設計のみつくろい
窓・建具(伊礼智)
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窓のあり方が住まい方に大きく影響する
- 実例1:光を入れる──西日、朝日を避けながら。
- 実例2:風を取り込む──外部からの視線を遮りながら。
- 実例3:景色を取り込む──内と外を穏やかに結びながら。
- 実例4:熱の出入りを制御──障子を活用しながら。
- 実例5:夏の夜を心地よく──防犯も可能に、通風を取りながら。
西洋の窓は「WINDOW」。その語源は「WIND」で、つまり風を通すための穴を意味します。
日本の窓は「間戸」。柱と柱の間に建てられた建具であり、大きな開口のことであると教わりました。
石造の文化では壁が主体であり、必要に応じて光と風を取り入れる小さな穴を開けます。
日本は木造の文化、柱と梁で構造が出来ているので、開口は穴というより動く壁(建具)というわけです。
気候の違いもあるのですが、夏を旨とした家では、風をたくさん取り入れ、外部と一体になった室内が気持ちよかったのでしょう。
それが「庭」を発達させていったのだと思います。
窓の基本的な役割は、光を入れること、風を取り込むこと、景色を見る、外部へ出入りできること。
それと同時に、窓からの雨や泥棒の侵入を防ぎ、室内環境を保つために熱の出入りを制御する工夫を考えなければなりません。
外部へ開かれた回路である窓は、室内と室外をつなぐ装置なのです。
外の環境をどう室内へ取り込み、どう防ぐか、どのように室内と室外を関係づけるか・・・窓廻り、開口部廻りはとても重要な役割を担っています。
そう考えると、窓のあり方は住まい方に大きな影響をもたらすものなのです。
窓と暮らしを上手につなぐ。実例──建具廻りの設え
実例1
光を入れる──西日、朝日を避けながら。
【外付けの簾戸(すど)】
簾(すだれ)は日本のエコグッズとして定番です。最近は安価な中国製も出回っています。簾は、窓の外で使ってこそ、その性能を発揮します。そこで、西日や朝日がきつく当たる窓の外側に建具屋さんに框戸(かまちど *1)をつくってもらい、天津簾をハメ込んでもらいました。建築に 合わせて簾の種類を選べば表情も変わってきますが、この場合は屋外での使用となるため、メンテナンスのことを考えれば手に入り易いものでかまわないという判断から、安い天津簾を選びました。
この「外付け簾戸」は、日射の遮蔽だけでなく、昼間の視線の遮蔽にも役に立ちます。私は、小さな敷地の小さな住まいを設計する機会が多くあります。その中で、ご近所の人たちが近い距離で生活するような状況が普通にあるとき、柔らかくコミュニケーションの距離を取り(視線を遮り)、室内の環境をキープ(通風を確保)してくれる方法はないかと、このやり方を考えました。自然素材だからか、光の透けた具合に和みも感じられます。
実例2
風を取り込む──外部からの視線を遮りながら。
【ブラインドの生地を利用した建具】
生活をしていると、家の内と外を繋げたいときもあれば、完全に切りたいこともあります。また、時々、曖昧にしておきたいこともあります。例えば、家の外からは家の中が見えなくて、中からは外が見えている、そして、空気や風は通ってほしい・・・そんな時に私がよく用いる方法が、ブラインドの生地を利用したスクリーンです。
私がいつも使用する生地は、MOLZA(モルザ)というメーカーの「和枯」(*2)です。スクリーンに、また網戸にもなるこの製品は、決して安くはありませんが、家の内と外の関係が自分では程よいと感じています。
ブラインドの生地は規定の寸法によってコストが大きく変わるので、逆に、ブラインドの生地の規定寸法に建具の框寸法を合わせて調整し、コストを抑えます。なお、この生地には耐水性がありません。そこで、リビングに面した勝手口に使用した時などには、雨がかりが気になり、外部側から防水スプレーを吹き付けておきました。引き渡し後2年ほどの時点で特に問題はなかったことから、今では、引き戸の玄関等の網戸としてもよく使用しています。品の良い網戸です。
http://www.molza.co.jp/interior/screen/index.htm
(残念ながら「和枯」は近々製造終了となるようで、現在、代替品を模索中です)
実例3
景色を取り込む──内と外を穏やかに結びながら。
【木製の引き込み戸】
木製のフルオープンできる引き込み戸を住まいに組み込むことが多くあります。それは、外と内を緩やかに結び一体となる様はとても心地よいし、法規上の床面積に含まれない半戸外の床を得ることもできます。たとえ、アルミサッシュの4倍のコストがかかるとしても、反りや隙間で悩まされたとしても、“ここぞ”というときは木製の引き込み戸でありたいと思うのです。とは言っても、できれば反りや隙間は少なくしたい。
これまで、多くの場合、建具の高さは2,200ミリでした。その場合は建具の見込み+6ミリ巾、深さ3ミリの決り(しゃくり *3)を立て枠に入れ、そこへ建具をあてます。ピンチブロック(*4)などをきめ細かくやると建具が重くなるので、「隙間風はあたりまえ」くらいにすませていました。
しかし、もう少し工夫の余地はないものかと考えました。そこで、高さを2,000ミリ以下として、建具に実(さね *5)をダブルで入れ、枠の決りもダブルで噛ませる納まりとしました。建具高さが2,000ミリを切ると反りはかなり解消されて、隙間風が格段に抑えられるようになりました。
(*4)ピンチブロック/ドアやサッシュの隙間を埋める気密パッキング。
(*5)実/さね。板をはぎ合わせる場合、相手の板の凹形の溝(小穴)に入れる細長い突起の総称。
実例4
熱の出入りを制御──障子を活用しながら。
【回転障子】
私は、障子をよく使います。障子は、柔らかな光と冬場の開口部からのマイナスの輻射熱(冷気)を遮る効果が優れています。そして、その場合は、障子は是非、引き込みで使いたい。しかし、どうしても引き込みが不可能なプランも出てきてしまいます。矩折(かねおり *6)の開口部で片方がどうしても余裕がない時、障子を諦め他の手を考えることもありますが・・・。
この回転障子はこんなどうしようもないときの最後の手段的な仕掛けです。今から二十数年前、建築家の中村好文さんが「三谷さんの家」で試みていますが、昔から雨戸などで似たような手法はあり、私の中にも、その面白さが記憶に残っていました。
今回はたまたま2件、このような状況が続き、「やってみるか」ということになり試してみました。障子は、框と組子の見付けが同じ──いわゆる吉村障子(*7)。出来上がってみると、回転させるときの爽快感がなかなか良いのです。最後の手段的仕掛けなどといいましたが、やってみると、通常的に使える仕掛けでした。
(*7)吉村障子/建築家・吉村順三が、框と組子の見付け(巾)を18ミリで統一し、見込を30ミリとした、吉村独自の障子デザイン。
実例5
夏の夜を心地よく──防犯も可能に、通風を取りながら。
【網戸付き木製ガラリ戸】
「サッシュを開け放して寝たい」というクライアントの要望がきっかけで試み、その後リクエストの多い建具です。
木製のフルオープンできる開口部の基本的な構成は、外から、雨戸、網戸、ガラス戸、となりますが、その雨戸の変わりに網戸付きのガラリ戸とし、雨戸と網戸を兼ねてみました。錠付きとし、夏の夜、防犯も可能に、通風を取りながら寝ることができます。
ガラリの角度は夏の日射を遮蔽できるような角度に、見付け27ミリのルーバーをその倍数である54ミリ前後の空きで割り付けてあります。網戸は、外の景色がよく見えるようにブラックのサラン網を選択。昼間、外から中は見えにくく、中から外は見通しが効く、プライバシーを制御する効果もある網戸です。
真夏を過ぎた頃、ガラリを通した光の縞の動きがとても美しく思う時があります。通風のためというより、光を楽しむ装置なのかもしれません。
1959年、沖縄県生まれ。建築家。琉球大学理工学部卒業後、東京藝術大学美術学部建築科大学院修了。丸谷博男+エーアンドエーを経て、1996年伊礼智設計室を設立。2004年より「東京町家」を東京の工務店3社と展開。現在、工務店ネットワークの主催で設計セミナーも実施。2006年「9坪の家」、2007年「町角の家」でエコビルド賞。住まいネット新聞「びお」にて特撰ブログ掲載中。















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