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蘇れ! 16万トンの貝殻
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北海道のホタテ養殖から発生する貝殻は16万トンもありますが、土壌改良材などに使われるほかは、未利用資源のままです。もしこれを壁材にして、日本の住宅の壁という壁に塗れば、大変な有資源になるのでは、と考えた工務店がありました。
伊達市の工務店、小松建設(代表/小松幸雄)です。小松さんはホタテの貝殻を壁材にしたパイオニアですが、16万トンの廃棄物という現実を前にすると、自分がいかに無力か思い知らされるといいます。「ほたて漆喰壁」に使われる貝殻は、小松さんが熱中し、奔走している割には哀しいほどに微々たるものです。
小松さんは、「ぎょれん」の食品工場から出てくる貝殻の山を指差しながら、「毎日、山のように貝殻が出てくるんですよ」という。ホタテの真っ白な貝殻は、雨に打たれながら次々と積み上げられ、凍るように透き通っています。
小松さんは、もう六年にも及んで「ほたて漆喰壁」に取り組んでいます。小松さんは工務店の社長でもあって、こちらは先代からの仕事です。若い頃にはフォークソングの歌い手として知られ、北海道ではちょっと知られたスターでした。こころに歌を持つ人だから、行き先不透明な「ほたて漆喰壁」の事業化に挑んだのかも知れません。
しかし、小松さんはロマンだけの人ではなく製品開発は着実なものがあります。この製品は、ホタテの貝殻を高温焼成し、素材そのものの臭いを取り除いて、消臭・調湿性能を高めることで、伝統的な内装左官用塗壁材に仕上げられています。自然素材利用の流れに乗って、販売量はそれなりに増えたものの、大望である16万トンの貝殻を余さず利用するには、未だほど遠い状態にあるのです。
外壁材にも利用できる「ほたて漆喰壁」
水野武昭さん(武左工業/浜松)にお聞きしたら、「ほたて漆喰は、素材そのものが純白で、砂漆喰のような仕上がり感があって素晴らしい。だけど難は塗り難さだね」といいます。これが「もう少し早く塗れたらみんな使うのでは」というのが水野さんの見方です。
この「もう少し早く」が至難です。もっと高温焼成すれば塗りやすくなるのは分かっています。しかしコストが上昇します。小松さんは「もう少し早く」塗れるための工夫を、遠く離れた水野さんと一緒に研究していて、当初のものに比べるとずいぶん塗りやすくなりましたが、課題はそれよりも「もっと早く」塗れることにあります。
これは左官壁が持つ永遠の課題です。左官屋は使い慣れた壁材がいちばんだから、少しでも違和感があると嫌うのです。これを超えたとき、この壁材は一気に広がるものと考えられます。

「ほたて漆喰壁」にとっての朗報は、ここに来て、ようやく外壁材として利用できるものが生まれたことです。内壁材は乾式工法が進んでいるため、どうしたって使用量は限られています。もし外壁材に利用されたら量は飛躍的に伸びます。下地にも利用できて塗りやすくなれば、16万トンの貝殻は蘇ることができるのです。
「ほたて漆喰壁」を外壁材に利用した場合の利点は、遮熱性と防火性の高さにあります。よく知られるように、備前焼の釜入れに際しては、貝殻が受け台として用いられます。高温に耐えられる貝殻の性質は、これからの外壁がもとめる要件にぴったりと合っているのです。
縄文人の人骨が貝殻のカルシウムによって守られたように、やがて家もそうなるのではないか、と小松さんはいいます。
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