びおの七十二候

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桐始結花・きりはじめてはなをむすぶ

桐始結花

桐の花は、梢高く咲きます。だから、目前に咲いているというより、地に落ちた花で知ることが多いようです(そんなわけからか、花言葉は「高尚こうしょう」)。幹の丈9メートルにも及び、径は90センチに達するものがあるといいます。

桐の花は、古典的な趣を持っていて、『源氏物語』の桐壺がその代表です。彼女は、はかなく美しく神々しく繊細で、それは桐の持つ性質に通じます。

桐は、日本国内でとれる木材としては最も軽いことで知られます。湿気を通さず、割れや狂いが少ない特徴を持ち、高級木材として重宝されてきました。日本では箪笥、こと神楽面かぐらめんや下駄の材料になりました。桐箪笥は、高級家具の代名詞です。

日本では女の子が生まれると桐を植えて、結婚する際にはそのキリで箪笥を作り嫁入り道具にするという風習がありました。それは桐の成長の早さを示しています。また桐は、発火しづらいので、金庫などの内側にも用いられています。
原産地は中国、日本では福島県の会津桐、岩手県の南部桐が有名です。しかし、最近は南米、中国、東南アジアから輸入されることが多くなっています。

会津には、桐の博物館があります。会津で桐が盛んなのは、保科正之(1611-72)が最上山形から23万石の領主として、会津に就封したことによります。漆木うるしのき(会津漆器は有名)の増木と並ぶ、藩政の諸改革の一環となる殖産興業の一つでした。地元の工務店、ばんだい東洋建設の相原清司さんによると、漆器も桐の箪笥もダメになるかも知れないというお話です。
中国の桐は、主として山東省、江蘇省等が盛んで、畑と畑の境木や防風林としても植えられており、中国桐は成長が早く13~15年位で伐採されます。製品の値段は、中国産と日本産では大きな開きがあります。材木の質や作りが違うとのことで、中国産の桐は臭いがきつく、箪笥の引き出しを開けたとききつい臭いがするといいます。この原因としては、中国産の桐は乾燥が充分にされていないことが挙げられます。現在、流通しているものは、ほとんど中国産とみていいそうです。
桐は、伝統的に神聖な木とみなされ、家紋や紋章の意匠に取り入れられてきました。

しかし、カタカナで「キリ」というと、あまりいいイメージがありません。「ピンキリ」のキリは最低のものをいいます。しかし、「サンピン」のピンは、最下層の侍(年扶持が3両1分だった)を卑下していう言葉です。ピンもキリもポルトガル語で、ピンはpinta(ピンタ:斑点の意味)、キリはCrus(クルス:十字架)から変化した言葉です。
花札の12月は桐です。花札は、オランダ人によって伝わったウンスンカルタが原型といわれています。
桐の紋は、天皇家、豊臣秀吉、日本政府で使われています。桐紋は、花の数によって「五七の桐」と「五三の桐」があります。皇室の桐は「五七の桐」、明治神宮は「五三の桐」です。桐紋は政府の紋章のようにも使われていて、500円硬貨の裏側は桐です。パスポートにも使われています。


※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2008年07月23日の過去記事より再掲載)

猫と桐始結花