでしょう)
また矛盾しているかと思われるかもしれませんが、必用十分な大きな壁を設けているのか?(背後の壁に体を委ねてそれに守られているような感覚は、私にとって心地いいと感じるときです)
空間が締まっているのか?(天井は低いところがあって高いところが初めて生きると思うので、ただのっぺりとした空間は落ち着かないと思います)
まだまだ書き切れないことが沢山あります。いくら文字を並べてもどれだけ思いが伝わったのか、心配でもあります。最終的には、そうした場に身を預けて感じられることが、一番かと思っています。
やはり長いコメントになってしまいました。
天井に限らず寸法というものは、これがいいなどと一概には言い切れないのではないでしょうか。それよりも自分にとってどう感じるかが大切だと思いますので、これからも様々な情報を寄せていただき、皆さんで議論をしようではありませんか。
2008/9/7(日)14:25
ハウスメーカーが出展している住宅展示場に行ったら、階段が17段もあり、しかも直行階段で怖くなりました。聞いたら天井が高いからということでした。高さは2700ということでした。天井は高いけれど、伸び伸びできませんでした。階段だけでなく、天井高はどの程度がいいのか、村松さんに書いてほしいと思いました。ハウスメーカーのモデルは、みんな階段の段数が多く、そして天井が高くて落ち着きませんでした。
2008/8/13(水)21:53
コメントをいただき、大変恐縮しています。
階段は本当に難しいなあと、いつも悩みながらディテールやデザインを最終決定しているのが本音です。ただ、この部位を考えるのはは嫌いではないので、どうしてもこだわってしまいますね。
また、いつかお話できればと思います。
2008/8/12(火)18:38
最近、本棚の隅にあった「吉村順三の住宅作法」という本を読んだ。その中に“気持ちのいい家というのは階段がひとつの決め手である”“階段がちゃんとできる建築家は他の部分も案外できるものだよ”とありました。階段は難しいですよね。村松さんの階段は綺麗だなあと思います。